便箋小町

藤 光一

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第1章 人形師編

31ダンスホールでおまかせを

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 時刻は夕暮れ。屋敷のホールが踊り場と化す。
周りに囲まれた人形たちはオーディエンスでは無く、余す事無く全てが演者となる。それは僕も含めてだ。
総勢五十体は下らない人形たちを操っているのは、リリィというメリィの双子の姉との事だ。
謂わば僕らは彼女にとって、腫れ物やウィルスのような存在と認識しているのだろう。
故にこいつらに指示されているのは、“邪魔者を排除せよ”などとそんなところだろうか。
漫画なんかで良く聞くが、単純で対象を特定としない命令であれば伝達も単純になる。
つまりキャパシティが少ない分、速く強く動く事が出来るというのが常套句だろう。
逆に細かい指定をしていれば命令は精密になる分、スペックは低下する。
彼女が今この場に現れない事から推測出来るのは、恐らく前者。短絡的に指示され排除する事を目的にしている。
でなければ、対象含まない状態でこれだけの数が暴れ回れば自分にも巻き添えを食ってしまうからだ。
早速、一体目の人形が社長目掛けて飛び掛かる。枝切り鋏を構えながら、喉元へと目掛けて切り掛かった。

「さて・・・、どうしたもんか、な!」

 彼女は寸前で最小限の動きで身体を捻らせ、降り掛かる枝切り鋏をかわした。
そのまま振り返りざまに人形の背中へと手刀を放つ。トンっと短く弾ませた手刀は最小限の動作と力加減。
枝切り鋏を握り締めていた人形も気を失ったかのように、鋏を掴んだまま床へと叩き落とした。
いや、少し違う気がする。社長は、人形に対して手刀を放ったというよりはその先のもの。
人形へと繋がれた薄らとした赤色の糸。半透明でギリギリ視認出来る程の糸だ。
彼女は人形を叩き落とした訳で無く、その糸自体を叩き切ったのだろう。例え人形の腕を壊したところで意味が無い。
その糸さえ生きていれば、リリィのマナを介して半永久的に強制動作を繰り返す。
彼女は人形の動力回路を切り、再起不能にしていったのだ。といっても、そんな事が出来るのは彼女くらいで。
皆まで云わずとも、僕には当然そんな芸当は実現させる事は不可能だろう。

「これだけ多いと、中々骨が折れますね・・・。」

「ほら、垂くん。護身用だ、取っておきたまえ。」

「うわっ、とと・・・。え、これはナイフ・・・ですか?」

 まだ倒したのは一体だけだ。こんなのを五十近い数の敵を倒すには流石に骨が折れる。
そんな苦言を漏らしたところ、社長は一本のナイフを僕の方へと投げ込む。
受け取ったナイフは見た目以上にずっしりと重い。刃は鞘に収められ、留め具でガッチリと固定されている。
柄は手に馴染みやすく、グリップもしっかりとしているがやけに重い。果物ナイフとは比べ物にならない。
刃と柄を繋ぐ鍔には、スイッチのような突起物も付いている。社長が受け渡すものだ。
何となくわかる・・・。これはきっと、ロクなもんじゃない。

「ワスプ・インジェクター・ナイフと云う奴だ。持ち手にスイッチがあるだろう?
刺した後にそれを押すと五十気圧の圧縮空気が先端から噴き出す代物だ。」

「わ、ワスプ、イン・・・何ですって?」

「ワスプ・インジェクター・ナイフだ、垂くん。ナイフの切れ味は勿論だが、先端付近に穴を備えている。
そこからガスが出て、急激な爆発力を引き出すナイフさ。」

 ほら、見た事か。やっぱりロクなもんじゃない、というか物騒過ぎるよ。
鞘のロックを外し刃の姿を見ると彼女の云う通りで、ナイフの先端には針を通した程の小さな穴が空いている。
スイッチにも親指で触れてみるが、留め具で固くロックされているようで動かない。
つまりこのスイッチを押すと圧縮気圧だかが吹き出し、対象を吹っ飛ばす二段構えの攻撃が出来るって訳か。
刃渡りは十三センチくらい・・・か、ん・・・?これ駄目じゃね?確か五センチ以上の刃物の持ち運びは禁止の筈。

「え、でもこれ銃刀法違反じゃ・・・。」

「バトル物の話に、それは野暮という奴だぞ垂くん。まぁ、安心したまえ。
スイッチはセーフティでロックされているから、いざという時まで誤発はしないさ。」

 それを云ったら、元の子もないですよ社長。
彼女の指摘通り、スイッチはがっしりとホールドされており誤爆しないようになっている。
けれど、何となく分かる。このナイフは、戦闘訓練をマトモに受けていない民間人が使って良い代物じゃない。
何故、せめてもの普通のナイフを手渡してくれないのか。まぁ相手は普通の人間ではなく、“ギフト”な訳だからか。
そこら辺で売っているような果物ナイフとかじゃ、文字通り歯が立たないか。
どうにも煮え切らないが、この場合は「無いよりはマシだ」とでも素直に思うべきだろう。

