幸せの方法を

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1章

イレギュラー 4

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次の日の朝。

いつもどうり家族で朝ご飯を食べていると
「兄様!今日剣術のお話聞かせてくれますか?」
数日前にした約束を覚えていたフィートが俺にワクワクしながら聞いてきた。

そういえばそんな約束をしていたなと思い出し急遽できた王城での用事に申し訳なくなりながらフィートに謝ろうとすると
「違うわよフィート。今日お兄様は私とお茶会をするのよ!」
今度はフィーナが声をあげる。そんな約束はした覚えがないが自信満々で言うフィーナ。

2人に申し訳なさを感じながら
「フィート、フィーナ。今日兄様は王城に呼び出されてし待って2人との約束を守ってあげられそうにないんだ。ごめんね。」
俺がそう言うと
「王城ですか?兄様王城に行くのですか!!お城!」
「すごいですわお兄様。お城に招待されるなんて!」
悲しまれるかと思って身構えたが意外と大丈夫そうである。
というより王城という言葉に大興奮な2人に少し困惑する。

「本当にごめんね。ふたりとの約束は明日必ず。」
そう俺が言うと
「お城に行くのならしょうがないです!明日お城のお話も聞かせてください!」
「明日は絶対ですよ!でもお兄様がお城!素敵!」
そう目をきらきらさせる2人。
約束が守られないことよりもやっぱりお城!!な2人に俺は少し先の王城で行われる話し合いの未来を想像してため息を着いた。
そしてそんなに子供たちを両親は微笑みながら見守っていた。



ガタガタガタガタガタ
王城に向かう馬車の中俺はどんな話し合いが行われるのかを想像しては気が重くなるばかりだった。

父と2人で乗る馬車はいつもならばもう少し話が弾むのだが今は静かだ。
家を出る前俺は父に婚約はするつもりがないことをしっかりと伝えていた。だからなのか父も今は話すよりどうやって話し合いを落ち着かせようかを必死に考えているようである。



王城に着いた。
特に止められることもなくすんなりと中に入り、
「お待ちしておりました。」
と城付きの従者によって陛下のいる部屋にまで案内される。
広く長い廊下に父と俺そして従者の足音がコツコツコツコツと耳に響いた。

部屋の前まで着き
「失礼致します。アルス・ベル・サリオン様とアラン・ベル・サリオン様がお見えになりました。」
そう従者が言うと
「入れ。」
と中から声がかかった。

部屋に入り 礼をする。
「下がって良い。」
そう従者に声をかけると中には俺たちだけになった。
「アルス・ベル・サリオンただいま参りました。」
「アラン・ベル・サリオンです。お初にお目にかかります。」
父の挨拶の後に続いて挨拶をする。
「顔を上げよ。」
陛下のその声に2人は顔を上げた。

するとそこには威厳たっぷりの陛下のお顔が…
ではなくニッコニコでな陛下の顔があった。そしてその横には嬉しそうに小さく手をふふセドリック殿下いる。

「ここからは楽に話していいよ!その方が話しやすいだろう。」
しよう人が誰一人いない今威厳を保つ必要が無くなった陛下も口調がラフになっている。

「はい。ありがとうございます。」
そう父が言うと陛下はまだ硬いなぁと小言をいいながら俺の方を見てくる。
「君がアランくんだね?」
「はい。アランと申します。」
「セドリックと仲良くしてくれているようでありがとうれ」
「あ、いえそんな。」
仲良くと言っても一昨日から急に絡んできただけだろうとは言えない。
そしてこの人もセドリック殿下同様言葉の語尾にビックリマークをつける人なのだなと思った。


「陛下それでは早速婚約の話しましょう。」
「そうだねそうしようか!」
そう大人2人が言うと部屋の空気が少しだけ変わる。

「まずは陛下。この婚約の申し込みはアランとセドリック殿下のもので間違いないでしょうか。」
「うん間違いないよ。うちのセドリックがどうしてもと言うからね!」
そう言って陛下は隣に座っているセドリック殿下を見る。
セドリック殿下はそんな陛下に頷くと俺の方をニコニコしながら見てきた。

「こちらとしましてはこの婚約お断りしたいと思っております。」
そう父が言う
「それはどうしてだい?」
にこやかに陛下が質問する。
「アランが望んでいないからです。」
「それはなぜだ?」
父のその答えに陛下が俺を見て聞いてきた。
俺が理由を話せということなのだろう。
「失礼ながら私とセドリック殿下は今まで…というよりも一昨日までほぼと言っていいほど関わりを持ってきませんでした。急に婚約と言われても受け入れるのは難しいです。それに私は公爵家の長男です。跡取りも考えなければなりません。」
そうまっすぐ陛下を見て伝える。

「そうか。でも何も今すぐに婚約をしようと言っているわけではないんだよ。ゆっくり婚約をするかどうか決めませんかというお話なんだ。」
陛下が今回の申し込みはあくまで申し込みの申し込みでそんなに急ぐことではないという。

