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02.寂しいかもしれない

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 目が覚めたのは昼過ぎで、お腹が減って仕方がなかった。誰か一緒に食べてくれる人は居ないかとスマホをポチポチと操作するが、平日の真っ昼間では今々で捕まるわけもなく。
 結局夜の予定だけ早々に決めて、志貴は友人である静馬の家に行くことにした。

「あらまぁ志貴ちゃん、どうしたの」
「お腹すいたから静馬さんとご飯一緒に食べようと思って」
「遼佑ちゃんは?」
「アイツはセフレの一人と旅行で暫くいないよー」
「あらあら、それはつまらないわねぇ」

 志貴達が住むマンションのオーナーである静馬の部屋はその最上階にあり、近所の親戚の家に遊びに行く感覚で志貴はよく顔を出していた。
 他の女性達と違い、静馬だけは志貴も遼佑も体の関係を持ってはいない。
 静馬がそういった行為よりも、気に入った人間を愛でることの方が好きということもある。

 家に入れば、数人の女の子達がキャッキャと楽しそうに料理をしているところで、美味しそうな香りが部屋に充満している。

「美味しそうだねぇ」
「志貴じゃん。また静馬さんにご飯集りに来てるの?」
「だって遼佑居ないし、他の子達も今すぐは捕まらないんだもん。一人で食べるのも嫌だしさー」
「あんたって本当に遼佑さん好きよね」
「気が合う貴重な男友達だからねー」

 何か手伝おうとすれば、やることはないから静馬と遊んでいろとキッチンから追い出された志貴は、手招きする静馬の元へ。
 膝を叩く静馬の指示に従い、志貴は慣れたように太腿に頭を乗っける。
 そうすればこれまた慣れたように静馬のしなやかな手が頭を撫でた。
 遼佑とは違う大きさと温度。完璧な満足感を得られはしないそれに、知らず知らずのうちに眉間に皺が寄っていたようだ。

「まぁまぁ、遼佑ちゃんが少し居ないくらいで拗ねちゃって」
「えー違うよー?」
「そうかしら」
「そうだよ」

 いつも一緒にいる相手が居ないことは確かに寂しさを感じるがそれだけだ。
 この距離感が崩壊して、お互いが心地良くなくなったらどうなるか。きっと友達ですら居られなくなるかもしれない。
 そんなの今以上に寂しくなるに決まっているのだ。なによりもーー

「だって俺達、恋人じゃないしねー」
「本当に貴方達は困った子達だわ。そこまで相性がいいなら恋人同士の方が良いのじゃないの? 独り占めできるわよ?」
「うーん、俺達はそれが嫌なんだよね。だから今のままで充分なんだよ」

 本当に、今のままで充分すぎるほどなのだ。詮索しない、詮索されない。好きな時に好きなだけ。
 お互いが何をしていようが普段から関係ない。不干渉な部分が心地良い。それを手放したくはない。
 
「いつか後悔する時が来そうだけれどねぇ」
「その時は静馬さんのお家に転がり込むねー」
「はいはい、いつでも大歓迎よ」
「あ、ねぇねぇ静馬さん、ボクお小遣い欲しいなぁ」
「こら! 静馬さんに集るんじゃないわよ! 他の子に貰いなさい、他の子に!」
「こらこら喧嘩しちゃダメよ、はい志貴ちゃん。遼佑ちゃんがいないからって無駄遣いはしちゃダメよ?」

 渡された札の多さにビックリしながらも、半分を横入りして来た女性に渡す。
 遼佑からもらった分もあるので、そんなに多くは必要ない。無くなればまた別の女性に貰えば良いだけだ。
 機嫌が良くなった女性に頭をぐしゃぐしゃに撫でられたあとは、皆で仲良く食卓を囲む。
 笑いの絶えない空間は、志貴の寂しく思う気持ちを塗り替えるには充分だった。





*明日も更新します!
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