幸せの方法を

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1章

日常? 2

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「サリオン。」
声の方をむくとそこにはお昼を一緒に!とお声をかけている令嬢をかき分けてセドリック殿下が現れた。
隣にいたアレクとナイツも何事!?という雰囲気を醸し出している。顔には出してないが付き合いが長いとわかる。

「はい。どうかしましたか?」
学校で1回も関わったこともなかったはずなのになぜ声をかけてきたのだろう。
本当に関わりたくないのに。

「あの。良かったらでいいのだがお昼一緒にしてもいいだろうか?もちろんサリオン以外の2人も良かったらだが…。」
「えっ…。」
何を言い出すのだろうこの人は。
さっきまでセドリック殿下の周りにいた令嬢もクラスで駄弁ってた他の家の者も全員がいつもと違う出来事にポカンとしていた。俺もである。


朝助けたから懐かれたのだろうか。
いやでもそれだけで?

隣のアレクは一瞬げっみたいな顔をした後すぐに商談をする時の猫を被った顔に切り替わった。
そしてナイツはいつもと変わらずニコニコしている。
だが何言ってんだこいつみたいな奥底の感情が俺には見える気がする。こいつの心の中は多分きっと想像より怖いだろう。

とはいえ皇族のお誘いは断るための言葉を考えるのが難しい。
失礼のないように不敬を買わないようにと頭を使わなければいけない。

きっと断れないのだからいいかと諦めて返事をした。
「私は大丈夫です。」
「私達も大丈夫です。」
「むしろ光栄です。」
アレクとナイツもふたりで顔を合わせ頷き返事をした。
むしろこっちが感謝をという言葉付きで。

「本当か!嬉しい!」
肯定的な言葉がかかってくるとセドリック殿下は目をキラキラさせた。
元気よく振られた犬のしっぽが後ろに見える気がするのは気のせいか。


そんなこんなでいつもとは違うメンツで食堂に行き席に着く。
俺の隣にアレク。俺の目の前にセドリック殿下そしてその隣にナイツという配置だ。
いつものようにアレクとナイツは肉料理をそして俺は魚料理を食べる。

「セドリック殿下も魚料理が好きなんですか?」
セドリック殿下が魚を頼んだ時ナイツが質問した。
「いや普段は肉料理しか食べないな。でも今日はサリオンが魚料理を頼んでいるのを見て挑戦してみることにした!」

ゴッ…。
水を飲んだ瞬間に聞こえてきたセドリック殿下の言葉にむせそうになるのを堪えて殿下の方をむく。
するとニコニコの殿下と目が合った。


そして朝と同様に爆弾が降ってきたのである。



「俺はアランが好きだからな!」
今日何度目かのニコニコ笑顔だった。




「……えっと?私はセドリック殿下とはあまり話したことありませんよね?」
「あぁ。今日の朝久しぶりに話したな。」
「ですよね。ならなんで?というより意味がわかりません。」
「『あまり』話したことがないだけであったのは初めてでは無い。」
「嫌だからそういうことではなくて。」
「俺の初恋はアランだからな。」
「…。え?」
好きとはなんだろう。どういう意味かをセドリック殿下に聞いてみても俺の欲しい答えは帰ってきそうもない。
いや帰ってきた。好きとは恋愛的にということらしい。
いやでもどういうことだ。

とりあえず話を変えたいがどう切り替えるのがいいのだろう。俺の脳はもう限界だ。
助けを求めて俺たちの他にいるはずの2人を見ると驚いた顔をしたまま停止してしまっている。

ゴホンっ。
咳払いをして話を変えて欲しいと助けを求める目を向けるとやっと戻ってきた。

「えっとーアランと殿下は今日の朝お話したのですか?」
ナイツが何とか変えてくれた。ナイスだ。
「確かになんで話してたんです?殿下と私たちはあんまり関わりねぇのに。」
アレクも援護してくれた。

そうすると殿下は2人に目線を向け今日の朝の出来事を話し始めた。

そうしてご飯を食べながら他にもたわいもない話をしていると昼食の時間は終わった。

その頃には衝撃の告白は風のようにどこかへ飛んでいってしまっていた。

その後は教室に戻りいつもどうり午後の授業。
何事もなく終えていつもどうり3人で馬車へ向かう。

「お昼のはなんだったんだ?」
「確かに。衝撃的だったね。」
もう忘れかけていたことをアレクとナイツが掘り返してきた。
いや忘れたくても忘れられないのだが。出来ればずっと触れないで欲しかったのだ。

「セドリック殿下のちょっとしたイタズラだろう。」
「いやイタズラにしては度が過ぎてるだろう!」
「イタズラでは無い気がするけど…。」
いやイタズラだ。イタズラであって欲しい。面倒事は増えて欲しくないのだ今が俺にとって『幸せ』なんだから。

「サリオン。」
昼と同じ声で後ろから呼ばれた。
振り返るとセドリック殿下がいてこちらに歩いてきている。
「お疲れ様です。セドリック殿下。」
「昼の話だが、あれはイタズラではないからな?」
聞こえていたのだろう。
笑いながらセドリック殿下が言う。
珍しく私の願いは叶わないらしい。

「あ、そうだ3人とも名前で呼んでもいいだろうか?
家名で呼ぶと少し距離を感じてしまって寂しいからな。」
セドリック殿下が思い出したように言ってきた。
「はい大丈夫です。」
「はい。」
「はい。」
頭の処理か追いつかないながらも了承する。
皇族とは関わりたくないがここまで来ると名前くらいいいだろう。今日の出来事に比べたら誤差である。
アレクとナイツも同じだったようですぐに続けて返事をした。
「そうかありがとう!アラン、アレク、ナイツこれからよろしくな!私の事もセドリックでいい。」
私達の名前呼び了承に嬉しそうに笑ったセドリック殿下は
自分も呼び捨てしていいという。

「いやさすがに不敬になります。」
それはさすがに無理だと言うと
「ならばせめて殿下ではなく様で呼んでくれ。」
「いや…。ですが…。」
「いやではない。様だ。」
引く気はないらしい。
「わかりました。セドリック様。」
「よろしい!2人もな!
それじゃあまた明日会おう!」
朝の押しに弱いセドリック殿下どこへ行ったのやら。
今度は俺が押しに負けセドリック様と呼ぶとこれまた嬉しそうに笑い颯爽と去っていった。

「俺達も帰るか。」
「そうだね。」
今の一瞬で残っていた脳みその体力を全て持ってかれたのであろうアレクが何も突っ込まずにそう言うとナイツが同意した。
俺は1日の情報量に返事する元気もなかったらしい。

そのまま3人はそれぞれの馬車に乗り帰路へ着いた。


いつもどうりの『幸せ』なはずの生活が崩れそうなのを感じながら。
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