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《afterstory #01》恋人観察日記 / SIDE:水都
01:一日め、秘密の日記を始めました
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お題【恋人観察日記編】お借りしています
サイト名:TOY/管理人:遊
サイトアドレス:http://toy.ohuda.com/
■■■
———今日から観察日記を始めようと思う。観察するのは、恋人の蒼夜…———
「って、なんか書いてて恥ずかしくなってきた…」
思わず机に突っ伏して、顔に集まった熱を覚まそうと深呼吸を繰り返す。
自分で書いた言葉だというのに、『恋人』というワードの破壊力…ちょっとまだ免疫ない。心臓びっくりしちゃう。
それでもふと脳裏に浮かぶのは、今日から同じアパートに住むことになった愛しい人の顔。
蒼夜がドイツから帰国してあっという間に3年が過ぎた。
本来は大学生になってる年齢での帰国だったけど、いつの間にか編入試験パスして、大学生になった蒼夜。
しかも、高校時代のイメージと結びつかない、教育学部への進学。
オレは私立大学の文学部。
オレのほうが一年早く卒業して、春から一般企業で社会人として働いてる。
蒼夜は、今年の夏に採用試験を受けて、秋に見事合格が決まった。
忘れもしない、合格発表の日。
仕事上がりのオレと合流して、合格祝いってことでいつもみたいに居酒屋で飲み食いして、ちょっと酔っ払ってふたりで公園で涼んでた時。
合格祝いに何が欲しいか聞いたんだ。
そしたら
「じゃあ、スイと一緒に住む権利がほしいな」
って。
酔っ払ってて、頭と耳がバカになったのかと思ったけど、穏やかに優しそうに笑ってる顔を見たら、どうやら聞き間違いではなさそうで。
まだ着慣れないスーツのネクタイを緩めて考える時間を稼いでみたけれど、いきなりのことにうまく答えられなくて。
戸惑ってたら、「冬までに考えてくれると嬉しい」って預けてくれた。
それから、いろいろ考えたんだ。
学生の間はお互いに時間に余裕があって、結構頻繁に行き来してて。
オレが社会人になってからは、蒼夜がマメに来てくれるようになって。
もちろん泊まりで、それこそ嫌というほど甘やかしてくれて。
そんな甘くて幸せな日が、一緒に住めば毎日続く…。
なんとなく切ない気持ちで帰っていく蒼夜を見送ることがなくなる。
そんな極上の日々を手放せるはずがないって思い至って、冬を待たずに了承した。
それから、休みの合う日は物件探しに出かけた。
一応ルームシェアということにして、よさそうな物件をいくつも見に行った。
そして冬の始まりの頃、ふたりで過ごす部屋を決めた。
それぞれに一部屋ずつ、それから広めのリビングと、料理しやすそうなキッチン。
もちろん、バストイレは別で、お風呂が広めなのがいい。
お互い電車を使うから、駅からも近いところ。
いい部屋見つけたねって言いながら、引越しの手配もした。
そして、今日。
ひと足先に引っ越していた蒼夜に合流するように、オレもここに越してきた。
2人で住む部屋に。
出迎えてくれた蒼夜は、いつもよりラフな姿だったけど、そのラフさがまたかっこよくて。
これからはこうして出迎えてもらえたり出迎えたりできるのかと心の中でにやけてしまった。
オレは、今日一日を振り返りながら、またノートにペンを走らせる。
今どきスマホでも日記は書けるけど、蒼夜の観察日記は手書きにしたくて。
———今日は、朝から引越しだった。
出迎えてくれた蒼夜がいつもよりラフなのにかっこよくてびっくり。
もしかしてこれは夢?
オレが荷物を片付けてる間に、蒼夜が美味しいご飯を作ってくれてた。
昼も夜も蒼夜の手作り。最高に美味しかった。
食後はリビングのソファーでのんびり紅茶飲みながらお喋りした。
蒼夜は、無事卒論提出できたみたい。
これで卒業確定って笑ってた。うん、蒼夜なら大丈夫。
そろそろ寝ようかってなって、「今日は引越しで疲れただろうから、ゆっくりお休み」って、まさかのデコチュー。
しかも流れるようにさらりと。
あのイケメン、どこでそんな技覚えてきたんだ。ドキドキして、思い出すだけでやばい———
なんて書いてたら、ああ…やばい、思い出してしまった。
まだおデコに唇の触れた感触が残ってるみたい。
あいつ、絶対タラシになったと思う。海外生活のせい?
オレは別に女の子じゃないのに、なんでか蒼夜にそうされるとドキドキしてやばい。
病院生活のせいか、たしかにあんまり日に焼けてない肌は、男の割に白いし、肌触りもいい。
でも、筋肉はそこそこあるんだ。別にヘナチョコでもない。
同じベッドで寝る時にくっつきたくなる感じ。
不思議と幸せで温かくて甘い。
って、だめだめ。
今日一緒に寝られないの寂しいな…とか、なに考えてるんだオレ!
