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《afterstory #01》恋人観察日記 / SIDE:水都
09:最終日、今日は書くのが恥ずかしい
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お題【恋人観察日記編】お借りしています
サイト名:TOY/管理人:遊
サイトアドレス:http://toy.ohuda.com/
■■■
———今年最後の恋人観察日記。今日は、クリスマスイブの蒼夜からのプロポーズのその後を記録しておこうと思う。正直恥ずかしくてちゃんと書けるか分からないけど。というか、なんて書いたらいいのか分からなくて、今も頭を抱えてるんだけど。———
クリスマスイブのプロポーズをきちんと理解してから三日。
オレは仕事そっちのけでひたすら悩んだ。
そして昨日の夜。
やっと決心して、蒼夜と話をしたんだ。
話、というか…プロポーズの、返事をしたくて。
一昨日仕事納めになって、昨日からは社会人の冬休み。
蒼夜の大学は一足早く冬休みに入ったみたいで、バイトも昨日で年内最後。
蒼夜がバイトでいない部屋は、なんとなくいつもと違っていて。
蒼夜の気配のする生活が当たり前になってるんだな、って実感した。
『スイの隣にいる権利がほしい』、蒼夜の言葉。
それがずっと頭の中を巡って、耳に何度も聞こえてくるようで、離れてくれない。
蒼夜がそばにいて、手を伸ばせば触れられるという幸せな生活。
それがこの先ずっと続く、と思うと、正直なところとても嬉しい。
できるなら手放したくない、オレにとって一番大切な時間だから。
けれど、春から学校の先生になる蒼夜のことを思うと、これからいろんな人に出逢って、その中に心惹かれる人がいるかもしれないって不安になる。
今よりも少し広い世界に進んだ時、それでも変わらずにオレを求めてくれるだろうかって。
バイトが終わって「ただいま」って帰ってきた蒼夜を「おかえり」って出迎えた。
いつもと逆のやりとりに、ほんのり嬉しい気持ちが込み上げてきて。
夜の風に当たって冷えた身体にギュッと抱きこまれて、胸が高鳴った。
オレの作ったあまり手の込んでない夕食を、それでも嬉しそうに「美味しい」って食べてくれる姿に幸せだなって感じた。
オレが洗い物を片付けている間に風呂に入った蒼夜が、ソファーで座って待っていたオレをいつものごとく後ろから抱きしめてくる。
湯上がりの体温と、ほのかに香るオレと同じシャンプーの匂い。
一緒に住んでるんだなって実感する。
一日の中のいくつものささやかな幸せを噛みしめて、やっと蒼夜ときちんと話せる気持ちが固まった。
「あのね、クリスマスイブに、蒼夜の言ってたこと…考えたんだ」
「うん」
「あれって…プロポーズ、だよね。あと、22のキス。昔、オレが蒼夜に話したネット小説のやつ。後からやっと分かったんだ」
「分かってもらえてよかった」
「すごく、嬉しかった。ありがとう。でも…」
二人並んでソファーに座って、自然と触れるオレの右手と蒼夜の左手。
なんとなく照れ臭くて、視線をあちこちに彷徨わせてしまう。
カラカラに乾いたのどに、言葉が絡みつくようで。
やっとゆっくり話し始めるオレを、蒼夜はただひたすら穏やかに聞いていてくれた。
蒼夜のこと、すごく大好きなこと。
ずっとそばにいてほしい、そう思ってること。
でも、蒼夜がこれから新しい世界でいろんな人に出会ったとき、それでもオレのそばにいてくれるのか不安になってること。
ひとつひとつ声に出していくたびに、オレの視界が歪んでいく。
掠れて震える声は、もうごまかしようもないほどの涙声。
23歳にもなって情けないことに泣いてしまった。
「スイ、ぎゅってさせて」
蒼夜は泣きじゃくるオレを膝の上に乗せた。
逃げようにも言葉通りぎゅっと抱きしめられて、逃れられない。
だから泣いたままの顔を肩口に埋めて隠した。
そんなオレをあやすように、蒼夜が背中を撫でてくれる。
オレの大好きな、甘くて蕩けるような体温。