「絶対これ、素人が使っちゃいけない奴ですよね?」

 僕は投げ込まれたナイフを見つめながら眉を歪ませた。
まさか僕が、戦場でナイフを握り締める日が来ようとは思いもしなかった。
けれど何も人に向ける訳では無い。相手は人形・・・、メリィのように自立して心を持っている訳では無い。
そう云う意味では、無いよりは遥かにマシだ。そんな中、チップは親指を立てながら下手くそなウインクを弾ませた。

「イサム!お前キャベツの微塵切りとかヒラメの三枚おろし、得意だろ?」

「それとこれとでは全然違うよ!」

 確かに三枚おろしは出来るけど、何度も云うがそれとこれとでは全然違う。
幼女なりのフォローを入れたつもりだろうが、刃を握り締める責任は三枚おろしなんかより遥かに重い。
自衛の為とはいえ、敵に刃を向けるのだ。そう思うと、右手だけではナイフの刃先が震えるばかりだった。
咄嗟に左手で添えるように無理矢理抑え込み、少しでも震えを払拭させようとするが止まる事はなかった。

「ほら、来たぞ!」

「お兄様!後ろッ!」

 チップとメリィがほぼ同時に叫ぶ。感傷にふけっていた最中、見えない殺気が襲いかかる。
勢い任せに後ろを振り向くと包丁を振り翳そうとこちらへ突進する人形が見えた。
河童の時とは違うのは、その殺気。本当に殺そうとする時に生まれる視線とその気配が、この人形たちには無い。
無表情な顔には瞳も口も、当然ながら造り物の人形では正気が無い。目線はどこを向いているのかさえ分からないのだ。
間違いなく分かるのは真っ直ぐにこちらへと向ける包丁のみ。少女らの言葉に漸く気付く事が出来たのは不幸中の幸い。
寸前で僕は身体を無理に後ろへと逸らし、人形の包丁を躱した。こんな躱し方をしたのは、小学校のドッジボール以来だ。
空を切った包丁は前髪を僅かに掠め取り、はらりと数本の髪が落ちる。慣れない身体は、急な行動に警鐘を鳴らす。
ビキビキと背中の骨が悲鳴を上げ、つい悶絶したくもなる痛みが走り渡った。

「・・・ッ!ぐ、グゥ・・・ッツ!」

 日頃の運動不足がツケを返すように痛みへと変換させる。
包丁を持った人形は獲物を外した事に気付くと、ゆっくりと振り返った。やはりその顔は無表情だ。
相変わらず、どこを向いているんだか。次の攻撃が来る前に何とかしないと・・・。
相手は人形だ。人ではない、生きた“ギフト”でも無い。落ち着け、落ち着くんだ。呼吸を整えて、今ならいける。
奴がこちらへと照準を定める前に、・・・動け、僕の足!

「お、おぉぉぉ!おおおおおおおおお!」

 上体を起こして、右足を踏ん張りながらナイフの鞘を外した。
夕暮れの陽の光が微かにホールへと覗き込む中、ちらりとオレンジ色の輝きがナイフを反射させる。
人形との距離は手で届く範囲。右手を伸ばせば、直ぐに当てられる筈だ。

 ドス・・・ッン、カラン・・・、カララン・・・。

 思わず僕は目を閉じてしまっていた。
勢い任せに突き刺したナイフは確かな手応えがあり、絶妙な重みを感じた。
目を開けるとしっかりと僕が振り翳したナイフは人形の腹の中心へと突き刺さっていた。
けれど、人形はまだ動いている。社長のように背中へと繋がっている半透明の糸を断ち切っていない為だ。
わしゃわしゃと両腕を動かしながら抵抗している様は、まるで瀕死の蟲をひっくり返して見ているみたいだ。
突き刺した衝撃のせいか、人形は自分で武器でもある包丁を落としていたようだ。

「って、うわ⁉︎お、おぉぉぉおおおお!」

 武器を落としても尚、人形は抵抗を続け目標を殲滅する為に襲い掛かろうとしている。
身体を突き刺したと云うのにこちらへと押し寄せる人形の力は凄まじい。足で踏ん張らなければ、押し返されそうだ。
ナイフを抜いても引いても、やはりあの糸が繋がっている限りこの人形は止まる事は無いようだ。

