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01.仲良しの友達

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*新作です!よろしくお願いします!








「りょーちゃん、今いくらある?」

 ソファにだらりと寝転びながら志貴しきは、出掛ける準備に忙しそうに動く遼佑りょうすけに声をかける。

「あー……今これしかないけど、もっと必要か? 振り込んどく?」

 財布からあるだけのお札を差し出される。三万五千円、遼佑が居ない二週間を過ごすには充分な金額だ。

「大丈夫ー、足りなかったら誰かに貰うし」
「そうか? あぁ、分かってるとは思うけど、ここには誰も連れ込むなよ? 連れ込むなら自分の家にしてくれ」
「りょーちゃんちに誰か入れるわけないでしょー? ここに入って良いの俺だけじゃん」

 よくできましたとばかりに頭を大きな手で乱雑に撫でられ満足気に目を細めた志貴は、遼佑の着ているジャケットを掴んで引き寄せた。

「んっ」

 舌を絡め、深く口付ける。いつの間にか密着していた体は昨夜の情事を思い出し、簡単に熱を上げさらに先を求めてしまいそうになる。

「そろそろ放せ志貴、出るのに遅れる」
「はぁーい」

 ソファから起き上がった志貴は、大きなスーツケースを持った遼佑を玄関まで見送ることにした。

「お土産よろしくねー」
「はいはい、留守番よろしくな」
「いってらっさーい」

 呆気なくパタンと扉がしまると、途端に家の中が静まり返る。先程上がった熱は急激に冷めてしまった。
 テレビの音量を普段よりも上げれば、幾分か気分が紛れる。
 さてここから二週間、どうやって過ごそうかと再びソファにだらしなく寝転び考え始めた。



 遼佑との出会いは偶然とも、必然とも言えた。
志貴が住む部屋の隣に酷く格好いい人が住んでいるなと思っていたら、毎度連れ歩く女が違うことに気がついたのだ。

 スラリと伸びた背に、程よくついた逞しい筋肉。端正な顔立ちはキリッとしていて、世間でいうところの"スパダリ"系のイケメンだった。
 そんな容姿をしていれば入れ食い状態だよなと納得してしまう。
 志貴とはまた違ったタイプだ。志貴はどちらかと言えば、女性から可愛がられる方である。
 大きめでやや垂れた目尻に、いい具合に並ぶ泣き黒子が二つ。平均的な身長で、女性と並んでも可もなく不可もなくーー
 基本的に他人の体温が近い方が好きなので、スキンシップは多い方で、どうやらそれが大型犬に懐かれているような感覚で母性本能を擽るらしい。

 昔からそうなのでこれまで志貴は特定の相手は作らず、色んな女性の間をゆらゆらと彷徨っていた。
 一時的な関係を望む人は多いし、何より志貴はただ一人だけと関係を続けると言うのが苦痛でしかたなかった。

 一人に絞れば安定はするが、その人を優先して行動しなければならず、自身の自由はなくなってしまう。
 それが酷く嫌だったのだ。

 世間一般的にはよろしくないが、志貴にとっては世間一般の考え方の方が合わない。
 そのことに対して特に思うことはないが、周りからだらしないだの、不誠実だのと小言を言われるのは辟易としてしまう。

 似たような考えの男友達が欲しいと何気なく呟いた時、「アンタとそっくりな人が居るわよ」と言ったのは志貴を可愛がってくれる女性の一人である静馬だった。

 そうして引き合わされたのが、隣の家に住む遼佑だったのだ。
 そこから意気投合するのはあっという間だった。似たような考え方、似たようなライフスタイル。オマケに家は隣同士だ。
 お互いに初めて噛み合う友達ができたことが嬉しく、気がつけば一緒にいることが増えた。

 そしてある日、二人は酒の勢いもあり体の関係を持ってしまう。これも言うなれば必然だったのだろう。
 お互いノーマルだが、一度は経験してみたいと言う好奇心がやはりお互いにあって、気がつけば体を重ねていたのだから。
 当然のように志貴が受ける側にされたが不満はない。そうだろうなとしか思わなかったし、遼佑を襲っている自身の姿などまったく想像ができなかった。

 初めて同性と致した感想は、最高だったと、これに尽きた。まさかの体の相性が良すぎたのだ。
 それからはさらに仲が深まり、体の関係も当然のように続いた。
 どちらも行けたのだろうかと他の男と関係を持ってみようとお互い試してみたこともあるが、やはりダメだったという結果に笑ったのも楽しい思い出の一つだ。

 だが決して二人は恋人になった訳ではなかった。
 お互いにそんな形は求めていないのは分かりきっていたからだ。そう言ったお互いの距離感も心地いい。
 女性達との関係はお互い続いているし、そのことになにも突っ込もことはない。

 たまに他人の匂いを纏わせ過ぎていたり、会う日数が離れた時に興奮し、激しく求め合うのもあった。お互いに一番であるが、そこに他人と自由があることが二人にとっては最高のスパイスだったのだ。

 そんな遼佑は二週間のバカンスに出掛けた。勿論相手は遼佑のセフレの一人である。
 久々に距離が空くということは、その後に待っているのは酷く甘い夜だ。
 さてそれまでどうやって暇と寂しさを潰そうかと考えているうちに、志貴の瞼は閉じ気がつけば眠りの旅に出ていたのだった。
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