猫被りの恋。

圭理 -keiri-

文字の大きさ
上 下
24 / 48
さようなら、また逢う日まで

第24話 それはずっとここに在る〈SIDE:水都〉

しおりを挟む
〈SIDE:水都〉


どれだけ時間が過ぎても。
どれだけ距離が離れても。

君の声も、温もりも、なにもかもすべて。
それはずっとオレの中にある。


























蒼夜そうやがドイツに旅立って、季節が一巡して、オレは数えるのをやめた。
蒼夜そうやのいない時間を数える虚しさが苦しくて。
そうして苦しい時は、蒼夜そうやと過ごした時間を思い出す。
あんなに楽しくて、笑った日々はない。
それと同じくらい、悲しくて苦しいこともあったけれど。

最後に触れた温もりも、いまだに憶えてる。
あの温もりにもう一度触れられることを望んでる。
最後に聞いた声もいまだに耳に残ってる。
どんな顔してたんだろうって想像しては、いろんな表情を思い出して泣きそうになるけれど。




会いたい。

顔が見たい。

声が聞きたい。

そして、名前を呼んでほしい。






あの日、蒼夜そうやが出発する時。
オレたちは約束をきめた。
・連絡は週末だけ
・電話はしない
このふたつ。
スマホで簡単に繋がれるのにね。


寂しいけど、離れてても頑張れるように。
あんまり連絡しすぎると依存しちゃうから。
それが最善だった。



蒼夜そうやも、むこうで勉強してるらしい。
学校に通うんだっていって、英語とドイツ語を勉強してるとか。
ドイツ語の日常会話はまだ難しいってぼやいてたけど、英語でいろんな教科を学んでるって。
歴史がすごく興味深くて、ついのめり込んでるっていってた。
蒼夜そうやらしいなって思った。


蒼夜そうやは、治療の様子はほとんど教えてくれない。
順調なのか、そうじゃないのか、遠く離れたオレに知る術はない。
蒼夜そうやのご両親もしらないらしい。
送られてくるLINEはいつも楽しそうな様子だけど、本当はどうなのか。
知りたいと思うし、知るのが怖いとも思う。
ただどうか、蒼夜そうやが無事であるように。
『おかえり』って伝えられるように。
オレにできるのは、ただひたすら願うだけ。





しおりを挟む

処理中です...