「今だ、垂くん!セーフティを外してスイッチを!」

 鍔迫り合いのような膠着状態が続く中、社長は槍でも投げ込む勢いで叫び出す。
そうだ、そういえばこのナイフは普通のナイフでは無いんだ。ワスプインジェクター・・・ナイフだったか。
僕は親指で噴射スイッチのセーフティのピンを外した。キンッと羽を弾ませたような音が響く。

「せ、セーフティを外して・・・、スイッチ!」

 噴射口となる穴は、しっかりとこの人形の中に刺し込まれている。
彼女の云っている事が正しければ、このナイフの力を最大限に発揮する事が出来る筈。
もはやここまで来れば、やぶれかぶれだ。えぇい、ままよ!僕は突起出たスイッチを押し込んだ。

 ボシュぅぅぅぅぅぅぅュゥッツ!

 押し込んだスイッチは連動され、ナイフからは起爆剤でも積んでいたかのようにガスが噴出する。
強烈な爆発音と共に、人形はその衝撃に耐え切れず爆散した。
その光景はまさに一瞬の出来事。小型のナイフからは想像も出来ない衝撃が伝わり、人形が弾け飛んだのだ。
本当にこれは圧縮空気だけで生まれる衝撃か?これではまるで、小型のダイナマイトだ。
人形の身体は四散し、糸を括り付けて操る程の原型を保たれていない。とりあえずだけど、何とか倒せたようだ。

「ぎゃはははははは!やるじゃねえかイサム、人形が木っ端微塵だぜ!」

 幼女は、高らかにサムズアップで「グッジョブ」と云いたげなサインで豪快に笑う。
まるで世紀末の荒野で暴れ回る不成者のモブキャラみたいだ。思った以上の衝撃で、右手は少し痺れていた。
呼吸も荒い。少しでも落ち着かせようとするが、そう思う度に余計荒くなる。

「はぁはぁ、はぁ・・・。思ったより勢い強いんすね・・・。腕持って行かれるかと思った・・・。」

「中々ロマンのある武器だろう?これは刺すよりも、内部から破壊する事に長けたナイフだ。
戦闘慣れしていない君でも、少しは心の支えにはなるだろう。」

 社長は自慢げに鼻息を鳴らし、腕を組んでいた。あくまでもロマン思考の彼女には、時折着いていけない。
それにしてもこのワスプインジェクターナイフという代物、やはり素人が一発本番で使って良い物じゃない気がする。
急激に噴射する五十気圧の冷却ガスの威力は絶大な分、ナイフを掴むこちらにもそれなりの負荷が掛かっているのだ。
スイッチ一つで弾ける衝撃は、未だに腕の痺れが止まらない。
事前に聞いていたとはいえ、何も鍛えていない人間が使って良い物では無いと思うのはきっと僕だけでは無い筈。
何とか降りかかる火の粉を振り払う事は出来たけれど、まだカウントを一つ減らしただけに過ぎない。
この人形たちを攻略するには、身体を木っ端微塵にするか背中に繋がっている糸を断ち切るかだ。
そうこう脳内で僕が考えている間にも、人形たちは次々に襲いかかってきている。
人形たちの猛襲に対して社長は時計の秒針が聞こえるくらい落ち着いており、淡々と対象を処理する。
攻撃を躱しては、即座に背中の糸を断ち切る。その動作に無駄は無く、その踏み込むステップさえも洗練されていた。
事務的にとも捉えれる程に、実に効率的だ。無駄の無い動作で糸を切り、ぼとぼとと人形たちを再起不能にさせる。
蟲の羽をついばむように糸を断ち切ってはいくが、それでもやはり数が多い。
彼女は仕立てたばかりのネクタイを少し緩めながら、怪訝そうな態度を露わにしだした。

「ふむ・・・、だとしてもやはり、この数は堪えるな。」

 戦闘特化に優秀な社長とはいえ、やはり集団戦を嫌う彼女にとっては少しストレスなようだ。
右腕を上下に回し始め、軽いストレッチをしている。彼女の戦闘は一対一のタイマンを好む。
このところ殆どの戦闘が集団でのシーンが多い為、満足に戦えていないのもストレスの原因でもあるのだろう。
いつの間にか僕の方に乗っていたメルは、そんな彼女の悪態に対して直様に横槍を入れ始める。