頭に浮かんだ邪な思いを慌てて打ち消して、今日の観察日記を最後まで書き上げると、本棚の見つかりにくいところに隠した。
今日から始まった、蒼夜との生活。
やっと離れてた時間が埋まり始める予感に、しあわせな気持ちでいっぱいになる。
明日が楽しみだ、なんて遠足前夜の子どもみたいだけど。
しあわせなんだからしかたないよね。
そうして明日に思いを馳せて眠りに落ちた。
———やっと蒼夜と一緒に暮らせる日々が始まる。いや、始まった。
これからいい事も嫌なこともあるだろうけど、蒼夜と居られる時間を大切にする。
蒼夜。だいすきだよ———
サイト名:TOY/管理人:遊
サイトアドレス:http://toy.ohuda.com/
■■■
———今日から観察日記を始めようと思う。観察するのは、恋人の蒼夜…———
「って、なんか書いてて恥ずかしくなってきた…」
思わず机に突っ伏して、顔に集まった熱を覚まそうと深呼吸を繰り返す。
自分で書いた言葉だというのに、『恋人』というワードの破壊力…ちょっとまだ免疫ない。心臓びっくりしちゃう。
それでもふと脳裏に浮かぶのは、今日から同じアパートに住むことになった愛しい人の顔。
蒼夜がドイツから帰国してあっという間に3年が過ぎた。
本来は大学生になってる年齢での帰国だったけど、いつの間にか編入試験パスして、大学生になった蒼夜。
しかも、高校時代のイメージと結びつかない、教育学部への進学。
オレは私立大学の文学部。
オレのほうが一年早く卒業して、春から一般企業で社会人として働いてる。
蒼夜は、今年の夏に採用試験を受けて、秋に見事合格が決まった。
忘れもしない、合格発表の日。
仕事上がりのオレと合流して、合格祝いってことでいつもみたいに居酒屋で飲み食いして、ちょっと酔っ払ってふたりで公園で涼んでた時。
合格祝いに何が欲しいか聞いたんだ。
そしたら
「じゃあ、スイと一緒に住む権利がほしいな」
って。
酔っ払ってて、頭と耳がバカになったのかと思ったけど、穏やかに優しそうに笑ってる顔を見たら、どうやら聞き間違いではなさそうで。
まだ着慣れないスーツのネクタイを緩めて考える時間を稼いでみたけれど、いきなりのことにうまく答えられなくて。
戸惑ってたら、「冬までに考えてくれると嬉しい」って預けてくれた。
それから、いろいろ考えたんだ。
学生の間はお互いに時間に余裕があって、結構頻繁に行き来してて。
オレが社会人になってからは、蒼夜がマメに来てくれるようになって。
もちろん泊まりで、それこそ嫌というほど甘やかしてくれて。
そんな甘くて幸せな日が、一緒に住めば毎日続く…。
なんとなく切ない気持ちで帰っていく蒼夜を見送ることがなくなる。
そんな極上の日々を手放せるはずがないって思い至って、冬を待たずに了承した。
それから、休みの合う日は物件探しに出かけた。
一応ルームシェアということにして、よさそうな物件をいくつも見に行った。
そして冬の始まりの頃、ふたりで過ごす部屋を決めた。
それぞれに一部屋ずつ、それから広めのリビングと、料理しやすそうなキッチン。
もちろん、バストイレは別で、お風呂が広めなのがいい。
お互い電車を使うから、駅からも近いところ。
いい部屋見つけたねって言いながら、引越しの手配もした。
そして、今日。
ひと足先に引っ越していた蒼夜に合流するように、オレもここに越してきた。
2人で住む部屋に。
出迎えてくれた蒼夜は、いつもよりラフな姿だったけど、そのラフさがまたかっこよくて。
これからはこうして出迎えてもらえたり出迎えたりできるのかと心の中でにやけてしまった。
オレは、今日一日を振り返りながら、またノートにペンを走らせる。
今どきスマホでも日記は書けるけど、蒼夜の観察日記は手書きにしたくて。
———今日は、朝から引越しだった。
出迎えてくれた蒼夜がいつもよりラフなのにかっこよくてびっくり。
もしかしてこれは夢?
オレが荷物を片付けてる間に、蒼夜が美味しいご飯を作ってくれてた。
昼も夜も蒼夜の手作り。最高に美味しかった。
食後はリビングのソファーでのんびり紅茶飲みながらお喋りした。
蒼夜は、無事卒論提出できたみたい。
これで卒業確定って笑ってた。うん、蒼夜なら大丈夫。
そろそろ寝ようかってなって、「今日は引越しで疲れただろうから、ゆっくりお休み」って、まさかのデコチュー。
しかも流れるようにさらりと。
あのイケメン、どこでそんな技覚えてきたんだ。ドキドキして、思い出すだけでやばい———
なんて書いてたら、ああ…やばい、思い出してしまった。
まだおデコに唇の触れた感触が残ってるみたい。
あいつ、絶対タラシになったと思う。海外生活のせい?
オレは別に女の子じゃないのに、なんでか蒼夜にそうされるとドキドキしてやばい。
病院生活のせいか、たしかにあんまり日に焼けてない肌は、男の割に白いし、肌触りもいい。
でも、筋肉はそこそこあるんだ。別にヘナチョコでもない。
同じベッドで寝る時にくっつきたくなる感じ。
不思議と幸せで温かくて甘い。
って、だめだめ。
今日一緒に寝られないの寂しいな…とか、なに考えてるんだオレ!
頭に浮かんだ邪な思いを慌てて打ち消して、今日の観察日記を最後まで書き上げると、本棚の見つかりにくいところに隠した。
今日から始まった、蒼夜との生活。
やっと離れてた時間が埋まり始める予感に、しあわせな気持ちでいっぱいになる。
明日が楽しみだ、なんて遠足前夜の子どもみたいだけど。
しあわせなんだからしかたないよね。
そうして明日に思いを馳せて眠りに落ちた。
———やっと蒼夜と一緒に暮らせる日々が始まる。いや、始まった。
これからいい事も嫌なこともあるだろうけど、蒼夜と居られる時間を大切にする。
蒼夜。だいすきだよ———
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