「スイの言うとおり、俺はこれからいろんな人に出会うと思う」
「でもね。どんな人に出会っても、スイじゃないならみんな一緒」
「どん底で、スイへの気持ちさえ諦めようとしてた俺を拾い上げてくれたのは、スイだよ」
「俺を信じて3年も待っていてくれたのは、スイなんだよ」
「治療が終わって帰国したとき、スイがもう俺のこと好きじゃなかったらどうしようって思ってた」
「それでもスイは変わらずに好きでいてくれて、おかえりって言ってくれたよね」
「あのときからずっと、俺の帰る場所はスイのいるところで」
「もう絶対スイのそばから離れないようにしようって思ってた」
「スイにかっこいいって思ってもらえるように、もっとずっと好きになってもらえるように、そのためだけに料理だって人付き合いだって頑張ってきただけで」
「ただ、スイの帰る場所になれたらいいなって、そう思ってる。あの時からずっと。」
「愛してる。俺はぜーんぶスイのものだよ」
蒼夜の思いがけない告白は、オレの涙腺をぶっ壊して。
とめどなく溢れる涙で、蒼夜の部屋着の肩口が湿っていく。
オレが不安に思ってたことは、全部、オレのためだけに頑張った結果で。
蒼夜の思いの向く先には、必ずオレがいるんだって。
その言葉が何よりも嬉しかった。
「ねえスイ。約束する。俺はスイを幸せにする」
「だから、お願い。俺のことは、スイが幸せにして」
極上の蜂蜜みたいに甘い蒼夜の声に、グズグズになったまま肩口で頷くだけしかできなかったのは言うまでもない。
———約束する。蒼夜のことは、オレが幸せにする。これから先ずーっと。———
■■■
泣き虫水都くんと溺愛蒼夜くん。
水都くんが泣くと、蒼夜くんは膝抱っこでよしよしするタイプです。
なんせ超溺愛。
蒼夜くんがドイツで治療している時、ひまつぶしにとネット小説を紹介していた水都くん。
水都くんが読んで面白かったものや気に入ったものを紹介していた、と言う裏設定あり。(めっちゃわかりづらくてすみません。)
意外とロマンチストな水都くんと、そんな水都くんをよく理解して、要望に応えようとする蒼夜くんです。
サイト名:TOY/管理人:遊
サイトアドレス:http://toy.ohuda.com/
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———今年最後の恋人観察日記。今日は、クリスマスイブの蒼夜からのプロポーズのその後を記録しておこうと思う。正直恥ずかしくてちゃんと書けるか分からないけど。というか、なんて書いたらいいのか分からなくて、今も頭を抱えてるんだけど。———
クリスマスイブのプロポーズをきちんと理解してから三日。
オレは仕事そっちのけでひたすら悩んだ。
そして昨日の夜。
やっと決心して、蒼夜と話をしたんだ。
話、というか…プロポーズの、返事をしたくて。
一昨日仕事納めになって、昨日からは社会人の冬休み。
蒼夜の大学は一足早く冬休みに入ったみたいで、バイトも昨日で年内最後。
蒼夜がバイトでいない部屋は、なんとなくいつもと違っていて。
蒼夜の気配のする生活が当たり前になってるんだな、って実感した。
『スイの隣にいる権利がほしい』、蒼夜の言葉。
それがずっと頭の中を巡って、耳に何度も聞こえてくるようで、離れてくれない。
蒼夜がそばにいて、手を伸ばせば触れられるという幸せな生活。
それがこの先ずっと続く、と思うと、正直なところとても嬉しい。
できるなら手放したくない、オレにとって一番大切な時間だから。
けれど、春から学校の先生になる蒼夜のことを思うと、これからいろんな人に出逢って、その中に心惹かれる人がいるかもしれないって不安になる。
今よりも少し広い世界に進んだ時、それでも変わらずにオレを求めてくれるだろうかって。
バイトが終わって「ただいま」って帰ってきた蒼夜を「おかえり」って出迎えた。
いつもと逆のやりとりに、ほんのり嬉しい気持ちが込み上げてきて。
夜の風に当たって冷えた身体にギュッと抱きこまれて、胸が高鳴った。