「マチコ。お前ぇのそれは、ただ面倒臭いだけじゃねぇーか。」

「馬鹿を云え、犬の球遊びとは訳が違うぞメル。集団戦は、仕立てたスーツが汚れるからな。」

 成程・・。それで彼女は人形を木っ端微塵に爆散させず、最小限の方法で人形を処理していたのか。
人形を四散させたら、吹き飛んだ破片などがスーツを汚れてしまうからか。
それどころか当たり所が悪ければ、スーツに穴や傷が入ってしまうのを避けたかったのが本音。
今思えば彼女の力を解放させれば、一気にこの人形たちをまとめて粉砕させる事も出来た筈。
それをしなかったのは、単に仕立てたばかりスーツを汚したくないと云う理由ただ一つだけ。
遣って退けるその姿勢は凄いが原動力となるその魂胆を聞くと、関心から遠退き彼女への感想は「呆れ」まで陥る。

「おいおいおい・・・。」

 社長とメルが喧騒を交える中、颯爽と仰ぐように両手を上げながら仲裁に入ったのは幼女だった。
目を瞑りながら、やれやれとでも云うように彼らの間に近寄り無理くり入り込んできた。

「ん?」

「おいおい、社長さんよぉ。オレの事、忘れてんじゃねぇのか?」

「しかしまぁ、どうしたものか。」

 チップは今日何度目かのドヤ顔を決め込みながら、親指で自分を差していた。
今こそ俺を使え!と云わんばかりの眼差しで、戦場への参加を自ら志願する。
だが幼女の懇願は虚しく、すんなりと社長にスルーされてしまった。彼女にとってはどうでも良かったのだろうか。
上顎に手を当てながら、解決しない戦況を考え込むように見つめていた。
その様子に苛立ったのか、チップは顔を真っ赤に染め上げながら細い腕をプルプルと振るわせ始める。

「おいおいおい!一度俺の目、見といて無視するんじゃねーよ!俺だよ、俺様だよッ!
分かるだろ、ていうか分かれよ!今こそ俺の出番だろーが、なぁキツネッ!!」

 いや、どうやらチップは自信満々に志願したと云うのに、ここまで自然に無視されたのが恥ずかしかったのだろう。
こうも呆気なくあっさりと無い物と認識されてしまっては、チップの威厳なんて微塵も無い。
頭から機関車の煙突から煙でも撒き散らすように、幼女は怒りの地団駄を踏み荒らす。
漸くその騒がしい幼女に気付いた社長は、ふむ、と一度頷いてからチップへと目線を合わせた。

「ほぅ、そういえば貴様も居たな。」

 彼女の中で何かの企みでも整ったのか、薄ら笑みを浮かべながらそう述べた。
確かに先日の河童との戦いぶりから、集団戦での動きはチップの方に分がある。
影を使った広範囲を対象にした攻撃や小柄ですばしっこい幼女なら、このダンスホールは適しているかもしれない。
何よりもチップのこの自信は、先日の戦いでの力の解放で取り戻したもの。
少し不安なのはこいつが何かに没頭していると、周りが見えなくなってしまう事。
気付けば屋敷中や僕らも、巻き添えを食ってしまうんじゃないかという不安だ。

「チップ!」

 そう気を付けるように僕はアイコンタクトを取ってみた。伝わると嬉しいんだが・・・。

「安心しろよ、イサム。オレは元々、影と運を操る悪魔なんだぜ?」

 どうやらダメだったようだ。こいつは“そんな事よりも早く戦わせろ”と、目を爛々と輝かせている始末だ。
槍でも突き刺すように僕へと指を差しながら、幼女は勇ましくも豪語した。
流石の社長も観念したのか、両手を掬い上げるように上へと上げながらシュラグを決め込む。

「四の五の云ってる暇は無いだろうな、マチコ。あいつは、お前ぇより集団戦に関しては器用な方だ。」

「ふん、皆まで云うな。答えはもう出ているさ。」

 今回は、メルやチップの言葉に分があるようだ。
ほんの数秒考え更けた後に、彼女はチップの頭に手を添えながらブツブツと呟き始める。
するとお決まりの魔法陣が小さく展開され、青白い光が幼女の身体を包み込む。

「・・・開ッ!」

 ドンっと炸裂した音と共に、社長はチップの力を再び解放させる。
例に倣って今回も一部能力のみを解放したに過ぎないのだろうが、それでも幼女の変化は今だからこそ分かる。
河童の騒動の時とは違い、僕もある程度の第六感が研がれたお陰で分かる“解放されたチップの存在感の差”。
チップの全身を纏う物、これをマナと呼ぶべきか。力強く、それでいて悪魔らしい禍々しいもの。
けれどそれは何故か嫌な感じはしないのは、決して気のせいでは無い筈だ。なんせ、こいつはチップだ。
どんなに姿やマナの放出量が変わろうと、裏表の無いこいつには心配する要素は良い意味で無い。
前回と同様にチップは背中から数本の太く黒い腕のような影を生やし、赤い瞳は炎のように輝きを揺らめかす。

