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午前六時三十四分
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「お目覚めでしたか…、ルシウス様」
固く閉ざされたカーテンの隙間から、夜明けの光が薄く差し込み、部屋の主の影をぼんやりと浮かび上がらせた。
一日のうち、もっとも空気の凍てつくこの時間に、主は決まって己を取り戻す。
「どれほど、わたしは…」
正気を失っていたのか…、と。かすれた声で額に手を当て、大柄な背を丸める。
「二日ほどです。…今宵の月齢は17。これより半月後にー、新月の日となりましょう」
かすかな、唸り声が上がる。
あれから、半年ー。
月の無い夜は、唯一、全く己を保っていられるが、同時に、闇の底から訪れる、あの者とも対峙しなくてはならない。
主の苦渋に、執事も顔を曇らせたが、気をとりなすように、窓辺により、閉め切られたカーテンを引こうとする。
ーールシウスがそれを手で制す。
「お身体に悪うございます。少しは、日の光を浴びませんと」
「よい…」
「……」
執事は、ひそかに逡巡した。今の主に、あの事を報告してよいものか…。
答えは、否だった。
折を見て話すことに決め、主のために、朝の一杯を淹れにかかる。
「私に…、何か話さねばならない事があるのだろう?」
ーー執事の手が止まる。
頬に主の視線を感じながらも、淀みない所作で懐から懐中時計を取り出し、湯気の立つカップの口から茶葉の入った茶漉しを外す。
長年培ってきた習慣で、本当は時計など用いなくとも、この熟練の執事は正確に茶葉を蒸す時間を計る。
彼が、いつも肌身離さず身につけている懐中時計を頼るときは、何か、主にとって、良くないことを口にしなくてはならない時だ。
それを承知で、ルシウスは待った。
あとほんの数秒、一杯の紅茶と、執事の口から語られる…、自分が完全なる獣になっていた間の出来事をーー。
固く閉ざされたカーテンの隙間から、夜明けの光が薄く差し込み、部屋の主の影をぼんやりと浮かび上がらせた。
一日のうち、もっとも空気の凍てつくこの時間に、主は決まって己を取り戻す。
「どれほど、わたしは…」
正気を失っていたのか…、と。かすれた声で額に手を当て、大柄な背を丸める。
「二日ほどです。…今宵の月齢は17。これより半月後にー、新月の日となりましょう」
かすかな、唸り声が上がる。
あれから、半年ー。
月の無い夜は、唯一、全く己を保っていられるが、同時に、闇の底から訪れる、あの者とも対峙しなくてはならない。
主の苦渋に、執事も顔を曇らせたが、気をとりなすように、窓辺により、閉め切られたカーテンを引こうとする。
ーールシウスがそれを手で制す。
「お身体に悪うございます。少しは、日の光を浴びませんと」
「よい…」
「……」
執事は、ひそかに逡巡した。今の主に、あの事を報告してよいものか…。
答えは、否だった。
折を見て話すことに決め、主のために、朝の一杯を淹れにかかる。
「私に…、何か話さねばならない事があるのだろう?」
ーー執事の手が止まる。
頬に主の視線を感じながらも、淀みない所作で懐から懐中時計を取り出し、湯気の立つカップの口から茶葉の入った茶漉しを外す。
長年培ってきた習慣で、本当は時計など用いなくとも、この熟練の執事は正確に茶葉を蒸す時間を計る。
彼が、いつも肌身離さず身につけている懐中時計を頼るときは、何か、主にとって、良くないことを口にしなくてはならない時だ。
それを承知で、ルシウスは待った。
あとほんの数秒、一杯の紅茶と、執事の口から語られる…、自分が完全なる獣になっていた間の出来事をーー。
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