オレの作ったあまり手の込んでない夕食を、それでも嬉しそうに「美味しい」って食べてくれる姿に幸せだなって感じた。
オレが洗い物を片付けている間に風呂に入った蒼夜が、ソファーで座って待っていたオレをいつものごとく後ろから抱きしめてくる。
湯上がりの体温と、ほのかに香るオレと同じシャンプーの匂い。
一緒に住んでるんだなって実感する。
一日の中のいくつものささやかな幸せを噛みしめて、やっと蒼夜ときちんと話せる気持ちが固まった。
「あのね、クリスマスイブに、蒼夜の言ってたこと…考えたんだ」
「うん」
「あれって…プロポーズ、だよね。あと、22のキス。昔、オレが蒼夜に話したネット小説のやつ。後からやっと分かったんだ」
「分かってもらえてよかった」
「すごく、嬉しかった。ありがとう。でも…」
二人並んでソファーに座って、自然と触れるオレの右手と蒼夜の左手。
なんとなく照れ臭くて、視線をあちこちに彷徨わせてしまう。
カラカラに乾いたのどに、言葉が絡みつくようで。
やっとゆっくり話し始めるオレを、蒼夜はただひたすら穏やかに聞いていてくれた。
蒼夜のこと、すごく大好きなこと。
ずっとそばにいてほしい、そう思ってること。
でも、蒼夜がこれから新しい世界でいろんな人に出会ったとき、それでもオレのそばにいてくれるのか不安になってること。
ひとつひとつ声に出していくたびに、オレの視界が歪んでいく。
掠れて震える声は、もうごまかしようもないほどの涙声。
23歳にもなって情けないことに泣いてしまった。
「スイ、ぎゅってさせて」
蒼夜は泣きじゃくるオレを膝の上に乗せた。
逃げようにも言葉通りぎゅっと抱きしめられて、逃れられない。
だから泣いたままの顔を肩口に埋めて隠した。
そんなオレをあやすように、蒼夜が背中を撫でてくれる。
オレの大好きな、甘くて蕩けるような体温。
「スイの言うとおり、俺はこれからいろんな人に出会うと思う」
「でもね。どんな人に出会っても、スイじゃないならみんな一緒」
「どん底で、スイへの気持ちさえ諦めようとしてた俺を拾い上げてくれたのは、スイだよ」
「俺を信じて3年も待っていてくれたのは、スイなんだよ」
「治療が終わって帰国したとき、スイがもう俺のこと好きじゃなかったらどうしようって思ってた」
「それでもスイは変わらずに好きでいてくれて、おかえりって言ってくれたよね」
「あのときからずっと、俺の帰る場所はスイのいるところで」
「もう絶対スイのそばから離れないようにしようって思ってた」
「スイにかっこいいって思ってもらえるように、もっとずっと好きになってもらえるように、そのためだけに料理だって人付き合いだって頑張ってきただけで」
「ただ、スイの帰る場所になれたらいいなって、そう思ってる。あの時からずっと。」
「愛してる。俺はぜーんぶスイのものだよ」
蒼夜の思いがけない告白は、オレの涙腺をぶっ壊して。
とめどなく溢れる涙で、蒼夜の部屋着の肩口が湿っていく。
オレが不安に思ってたことは、全部、オレのためだけに頑張った結果で。
蒼夜の思いの向く先には、必ずオレがいるんだって。
その言葉が何よりも嬉しかった。
「ねえスイ。約束する。俺はスイを幸せにする」
「だから、お願い。俺のことは、スイが幸せにして」
極上の蜂蜜みたいに甘い蒼夜の声に、グズグズになったまま肩口で頷くだけしかできなかったのは言うまでもない。
———約束する。蒼夜のことは、オレが幸せにする。これから先ずーっと。———
■■■
泣き虫水都くんと溺愛蒼夜くん。
水都くんが泣くと、蒼夜くんは膝抱っこでよしよしするタイプです。
なんせ超溺愛。
蒼夜くんがドイツで治療している時、ひまつぶしにとネット小説を紹介していた水都くん。
水都くんが読んで面白かったものや気に入ったものを紹介していた、と言う裏設定あり。(めっちゃわかりづらくてすみません。)
意外とロマンチストな水都くんと、そんな水都くんをよく理解して、要望に応えようとする蒼夜くんです。
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