「な、なんですの⁉︎・・・あれは、一体⁉︎」

「あのチンチクリンは、あー見えて立派な悪魔なんだよメリィ。それと・・・。」

「それと・・・?」

「我が便箋小町の、頼れる社員さ!」

 メリィが驚くのも無理は無い。社長の解放を行わないと、幼女の周りに纏わり付くマナも放出されない。
細胞の気泡を塞ぐように内包されたマナは、圧縮された水圧のように噴き出る。
見た目は幼女で中身は悪魔だという認識はしていたメリィは、想定以上の力の解放に目を丸めていた。
せいぜい小悪魔程度のモノなのだろうと思っていた為に、彼女は驚きを隠せないでいる。
先述の事から僕もチップのこの変化に驚いているので、メリィの反応も無理は無い。
しかしその驚きの表情とは別に、メリィのチップに対する見方が変わったような気がする。
どこか抱えていた不安を脱ぎ去ったような、その意外性に感服したような。

「おっしゃあぁ!待たせたな、デクの棒どもッ!」

 チップは左手で右腕を強く掴みながら、ワラワラと群がる人形たちに対して中指を突き立てる。
放送するなら間違いなくモザイク必須の気合いの入った挑発行為だ。

「あれが、あのチップですの⁉︎今までの比じゃないですわよ!」

「メリィ、そいつはほんの矮小ながら誤りだ。奴は、ただ・・・。奴の力の制御を解除しただけに過ぎないのだよ。」

 幼女の背中を見ていたメリィは指を差しながら、僕へと言及した。
あれでは全くの別物。ネズミの巣から熊が出てきたくらいだ。しかし、これで一つ分かった事もある。
チップの力を封じたそれは、“ギフト”を欺ける事が出来る。成程、社長はこれが狙いか。
悪魔も妖怪も種族で優劣は決まらないと社長から聞いた事がある。では、何で優劣が生まれ決まってしまうのか。
それは単純明快、力の源であるマナの総体量である。だから“ギフト”は自分より下は見下し、上に対しては遜る。
強制的にマナの放出を全カットしているチップを、社長は利用しているんだ。
その油断こそが好気であり、その一瞬が幼女を最大限に活用出来る訳か。

「よぉ・・・、ピリつく威圧はどんな感じだ?このヤロー。人形じゃあ、解かんねぇか?
以前のように運は無くともなぁ、この時間、この角度、全て絶好調だ!」

 チップの背中からは、数本の影の腕が揺らめく。真っ黒なマナを放ち、禍々しく冷たさをひっそりと感じる。
あの幼女の覇気に感化されてか、僕の背中は冷たい指で摩られたように身震いを起こす。
どこかの拳法か功夫のように体勢を構え、背中をアーチ状に大きく反らしている。
また何かの漫画かゲームの真似事をしているようで、解放された事で身体能力が向上している事から調子に乗っている。
靴の踵を整えるように床を二度蹴り付ける。一呼吸すら乱さず、幼女は素早く顔を上げた。

「うぉらぁぁあああッ!!」

 奇声にも近い甲高い覇気と共に、チップは群がる人形たちへと突進していった。
まるでミサイルでも発射したかのように突っ込む姿は、人が飛びかかる勢いの比ではない。
その勢いは踏ん張りを効かせた床を抉り上げ、突進と共に衝撃が突風となって吹き荒れる。
大勢に向かって空中へと飛び掛かるのは本来は自殺行為。ただの動く人形ではなく刃物を持って襲いかかる連中だ。
それをモノともせず突進した理由は、幼女にとって絶対の自信があるからだ。
「お前らには負けねぇ」という絶対的な自信は、たとえそれが虚勢だとしても、自信は力の糧となるからだ。
四本の影の腕が風車のように大きく旋回し始める。宙に浮く人形を掴み上げては、ぶっきらぼうにぶん投げる。
床へと叩き付けられた人形は、粉々に吹き飛び原型を失っていた。回転する影の巨腕は、強烈なラリアットとなる。
数体の人形を巻き込みながらまとめて吹っ飛ばす。伸縮自在に展開するチップのそれは、まさに無双状態だ。
人形たちがいくらその影の腕を斬りつけても、本体であるチップにはノーダメージ。一気に戦場を蹂躙する。
その巨腕を振り回せば、また一体、また一体と次々に叩き落とす。

「ふぅ。」

「・・・って、あれ?社長、一緒に戦わないんですか⁉︎」

 チップの獅子奮迅たる戦いに見惚れていた最中、当の社長は腕を組みながら一息を入れていた。
ただただチップの戦っている様子を見ているだけで、あれから一歩も動いておらずただ佇むだけだった。
思わず突っ込んだ僕に対して、彼女は不貞腐れるようにこちらを見つめ、それは実に面倒臭そうに口を開く。

