猫被りの恋。

愛しい君へ 《エピローグ》

最終話 君が好き

〈SIDE: 蒼夜〉


この日を待っていた。





















“いってくる”　からもう３年。
３年も経った。



この3年間、いろいろな治療をした。
なかなか合う薬に出会えず、何度も副作用で苦しんだし、医者も頭を抱えてたけど。
1年を過ぎたあたりで少し回復傾向が見られて、初めて【外出許可】をもらえた。
何もかもが新しいものばかりで大はしゃぎして。
その後はお約束通り体調崩して2週間も寝込んだ。




それから暫くして、病院の近くの学校に行かせて貰えるようになった。
はじめは全くわからなかった英語も、いつの間にか少しずつわかるようになって、英語を通してドイツ語も覚え始めたくらいに。

学校はとにかく楽しかった。
いろんなものを見れたし、なにより面白い人たちがたくさんいて。
とはいえ、病人だから、朝の体調次第では行かせて貰えなかったけど。
『日本にいたときはどんな状態でも学校に行ってた』
って言ったら
『体調が悪いときに休まないからこうなったんだ』
って医者に怒られた。







ドイツで治療を始めて2年過ぎたくらいには、体調もわりと穏やかになってきてて、ほぼ普通の生活が出来てた。
それでも3年もかかったのは、念のためにっていうのと…もう一つ、抵抗力が弱まってるときに運悪く風邪をこじらせたのが原因だった。
そのせいで、しばらくほぼ隔離状態になったのは苦い思い出だ。
とにかく医者の言うことは大人しく聞いて、どんなにしんどい治療もイヤな治療も我慢した。




だって、一日でも早く、スイに逢いたかったから。
元気な姿を見せたかったから。












今から1ヶ月前。
病院のほうは何とか退院出来て、2週間前に受けた最終確認の為の精密検査の結果も良好。
帰国許可が下りた。
そうしてやっと念願の日本帰国が実現したんだ。

















そして今日。
3年ぶりの日本に戻ってきた。
スイには何も連絡をしないでの帰国。


ドイツは、最初のころこそ母親がいてくれたけど、その後は早々に帰国してもらった。
どうせ病院生活だし。
それに父親は仕事があって、家のことが出来ない昔ながらの男だからね。
それに、近くに母さん達がいたら甘えそうな気もしてたから。

退院してから帰国するまでの一ヶ月はドイツで治療してる間に出来た友達の家に泊めてもらった。
いわゆる　『ホームステイ』　ってやつ？





空港で久しぶりにあった両親は、大人になった俺を見てだいぶ驚いていた。
3年…、もう20歳だもんね。
そして喜んでくれた。

家に帰るまでの車の中では、ドイツでの治療のことや学校の友達のこと、離れてる間の出来事を話した。
言いたいことがたくさん溢れてきて、話しても話しても足りないくらいに。


自宅は俺が去ったあの時と何も変わってなくてほっとした。
『俺の居場所』　が確かにここにある、そのことに安堵してた。
着替えとかそう言うのは後から着くようにしたから、俺がもってるのは少し大きめのスポーツバッグ一つだったけど、それを部屋に放り出すとスマホを片手に外に飛び出した。
両親には　『後で連絡する』　そう言って。













スイに逢いに行くんだ。
キミが居たから頑張れた。
“ただいま”　と　“ありがとう”　を伝えたい。
そして　“大好きだよ”　って、今度こそきちんと目を見て言うんだ。







『　　君が好き。　もう絶対はなさないから　　』









＊＊＊＊＊


やっと帰ってきました！

この後ちゃんと会えたのかな、とか
ちゃんと告白したのかな、とか
作者なのに妄想が止まらない。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
このあとは、予告通り、作者的には糖度高めな番外編です。