♂入れ替わりゆうしゃさま♀

シュテ

文字の大きさ
22 / 26

第21話 面倒臭い男

しおりを挟む
実際面倒な事になったと内心舌打ちをした。
何処かで仕掛けてくるのは分かっていた。だがまさかこの男がやって来るのは予想外だった。

「騎士団長様がこんな冴えない男に何用ですか?まさかダンスを踊って欲しいだなんて言わないですよね」
「僕も男と踊る趣味はないよ。けど残念だよ、可憐な彼女のパートナーである君が.......まさか彼女を利用していただなんてっ!」
「は?」

シンはちょっと何を言っているのか理解出来なかった。

「彼女は美しいからね。男ならお近付きになりたいのは分かるが弱味を握って近付くだなんて許される事ではない!」

顔が引き攣るのを隠し切れない。
この男。シャーク B ケルトはエルミナーゼ騎士団長である。実力は本物であり真面目で紳士的。部下からの信頼も厚い。
だが致命的な程女絡みになると頭が緩くなる。
完全に身に覚えのない罪状で捕えられようとしているのには流石に頭が痛くなってきた。十中八九、焚き付けてきたのは根源かその辺の人間だろう。というかそれでいいのか騎士団長。

「男がなんたるか.......僕が君に教えてあげよう!」

腰に刺したサーベルを引き抜き一気に踏み込む。速く鋭いその動きは洗練されていて無駄がない。伊達に騎士団長になった訳では無いのはその動きだけでも分かる。
間違いなくこの国で1番の騎士、そしてこの世界でもトップクラスで間違いないこの男の動きを見切れる者は少ない。
不意打ち気味で動き出したケルトの動きに反応出来なくとも仕方がないだろう。

だが相手が悪過ぎた。

この世界で最強だとしても存在する無数の世界で最強であるシンにとってその動きは止まって見えた。
初動を見切られて表情を崩したケルトであったが流石に切り替えが早かった。シンが見た目通りの実力出ない事を悟ったケルトは傲慢を捨てる。直ぐに切り替わった意識。それに応じて練り上げられる闘気が身体から溢れ出る。
肌に感じるピリッとした空気。幾度となく感じてきた戦場の空気だ。

剣閃が舞う。美しく力強いそれはしかし掠りもしない。
舞うように繰り出される無数の斬撃を紙一重で全て躱す。月明かりが照らす中踊る2人。

ガタン。

ベンチに足をぶつけ生まれた僅かな硬直。しかしそれを見逃さない。そこに付け込むようにさらに踏み込みサーベルを突き出す。一撃で決まるとは思えない。一突き二突き三突きと神速の如く繰り出される突き。
一突き目は重心を逸らし回避。二突き目をバク転の要領で大きく後ろに飛び躱す。
取ったと思った。回避は出来ない。力強く踏み込まれた必殺の突きはあろう事かシンにぶつかる前に弾き返された。

何故、と困惑する。この場にいる者は例外なくボディチェック等を受けて得物の所持は自分のような騎士でなければ許可されていないというのに。しかし直ぐに謎は解けた。光を反射して光る銀色の小さな刃物。何の変哲もないただの食事用のナイフだった。

「それで僕に勝てるとでも?」
「まさか」

そのまさかである。
倒すのも殺すのも簡単だ。それに何となく早く亜里朱の所に行かなければ不味い気がする。間違いなくケルトを差し向けてきた奴の目的は亜里朱なのだから。
あれだけ目立ち、ずっとこの世界で猛威を奮ってきたクリムゾンドラゴンを倒した功績を持つ。そんな存在を黙って見ているなんて有り得ない。自分を脅かす脅威でもあり手駒やそれこそ女として見れば最高の彼女。手出ししないするにしても接触は絶対にある筈だ。

しかしそんな亜里朱は一応クリムゾンドラゴンを倒した事になっている。丸腰であれば勝てると思っているのだろうか?それとも何か考えが?
間違いなく後者だろう。根源が小物であればそれに越したことはないのだが奴らはいつもどの世界でも用心深くそして賢い。
だからこそ慎重になる。しかし今回はそれがいけなかった。

「今だ!」

ケルトが叫ぶ。すると自分を取り囲むようにしていた騎士達の魔力が一斉に膨れ上がりケルトと自分を覆うように何かが展開された。
これは結界か?しかしそれにしては余りにも揺らぎ過ぎている。これでは少し突けば壊れてしまうだろう。

「これでもう逃げられまい」
「これは.......転移か?」
「ご明察だよ。行先はエルミナーゼから遠く離れた凶悪な犯罪者を収容する為の監獄。これで君は終わりだ!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...