「何を云っているのだ、君は?大将はギリギリまで温存するものだよ、垂くん。
私は生憎、タイマン特化というのもあるからこそこの手は不向きだ。それにだ。」

「は、はぁ。」

「あのバカに加勢したら、かえって邪魔になるからな。」

 人差し指を立たせ、彼女なりの理論を持ちかける。
確かに得手不得手というものはあるが、こうまであからさまに態度を出す必要があるだろうか。
いやしかし待てよ。それってつまり・・・、そう云う事か?だから、彼女は敢えて手を出さないでいるのか。

「・・・それってつまり、あいつを信用しているという事ですか?」

「でなければ、こうして腕を組んでいまい?それにあいつの顔を見てみろ、実に楽しそうではないか。」

 どうやら彼女もまた、チップを便箋小町の一員としてきちんと迎え入れているようだ。
一員だからこそ、役割を持たせその一任を任せられる。
満更でもない笑みを浮かべた彼女の顔は、どこか今まさに戦場で踊るチップとリンクする。
戦いの場こそ“ギフト”の聖地なのか、その闘争心という本能は人の比ではない。
己の力を、その力量を確かめる為にぶつかり合い、それを喜びと感じながらも比べ合う。
僕以外の周りの奴らは皆揃って“ギフト”だ。彼らはチップの戦いぶりに感化されているのか身震いをしている。
それは一種の武者震いと呼ぶべきか。種族は違えど、根本的な原動力は同じのようだ。
当の社長でさえ言葉にはしないが、組んだ腕を指でトントンと上機嫌に叩く。
まるでお気に入りのロックナンバーをレコードにかけ、徐々にボリュームの摘みを上へ上へと音量を上昇させるように。

「まっ、餓鬼をはしゃがせるには丁度良い塩梅の玩具だな。」

 メルも今日に限っては、チップに対して呆れているという訳ではないようだ。
こいつも満更ではないのか、特に心配を装ってもいない。この集団戦において、この中ではチップが適任。
それは間違いではない。このモジャモジャの変身でも問題は無いのだろうが、チップを選任したのは訳がある筈。
勿論、自ら志願したのも決定打になっているだろうけど、それだけでは片付けたにしては浅すぎる。
きっとその後の、もしもの為の保険を用意したいのか。メルの言霊という能力は器用で色々と便利なところだし。
すると、白い帽子を被った少女メリィは僕のワイシャツを摘み上げながら、二度引っ張ってきた。

「お兄様。じゃあ、あの時云っていた事って。」

「あぁ、そうだよ。あいつは、“運と影を操る悪魔”チップ。制限を解除すれば、ちゃんと強いよ。」

「普段は阿呆なゴミムシも、少しはマシに使えるゴミムシにはなるぜ。マチコの側ならな。」

「それは、お前も一緒だろうが。」

 メルの云っている事も強ち間違いではない。
そして、当のこのモジャモジャも社長に制限を掛けられている存在。いや、正確には少し違うか。
同じような制限をかけて能力を封じられているが、ベクトルが違う。
チップは本来の力を解放出来るのに対して、メルは本来の姿に戻る。
能力のみを解放しているのでチップの解放時間は長く、逆にメルは操る言葉を無制限で使える分、解放時間は非常に短い。
所謂、このダンスホールでの雑魚戦はチップの方がスタミナもあり、程よく向いている。
その証拠に、チップは戦場を喜劇のダンスのように暴れ回っている姿は実に楽しそうだ。

「グラビティ・バインドッ!」

 これは前に見せた技・・・じゃない。微妙に違う気がする。
影の手たちが人形を掴み上げ、そのまま勢い良く床へと叩きつけてメキメキと圧迫させた。
力強くねじ伏せようとする手から脱しようと抵抗する人形に対し、チップは広げていた手の平をがっしりと握り込む。
連動されていた影の手からは、禍々しい紫色のマナが溢れ出し次第に人形を包み込んでいく。
暴れ出していた人形は徐々に途切れた歯車のようになり、徐々に動きが鈍くなっていった。
やはりこれも相手の力を吸い取っているようで、マナを搾り取った人形から次々と押し潰していった。
その一体を倒したのも束の間、幼女の背後から五体ほどの人形達が刃物を握り締めながら飛びかかってきた。
チップは後ろにも目があるように直様振り向き、背中から生える数本の黒い手を変形させる。
親指を立て人差し指と中指をくっつけた手の形はまさに銃を模してはいたが、影は形を整えて銃そのものとなる。
八本の黒い腕は銃となり、一斉に人形達へと照準を向け始める。幼女が一度ひとたび、パチンと指を鳴らせば号令の合図。
黒い銃たちは一斉に掃射され、黒い弾丸の雨を降らせる。

