【完結】ハッピーライフのその先は。

関鷹親

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03.セフレ以上恋人未満

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 異国の海風が肌を撫でる船上。
 プールがついたクルーザーでは、沢山の男女が酒を飲みながら行き交い楽し気な笑い声を上げる。
 遼佑は柵に寄りかかりながらスマホを取り出し通知をチェックするが、目当ての人からは何も来ていないなかった。
 お互いに予定がある時は、よほどのことがない限り連絡を取らないルールを決めているのだから来るはずもないのだがーー

「一回くらいは連絡くれても良い気がするけどな」
「ちょっと、私といるのに他の女のこと考えてるの?」

 自分思考に苦笑を漏らしていれば、飲み物を持って戻ってきた女性が拗ねたように頬を膨らませる。

「違うよ。ほら前に話しただろう? 友達の志貴だよ」

 あまり納得していない様子の女性の機嫌を宥めるように抱き寄せる。
 ふわりと香る匂いも、柔らかさも何もかも違う。彼女達と志貴を比べるようになったのはいつからだっただろうか。
 最初は大人になって初めてできた心を許せる友人に、感じたことのない高揚感があるくらいだった。

 それがいつしか傍にいるのが当たり前になり、体を重ねることも当たり前となっていた。
 今まで他人にここまでの距離感を許したことはなかった。相手が本気になる前に気が付かれないよう、そうやってそっとフェードアウトするのが常だったのだ。

 男女の違いのせいだろうか、志貴といる時間は何かに耐えなければという考えが湧かない。
 普段ならば気に触るようなことでも、志貴であれば許せた。
 これは恋なのだろうか? と考えたこともあるが、それとはまた違った形のような気がしてならない。

 一般的な恋人同士であれば、相手が不特定多数の人と性的な関係があると言うのは許しがたいことだろう。
 だが遼佑は志貴が女性達と何をしていようと嫉妬することはなかった。寧ろ微笑ましいことすらある。
 それは志貴も同じで、遼佑がこうして女性の一人と旅行していても嫉妬などしないし、帰れば旅行中の話を強請られるくらいだ。

 なによりも、今の自由な状態が一番楽で楽しい。下手に恋人などという言葉に縛られたくはなかった。
 そうなったら窮屈でしかたない。
 過去、散々ぱら嫌な思いをしてきた遼佑がやっと辿り着いた答えが今の状態だ。
 普通とズレていたとしても、これが最適解だった。それを共有できる志貴は貴重だ。
 だからといって、彼が恋人であるかと言われたらそうではないのだが。

「セフレ以上、恋人未満……ってところか? うーん……」

 それもなんだか違う気がしなくもないのだが、結局考えても答えは出ない。

「いつまでそこに居るのよ遼佑! 早く行くわよ!」

 女性に呼ばれた遼佑は、いくら考えても答えが出なさそうな思考を頭を軽く振って止め、目の前の旅行を楽しむことにした。
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