ミスター・アンビシャス・テイカー

川神モガン

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序章 アンビシャス

考察と結界

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 龍之介がゾンビ男?と出会う数分前────





「ん?」



 鉄塔の上で龍之介を監視していた男は、自分の目を疑った。

 今の今まで自分が監視していた龍之介が霞のように消えてしまったからだ。





「皇閣下!少年をロストした!」



「なんだと!?」





 皇は咥えていた煙草を捨て、男から双眼鏡を奪い取る。

 くまなく見渡しても龍之介の姿は見つからない。





「おい、貴様何をしていたんだ?」





 皇は男を血走った眼で睨みつける。今にでも襲い掛かってきそうな殺意を含めて。





「いやいやいや!俺はちゃんと見てましたって!」



「じゃあ、なんで消えたんだ?」



「知らネッすよ。けど、おそらく敵の結界だ」



「チッ…。まあ、そう考えて間違いないな」





 皇は双眼鏡を男に投げつける。

 驚いた男は双眼鏡を落としそうになるが、ギリギリのところでキャッチした。





「アブねっ!」



「チッ、使えない」



「そんなこと言わんといて下さいよ。たぶん奴ら、だいぶ前から結界を薄く張ってたから気づかれなかったんですよ」



「だとしたら厄介だな」





 二人は同時に内ポケットから煙草を取り出し、ライターで互いの煙草に火をつけ合った。

 煙を思いっきり吸い上げ匂いを堪能した後、息の合ったタイミングで煙を吐き出した。





「はぁ……ニコチン接種完了。さてと、これからどうしますか?」



「どうもこうも、まずはあの結界が何か分からねば対策のしようがないだろ」



「ですよねぇ」





 男は頭を再びタバコを吸う。





「ふぅ~…。ありゃたぶん人払いか催眠系の結界ですね」



「理由は?」



 男は淡々と考えを述べ始める。





「俺はともかく皇閣下でさえ結界の存在に気づけなかったとなると、こいつはだいぶ薄い結界だ。しかも、ここまで薄いとなるとだいぶ効果は制限されてくる。とても単純な…、それこそ自分たちの姿を隠しつつ少年を確実に捕らえるのであれば、視覚効果よりも人目をつかなくさせた方が確実だ」





「じゃあ、今頃住民たちは家の中で眠ってるか気絶してるかか…。はぁ、これは情報操作が大変だな。そんじゃ後のことは全部任せたぞ」



「…え?」



「こんなペラペラな結界しか張れないような連中だ。お前ひとりでもなんとかなるだろ」





 男は皇の顔を窺った。彼女は先ほどとは打って変わって無表情のまま煙草を吸っている。





「ちょ、え?一緒に来てくれないんですか?」



「当たり前だ。そもそもこれはお前の単独任務だ。私が手を貸す義理はない」



「義理はないって…。あんたあの少年に興味があったんじゃないのかよ?」





 思わずため口になった男は一瞬マズイと思った。

 だが、皇は顔色を一切変えることなく話し続ける。





「確かに興味はある。なにせ、あのイカレ宗教野郎どもが外部に依頼してまで確保したい存在だからな。今後のことを考えたら無理にでもそれを阻止しなければならない」



「だったらあんたも一緒に来た方がいいだろ」



「私は命令されないと動かない」



「命令って…あんたに命令できる奴なんて隊の中にいねぇだろ」



「何か言ったか?」





 男の小言を皇は聞き逃さなかった。





「なんでもありません!」



「ならとっとと行け!私はその間に応援の要請をしておく」



「了解であります!」





 男は皇から逃げるように鉄塔から飛び降りた。10メートル以上の高さがあったが男はたやすく着地すると、そのまま龍之介が消えた方向に走り始めた。

 それを見届けた皇は短くなった煙草を捨て、新しい煙草を咥えて火をつけた。





「はぁ…。ま・た・面倒なことにならなきゃいいんだがな」





 スーツのポケットからスマホを取り出し電話をかける。





「皇だ。二番隊と五番隊を全員招集しろ。隊長もできるだけ来るように。あと、リンゴちゃんも呼んできてくれ。”プレゼントが手に入るかも”と伝えろ、そうすれば察する。……………あぁ、よろしく頼んだぞ」





 スマホをポケットにしまうと皇はしゃがみこんだ。

 とりあえず自分の仕事は終わったということだろうか。煙草を吸いながら空を見上げた。





「……嫌な天気だな」













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