「ガトリング・デストラクション!」

 黒い弾丸は針金のように細く弾丸というよりは、クナイを飛ばす機関銃みたいだ。
一発一発が人形達を貫き、反撃の素振りすら与えさせずに蜂の巣状態にさせていた。
その掃射はガトリングと付くだけあって、エイミングが必要無いくらいの弾数を人形たちへと浴びせて撃ち落とした。
向かってきた人形たちを撃ち落とすとそのままの流れで機関銃は止まる事無く、円を描くように周りの人形へも浴びせた。
針のように尖った弾は、人形の腕や頭、更には握っていた武器を撃ち落とす。人形は撃たれるばかりのサンドバック。
その弾にもマナが込められている為か、背中に繋がっていた糸も断ち切っていた。
次々と倒れていく人形をモノともせずに、後ろに控えていた同胞たちも飛びかかってくる。
心を持たない人形は臆する事はなく突っ込んでくるのは、まるでブリキの動く兵隊みたいだ。
小型剣に、手斧、そして手槍。後ろに控えていた迫り来る人形たちの武器は先ほどよりも、より物騒になっている。
チップを中心に皆囲うように集まってくる。一見に窮地に見舞われているようにも見えるが当の幼女は違った。
まるでそれを狙っていたかのように口角を上げ、ニヤリと笑みを浮かべる。
幼女は体勢を低く構えながら、床に手を当て力を込める。連動するように幼女の背中から伸びる影の腕も揺らぎ始める。
やがて数本の黒い腕は、一本の極太の腕となり巨大な掌を広げた。
掌からは紫色の光を帯びた球体がポツリと浮かんでいる。一種のエネルギー体のように電流を纏いながら浮遊している。
そして、チップは拳を天井へと突き上げるように上げると、凝縮されたエネルギーが一気に解放される。

「インパルス・グレイッ!」

 その言葉と共に紫色の光が眩く発光し、凄まじい衝撃波がチップを中心に巻き起こしていった。
衝撃波を直撃した人形たちは堪らず、漏れなく壁まで吹っ飛ばされていく。
離れていた僕らでさえ、つい後退りしたくなる程の突風に押し流れそうになるくらいだ。
確かに解放したら強いとは云ったが、まさかここまで暴れ回るとは・・・。
ここまで衝撃波を与えて、粉々に吹っ飛ばすのなら糸を切る必要も無い。吹っ飛ばされた人形は既に再起不能だ。
そんな最中、自動人形オートマタの少女メリィはどこか呆れた様子で幼女の戦闘を見つめながら口を開く。

「そして絶賛、中二病真っ最中の悪魔な訳ですわね・・・。」

「ははは・・・、漫画の影響、かな?」

 少女の云う通り、チップの技はどれもこれも中二病全開の漫画で登場するものばかりだ。
その元ネタが例えわからなくとも、幼女の無理に背伸びをした言動さ。そして、闇だのなんだのと彷彿させる技名。
見た目も黒い眼帯をしていることから、邪眼がどうのとか云うタイプにも思えてしまう。
ただし、こいつは本物の悪魔だ。それ故に本気で考え、本気で行動している。

「聞いて見ているこっちが、恥ずかしくなってしまいますわ。」

 幼女は一歩下りなるべく距離を取っていた。
決してそれは戦闘に巻き込まれる恐れがあるとか、巻き添えを喰らってしまうとかの為に取った距離では無い。
なるべくなら他人のフリを、本気の中二病全開の幼女からドン引きしているのだ。
それは溜め息すらも通り越し、出来れば目を当てたくない。当のメリィもツバの広い帽子を深く下げ俯く。

「良し、良いぞチップ!技名は出した後では無く、出す前の方が王道だぞ!」

 何を隠そう、このセリフを声を大にして叫んでいたのは社長だ。
自分の声が大きく通るように口元に手を添えて反響させながら、戦う幼女へと助言する。
その瞬間、僕とメリィは同時に社長へと勢い良く振り向く。そして、意思疎通が取れたように少女と意見が合致する。
間違いなく幼女に拍車をかけたのは、彼女であると。

「お兄様。どうやら、元凶は居たようでしてよ・・・。」

「メリィ、僕は頭痛が痛いよ。」

「お兄様、落ち着いて下さいまし。頭痛が痛いなんて重言じゅうげんをお使いになる程、錯乱してはなりませんわ!」

 少女は慌てるように僕へフォローを入れてきた。
全く、うちの会社の“ギフト”はどうしてこうも一癖もネジがズレているのか。
時に僕が可笑しいのでは無いかとさえ錯覚を与えてしまう程だ。

