猫被りの恋。

圭理 -keiri-

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さようなら、また逢う日まで

第23話 抗えない本音

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〈SIDE: 蒼夜〉


生きることに執着したことなんてなかったと思う。
もし俺の身に何かが起きたとしても

『それは運命だったんだ』

そう思ってた。





















真っ白な空間。
静寂。
スイが好きだって言ってた音楽が、俺の耳に流れてくる。
音源はこっちに来る前に新しくしたスマホ。
スイが詰め込んでくれたオススメ曲のプレイリストは、今の俺の心の支えだ。








ドイツに来てからもう1年。
何十回も、何百回も繰り返し聴いた。
この音楽と、病室の窓から見える青い空が、スイと繋がっている気がして。




スイはちょうど受験シーズンらしい。
いまは受験勉強が忙しくて、年明けからは入試が続くとぼやいてた。
そうやってがんばってる姿を聞くと、俺も挫けていられないなと思う。
それでもやはりこの真っ白な空間は、油断すると俺に恐怖心を植え付けていく。




怖い。
怖い、怖い。
怖い、怖い、怖い。
怖い、怖い、怖い、怖い。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い…







治療の成果は、決して良いとは言えないのだろう。
1年経っても、いまだに俺の身体に合う薬の組み合わせはない。
少し気を抜くとすぐに副作用が出てしまい、その度にICUのお世話になっている。
こんな姿はスイに見せられない。
だから、伝えない。

ただ俺は、ひたすらに願う。
スイのもとに帰ることを。
『ただいま』 って言うことを。
あれほど諦めてたのに、今は『生きたい』と願ってる。

そう。
だから俺は耐えるんだ。
この地獄のような日々を。
生き抜くために。





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