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04.崩れる音
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志貴の目が覚めれば外は夕焼けで染まっていた。
うっかり寝過ぎてしまったのとソファで寝ていたせいで体は痛いし、なにより朝方までクラブを梯子し遊んでいたので疲れが凄かった。
自分の家に帰る気にはならず遼佑の家に上がり込んでいるが、散らかさない限りは怒られることはない。
部屋を見渡し、酔った自分が散らかしていないことを確認してから浴室へ足を向ける。
遼佑が旅行に出てから既に一週間。その間志貴は昼夜問わず女性達の間を揺蕩っていた。
ご飯を食べるのも、睡眠を取るのも全て誰かしらと一緒。
以前から誰かと共に行動することは多かったが、今回はその回数がおかしなことになっていて、志貴はそれが不思議でならなかった。
今までであればご飯を食べるのも寝るのも一人でできていた。しかしそれができなくなっていたのだ。
一人で食べるご飯は味が感じられないし、一人で寝る夜は何故か心細い。
こんな状況に何故なっているのか分からないまま、けれども志貴は女性達といればその現象も起きない。すぐにそのおことに気がついた志貴は、一人の時間を確保しながらも食事と夜の予定を入れていた。
熱めのシャワーを浴びて脳が覚醒していけばふと、さっきまで一人で寝れていたことに気がついた。
流石に疲れすぎたのだろうかと考えながら、置いてある自分の服に着替えて、慣れたように洗濯機に着ていた服を放り込む。
お酒の匂いが移ったら困ると遼佑がいつも言っているのを思い出して、寝ていたソファに消臭剤もかけ、空気清浄機のスイッチも入れる。
途中でお腹が盛大に鳴ったが何かを食べるのは億劫で、のそのそと寝室まで行きベッドにぼふんと飛び込んだ。
肌触りがいいシーツに染み付いた遼佑の香りを嗅いでごろごろとしていれば、再び眠気が襲ってくる。
そうしてやっと、この香りのおかげで一人寝が寂しくないのだと志貴は悟ったのだった。
それから然程経たない頃、ガチャリと鍵が開けられ玄関の扉が開く音がした。
ちょうど覚醒する寸前だった眠りは、その音で完全に覚めてしまう。
この家の鍵は家主である遼佑と志貴以外に持っていない。もう一人、静馬がマスターキーを持っているが、それは静馬がこのマンションのオーナーだからだ。
いくら仲が良くても静馬がこの家に無断で入ることはない。
遼佑の旅程もまだ一週間残っている。そんな状態で帰ってくるはずがない。遼佑はセフレ達との予定はきっちりこなすタイプだからだ。
予期せぬ事態に脈が早鐘を打つ。無意識に布団を手繰り寄せてぎゅっと握りしめていれば、小さく聞こえていた足音がピタリと止まり、寝室の扉がゆっくりと開いた。
「ちょっとアナタ、なんでここにいるのかしら。ここは遼佑さんの家でしょ」
現れたのは綺麗な顔立ちの女性。驚きのあまりに目を見開く志貴を、女性は不愉快さを隠そうとせず顔を歪めた。
「あのね、ここは私と遼佑さんの家なの。理解できるかしら? 不法侵入よ、一体どうやって入り込んだのかしら」
「え、だって遼佑が……」
「まさか男のセフレも居たなんて、彼の奔放さも困ったものだわ」
「いや、て言うか君は誰なの」
混乱する頭でかろうじて出てきた言葉はそれだった。途端に片眉を跳ね上げた女性は、盛大な溜め息をついたあと、左手を見えるように前に出す。
「彼の婚約者ですけど、なにか?」
その言葉を肯定するかのように、薬指にはキラリと指輪が輝いていた。
うっかり寝過ぎてしまったのとソファで寝ていたせいで体は痛いし、なにより朝方までクラブを梯子し遊んでいたので疲れが凄かった。
自分の家に帰る気にはならず遼佑の家に上がり込んでいるが、散らかさない限りは怒られることはない。
部屋を見渡し、酔った自分が散らかしていないことを確認してから浴室へ足を向ける。
遼佑が旅行に出てから既に一週間。その間志貴は昼夜問わず女性達の間を揺蕩っていた。
ご飯を食べるのも、睡眠を取るのも全て誰かしらと一緒。
以前から誰かと共に行動することは多かったが、今回はその回数がおかしなことになっていて、志貴はそれが不思議でならなかった。
今までであればご飯を食べるのも寝るのも一人でできていた。しかしそれができなくなっていたのだ。
一人で食べるご飯は味が感じられないし、一人で寝る夜は何故か心細い。
こんな状況に何故なっているのか分からないまま、けれども志貴は女性達といればその現象も起きない。すぐにそのおことに気がついた志貴は、一人の時間を確保しながらも食事と夜の予定を入れていた。
熱めのシャワーを浴びて脳が覚醒していけばふと、さっきまで一人で寝れていたことに気がついた。
流石に疲れすぎたのだろうかと考えながら、置いてある自分の服に着替えて、慣れたように洗濯機に着ていた服を放り込む。
お酒の匂いが移ったら困ると遼佑がいつも言っているのを思い出して、寝ていたソファに消臭剤もかけ、空気清浄機のスイッチも入れる。
途中でお腹が盛大に鳴ったが何かを食べるのは億劫で、のそのそと寝室まで行きベッドにぼふんと飛び込んだ。
肌触りがいいシーツに染み付いた遼佑の香りを嗅いでごろごろとしていれば、再び眠気が襲ってくる。
そうしてやっと、この香りのおかげで一人寝が寂しくないのだと志貴は悟ったのだった。
それから然程経たない頃、ガチャリと鍵が開けられ玄関の扉が開く音がした。
ちょうど覚醒する寸前だった眠りは、その音で完全に覚めてしまう。
この家の鍵は家主である遼佑と志貴以外に持っていない。もう一人、静馬がマスターキーを持っているが、それは静馬がこのマンションのオーナーだからだ。
いくら仲が良くても静馬がこの家に無断で入ることはない。
遼佑の旅程もまだ一週間残っている。そんな状態で帰ってくるはずがない。遼佑はセフレ達との予定はきっちりこなすタイプだからだ。
予期せぬ事態に脈が早鐘を打つ。無意識に布団を手繰り寄せてぎゅっと握りしめていれば、小さく聞こえていた足音がピタリと止まり、寝室の扉がゆっくりと開いた。
「ちょっとアナタ、なんでここにいるのかしら。ここは遼佑さんの家でしょ」
現れたのは綺麗な顔立ちの女性。驚きのあまりに目を見開く志貴を、女性は不愉快さを隠そうとせず顔を歪めた。
「あのね、ここは私と遼佑さんの家なの。理解できるかしら? 不法侵入よ、一体どうやって入り込んだのかしら」
「え、だって遼佑が……」
「まさか男のセフレも居たなんて、彼の奔放さも困ったものだわ」
「いや、て言うか君は誰なの」
混乱する頭でかろうじて出てきた言葉はそれだった。途端に片眉を跳ね上げた女性は、盛大な溜め息をついたあと、左手を見えるように前に出す。
「彼の婚約者ですけど、なにか?」
その言葉を肯定するかのように、薬指にはキラリと指輪が輝いていた。
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