猫被りの恋。

圭理 -keiri-

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遅すぎる自覚 《高校2年生・春》

第10話 素直〈SIDE: 水都〉

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〈SIDE: 水都〉



オレは君が好きで、大切で。
君の隣にずっといたくて。
君の隣にいるオレじゃない誰かに嫉妬する。

やっと気づいたよ。
これがオレの素直な気持ち。



















氷神ひかみと出会って二度目の春。
桜が鮮やかに咲いた頃、オレたちは2年生に進級した。
新学年最初のイベントはクラス替え。
この1年間でそれなりに仲良くなったメンバーと氷神ひかみも一緒に掲示を確認した。
今年も氷神ひかみと同じクラスになれる、そう思っていたのに。



氷神ひかみは〈特進落ち〉していた。



なんてことない風にいつものトーンで「クラス別れちゃったね」と去っていく背中に、オレは何も言えなくて。
ただ見送るしかできなかった。
本当は言いたいことがあったのに。
今年も一緒のクラスにいられると思ってたのに。


それ以降、オレと氷神ひかみは、少しずつ距離ができたように思う。
クラスが変われば、当然時間割も違う。
だから、教室内で過ごしているとなかなか氷神ひかみに会えない。
それに、生徒会の副会長になった氷神ひかみは、春からずっと忙しそうだから。
それでもたまにある移動教室の時に廊下で偶然すれ違うこともあった。
そういう時は決まって生徒会役員の誰かと過ごしている。
オレの教室が生徒会室の隣だから、余計遭遇するのかもしれないけど。
話しかけようと思っても、仕事のことだったりしたら邪魔になるかもしれない。
そう思うと、なかなか話しかけられない。
学校という枠の中を抜ければ、お互いにLINEでやりとりはしているし、時々電話もする。
決して話しかけられないわけじゃない。
今までのように、気軽に声をかければいいだけ。
それなのに、オレは一歩が踏み出せなくなっていた。
だって、いつも偶然見かける氷神ひかみの隣には、違う人がいるから。



氷神ひかみの隣にいるのがオレじゃない。



それが一番堪えた。
どうしてオレじゃないんだろう、どうしてオレがそこにいないんだろう。
氷神ひかみのそれが仕事だっていうのはわかるのに。
学校で話せない、たったそれだけのこと。
学校で隣に立てない、たったそれだけのこと。
でもそれがオレにとってどうしようもないくらい悲しいことだった。

そうしてやっと素直に認められたんだ。
オレは氷神ひかみが好きで、大切で。
氷神ひかみの隣にずっといたくて。
氷神ひかみの隣にいるオレじゃない誰かに嫉妬するってこと。
オレは、氷神ひかみに対してはどうしようもなく嫉妬深くなってしまうということ。


今更素直に認められたって、氷神ひかみに近づけない。
氷神ひかみのいない時間なんてつまらない。
オレはどうしたらいいんだろう…。
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