「オラオラオラオラ!どうした、木偶の坊ども!数が多い方が強いんじゃねぇんだぜ?」

 気が付けば、チップは周囲に浮遊していた人形たちを一掃していた。
力強く腕を組んだと思えば、拳を振り上げ喜びをブレンドとしたガッツポーズを見せつけていた。
五十体近く居た人形たちを全て粉々に粉砕し、損壊した人形の山が散見されていた。

「強ぇ方が、強ぇんだよ!ボスに伝えとけ!」

 奥の部屋へと繋ぐ扉に対し、中指を立てながら幼女は大声で挑発をしていた。
何が凄いって、こいつはあれだけ暴れ回っておきながら未だ息一つ上がっていない。
まだまだ本調子。スタミナはまだ充分に温存出来ており、ピョンピョンと飛び跳ねているくらいだ。
ふと気付けば、背中から生えていた影の腕は蝋燭の灯火を吹き消したように無くなっていた。
禍々しい紫色のマナを放出していたのも止め、完全に戦闘モードから切り離している状態。
一頻り仕事を終えた幼女は、余裕の表情で両手を後ろに添えながら片足を弾ませている。

「やるじゃないか、チップ!」

「チップ、先程まではバカにして申し訳ありませんでしたわ。少し・・・、見直しましてよ。」

 思わず僕らはチップへ賛賞を与えていた。
あのメリィですら花でも手向けるように、幼女を褒めている始末だ。
これには流石のチップも喜びを隠し切れないのか、口角を上げながら笑っていた。

「へっへー!どんなもんよー?これが俺様の力なんだぜ!」

 人差し指で鼻の下を摩りながら、眉を上げ下げし鼻息を鳴らしていた。
しかし、その時である。力の代償は、幼女の返答を有無すらも与えさせずに訪れる。

 ーボシュンッ。

「へっ・・・?」

「え・・・?」

 まるで煙突から湧き立つ煙のようにチップから、白煙が溢れ出していた。
僕らは時が止まったかのように思考が停止してしまい、各々がその場で立ち尽くす。
煙が消え去った頃には、ポツンと中心に佇む幼女・・・。いや、ちょっと違う気がする。
その者は着ていた服装こそは変わらないものの、確かにチップ本人である筈だが容姿が少し違う。

「え、うわ!ウワ!あ、あ、あ・・・あぁぁぁぁぁっぁっっぁっっぁあぁあぁ‼︎」

 本人曰くの自慢のボサボサにハネた長い髪はサッパリ切られてしまい、尖った耳がハッキリ見える程のベリーショート。
今でも信じられないとでも云うのか、目が点となったチップは自分の短くなった髪の毛を摩る。
短くなってはいるが、ボサボサとした癖毛の目立つ面影はある。

「おぉ、すげースッキリしたじゃねぇかチップ。」

 メルは静かに笑いながら、他人事のように口を開く。
その表情は明らかに誰が見ても悪気を込めて言葉に添えている。

「お、俺の・・・、俺の髪が・・・。艶々のキューティクルが・・・。」

 艶々かどうかは知らんがいくら髪を摩っても、いくらそのハネた髪を引っ張っても元の長さには戻らない。
涙目となった瞳を潤わせて、小刻みに震わせた唇から嘆く。
まるで空が落ちてきたのでは無いかとさえ彷彿させるその蒼白となった顔色を浮かばせていた。
枯れ落ちた枝木のように、肩をすくめ力を失った足腰はやがてパタリと落とし膝を付く。

「当たり前だ、あれだけ力を放出したんだ。力が無限な訳が無いだろう。
使った分だけお前の髪の毛は縮む。なーに、時間が経てば元に戻るさ。」

 そう社長はチップへと凄んだ。
確かにあれだけの能力と威力を叩き出した中で、ノーリスクで扱えるとは思わなかったが。
意外な代償に思わず一同、笑いが沸々と湧き上がる。やがて、ぷつりと糸が途切れたように我慢の緒が切れる。
短髪となって無気力の幼女を見て、僕らは腹を抱えて笑った。
それを面白くないと思ったのか、チップは蒼白から一転。今度は達磨にも負けない程に顔を赤く沸騰させる。

「なんじゃあああ、こりゃあああぁぁぁぁぁ⁉︎」

 ダンスホールに幼女の悲痛な叫びが木霊していたのだった。
チップの事はとりあえず自業自得の等価交換だと思い、僕らは奥の扉へと向かう事にしたのだった。
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