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第8話 お風呂
しおりを挟む「大丈夫だったかい?」
「おかげさまでな」
「小娘、見掛けによらずそこそこ腕がたつようだな」
直ぐに2人は合流した。あの程度の刺客では取るに足らなかったようで2人とも傷はなく服にも汚れはない。まるで疲れを感じさせない姿を見るにまだまだ余裕がありそうだ。
「本当にすまない。君のような可憐な女性を危険にさらしてしまうなんて……僕は総隊長失格だ!」
「何を言うんですか、ケルト様の実力と功績は誰もが知っています。ケルト様のお陰でこうして皆が平和に暮らせているのです」
「それでも自分が良く狙われている事があるという事が分かっていたのに油断して巻き込んでしまった……これは男の恥なんだ。本当にすまなかった、こんな事で許されるとは思わないがこれを受け取って欲しい」
そう言ってケルトが宝石を渡してきた。青く澄んだその宝石はけして大きくはないが表面に薄く文字が書かれておりとても高価な物だというのが一目で分かった。それだけでなく僅かだが魔力を感じる。
「良いのか?」
「あぁ、君には多大な迷惑を掛けてしまったからね。それを見せればこの街でなんの不自由なく過ごせるだろう、それにそれがあれば僕に直ぐにでも会えるから」
「ケルト様!?それは……」
「いいんだセバス。彼女には迷惑を掛けてしまったからね、それに……いや何でもない。また襲われるかもしれないから僕はこの辺で。僕はエリミナーゼ騎士団団長シャーク B ケルト、また会おう、美しい君よ」
「おう、ありがとな」
さて、想わぬところで収穫があった。まさか軍部の1番偉い人と知り合いになりあまつさえ何かを貰えるとは思わなかった。この身体で戦闘もそこそこ出来るのも判明したし恐らくであるが危機の要因と何らかの繋がりがあると見て間違いない盗賊の一団とも戦闘出来た。尋問しても良かったのだがああいう奴らは決まって金で雇われただけで大した情報も持っていないだろうし見のがしても問題ないだろう。
案外すぐに救えるかもしれないな、そんなことを思いながらシンは歩いていった。
―――――――――
「……はぁ」
「なぁ元気だせよ」
「いいんですよ。どうせ私なんか……」
「どんだけ拗らせてんだよ……」
宿屋に帰ってきたシンが扉を開けると亜里朱はベッドに仰向けになって寝転がりながら何かを呟いていた。それを見て直ぐに扉を閉めて部屋番号を確認するが間違いなく自分達が取った部屋だ、ファーストキスぐらいでここまで拗らせる意味がシンには分からない。きっと女にしか分からないんだろう、ほっときゃ治るだろうと暫く放置していたのだが今の今まで治らず流石にうざくなってきて今に至る。
「いやさ、もう1回したいって言ったら怒る?」
「この身体で自殺します」
「恐ろしいなお前……あれだよ。キスした時直接魔力が流れ込んできたんだ、キスすれば俺お前の身体で魔法使えると思うからさ頼むよ~」
「意気消沈してる私にそれを言いますか……嫌なものは嫌です、というか一刻も早く私の身体返して下さいよ」
「それが出来ないから困ってるんだろ」
顔を真っ赤にして拒絶する亜里朱。そうあの時、実は魔力が直接流れ込んできており僅かだが魔法が使える……気がしたのだ。一瞬だった為に大した量の魔力は流れてこなかったが使えるのと使えないのでは出来る事が大きく違ってくる。
「けちだなぁ」
「けちとかそういう問題じゃないでしょ!」
「じゃあどういう問題なんだよ?」
「それは勿論最初はお互い愛し合った2人で、そして2人が初めて出会った公園のベンチ。辺りは真っ暗で空には満天の星空………って何言わせるんですか!」
「うん、なるほど。以外とロマンチストなんだな」
「あぁ……もうおうち帰りたい」
再びベッドに顔を埋める亜里朱。
おっ、そう言えば。そんなことをシンが言うものだから亜里朱はそれにつられてシンの方へと顔を向ける。だがそれはとんでもない爆弾だった。
「お風呂、どうすんだ?」
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