「ですがアランは長男です。」
「そうだね?」
「跡取りの問題もあります。」
「君の家にはあと2人双子の子供がいたよね。その子たちの子と言うとはダメなのかい?」
「ダメという訳では無いですがいずれかは嫁いでいってしまう身です。」
「そうか。ならば養子をとればいいじゃないか!も跡取りは血が繋がっていないといけないわけではないだろう。有能な人材に育て上げられればその子を跡取りにすればいい!」
父が頑張ってどうにか断ろうとしてくれているが陛下の心が広すぎるせいで全然ヒットしていない。

「じゃあもし仮に皇族の皆様が良くてもほかの貴族の皆様が男同士でしかも跡取りがなんで許さないでしょう。」
「ほかのものなんて黙らせればいい。自分の子供たちが一緒にありたいというのであらばそれが同性だろうが異性だろうが応援してあげればいいさ!君は子供が結婚したいと言った相手が君のお眼鏡に叶わなかったら許さないのかい。」
「…。全力で応援します。」
子供「たち」ってあたかも両思いみたいな言い方をしないでいただきたいものである。
そして親バカな陛下とこっちも親バカな父は陛下の子供の気持ちを大切にしないのかという問いにあっさりと負けた。いい父親だからこその弱みを知った。


そんな父に陛下は満足そうに頷くと俺の方に向き直る。
「何も今すぐという訳じゃないんだよ。誰との婚約も断ってきたセドリックが初めて君がいいと言ってきたんだ。チャンスを上げて欲しいんだよ。」
「チャンス…ですか。」
「そう。チャンス。何も最初から嫌だと突っぱねるのではなく婚約者に名乗り出てるという状況で君にアピールするチャンスを上げて欲しい。」
「…。」
陛下の優しく真っ直ぐなお願いに俺が悩んでいると
「僕は初めて会った5年前からずっとアランのことが好きだった。初恋なんだ。一昨日は勢いで言っちゃって驚かせたし困らせてしまったと思うけど本気だよ。」
今日初めてセドリック殿下が話し始める。
殿下の方をむくといつものように優しくでもいつもより真剣な目で俺を見てそう言ってきた。

「本気なのですか。」
「うん。超本気。」
「男同士ですよ。」
「関係ない。アランが好きなんだよ。」
「私公爵家の跡取りで子供が。」
「それはもし一緒になってくれたらその時に1番いい方法を考えよう。もしもでも一緒になることを考えてくれて嬉しいな。」
「…っっ!!」
セドリック殿下のいつもより優しい言葉で言われるもしもの未来を考えた自分に対する言葉に思わず顔が熱くなる。

「僕にチャンスをください。君と一緒にいるチャンスを。」
まっすぐ僕だけをその目に写してそう言う殿下に胸がドキッとなった気がした。
「…。分かりました。」
「本当!?やった!ありがとう!」
その僕の言葉に殿下が今日一の声で喜んだ。

横を見ると楽しそうな顔でこっちを見ている陛下と少し困り顔を父が見えた。

あんなまっすぐ言われたら断りたくても断れなかったんだよ。ごめん。
と心で父に謝罪する。
今日の夜は久々に肩でも揉んであげようかなんて考えながら。


その後は少しだけ4人でお茶をした。
「え~もう帰るのぉ~!もっと話そう!ね?」
さっきの真剣な雰囲気はどこへやら陛下がそう駄々を捏ねたので仕方なく付き合ったのだ。

帰りの馬車は行きとは違う理由で静かだったのはここだけの話である。

家に帰ってフィートとフィーナのどうだった攻撃を交わしつつ、父の肩を揉みつつ寝る支度を整えた俺はいつものようにベッドに横になる。

断りに行ったはずが結局チャンスを与えると約束してしまった。
でも人間誰しも自分を好きだと言ってくれている相手からあんなにまっすぐお願いされたら断れないものじゃないだろうか。
それならば仕方がない。
「もしもでも一緒になることを考えてくれて嬉しいな。」
不意にそう言って優しく笑うセドリック殿下を思い出して心臓がドッドッドッっと音を立てる。
いつもは犬みたいな反応してるくせして今日の殿下はずっと真っ直ぐ俺のことだけを見ていた。そんなのやっぱり断れるわけがないだろう。そしてなぜだか暑くなった頬を手で冷ましながら改めてそう思った。

「3ヶ月。その間にアランくんがセドリックに振り向かなかったらこの話はなかったことにするということで。
だからアランくんどうかセドリックに対する感情に嘘はつかないであげてね。」
帰り際今日の話のまとめということで陛下から言われた言葉だ。
3ヶ月間俺はセドリック殿下からのアプローチを受け入れなければならないらしい。
まぁでも期間を決めてくれたのはやりやすいからありがたかった。

でも
「セドリックに対する感情に嘘はつかないであげてね。」
陛下の言ったその言葉は俺には酷く難しいものだった。
別に今まで嘘をついて生きてきたという訳ではなく、自分の中にある感情というものがわからない場合はそれは嘘をつくということになってしまわないだろうか。
ただそれだけが気がかりなのである。

もしそのせいでセドリック殿下に対して失礼な態度を取ってしまった時は。
その時は俺のことをセドリック殿下にお話しよう。
まっすぐ向けてくれる気持ちにはできるだけまっすぐ返したいものなのだ。
そう決めて俺は今日も夢の中へ入っていった。
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