幻獣を従える者

暇野無学

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021 エラートの決断

 1m角程の薬草袋を三角にして首に巻き、使役獣を示すメダルを付けてギルドの表で待たせて中へ入る。
 初めてのギルドだが、中はマルチエ冒険者ギルドと同じ作りなので判り易い。
 買い取りのおっちゃんに、沢山持っていると告げて解体場へ行かせてとお願いする。

 「見ればGランクの様だが、解体場に行くほど獲物を狩れるのか?」

 「使役獣が狩った獲物が沢山あるのですよ」

 そう言って腰のマジックポーチをポンポンと叩くと、顎で解体場の入り口を示して行けと言われた。
 解体場へ向かうと、後ろで何やら揉めているが俺には関係ないのでそのまま奥へ向かう。
 早い時間なので解体係意外は誰も居らず、俺を見て不審気だ。

 「ホーンラビットからヘッジホッグやホーンボア等数が多いのですが」

 「初めて見る顔だが・・・その目の色は幻獣使いか?」

 「はい、俺じゃ獲物を狩るどころか反対に餌にされかねませんからね」

 「まぁ、そのひょろっこい身体じゃ、ゴブリンにも負けそうだな」

 何年も戦闘訓練を受けているので、流石にゴブリンに負ける様な事はないが説明が面倒なので黙っておく。
 解体係の示してくれた場所に並べて行くが、グレイは雑多に収納して種類別に出すなんて芸当は出来ない。
 俺は出された物を片っ端からマジックポーチに放り込んだので、並べるのが大変だ。

 ホーンラビット 19羽
 ヘッジホッグ 14頭
 エルク 5頭
 ホーンボア 11頭
 フレイムドッグ 21頭
 ハウルドッグ 15頭
 グレイウルフ 7頭
 ブラックウルフ 9頭

 「ちょっと待て! どれ位持っているんだ?」

 「これってランク3なので、後は山羊が二種類5頭ですね」

 「二種類?」

 「はい、初めて見るので名前を知りません」

 そう返事をして、残りの山羊さんを並べる。

 「あー、幻獣が狩ったのをマジックポーチに放り込んだだけか。査定に時間が掛かるので、ギルドカードを置いて食堂で待っていろ」

 食堂に行くと、稼ぎに出なかったのか少数の者が食事をしたり朝っぱらから飲んでいた。
 新参者の俺はジロジロと見られて居心地が悪いが、カウンターで朝食をお願いすると、トレーにのったスープとパンに野菜や肉を挟んだ物が出てきて銅貨一枚と言われた。
 市場で食べるより量が多くて安いが、味は一段落ちるのでちょとがっかり。

 「兄さん、一人かい?」

 「一人ですけど、連れはいますよ」

 「連れ・・・何処にだ?」

 「入り口の横に居ますが」

 「あのチビ猫の事か。テイマーなら丁度良い、俺達の斥候役で使ってやるよ」

 「んー、それは良いのですが腕に自信はありますか? でないと死にますよ」

 「面白ぇ事を言うじゃねぇか。一丁試してみるか?」

 「お前等は、よっぽど稼ぎが少ないんだな」

 後ろからやって来た男が、揶揄い気味に声を掛けて来た。

 「何だと、もう一度言ってみやがれ! ・・・何だ、ゲルトか」

 「死にたくなければ其奴に関わるな」

 「何でだ? タイガーキャットと言っても所詮犬っころサイズだぞ」

 「だからお前達は稼ぎが少ないんだよ。表の奴には親がいるんだが、大きいので南門の外で寝転んでいるよ。それに其奴の目を見て何も気付かないのか」

 「片目が青いだけで、ちょっと変わっているだけだろうが」

 「ばーか、この間からの騒ぎを知らないのか」

 「どう言う意味だよ?」

 「お前に教えても金にならないし、死にたくなきゃ自分で調べろ」

 ゲルトと呼ばれた男は鼻で笑って離れて行ったが、残された男達は微妙な顔で黙り込んでしまった。
 大して上手くない朝食なのに、余計に飯が不味くなってしまった。

 タイミング良く査定係のおっさんがやって来て、俺の前に立っている奴等を押しのけて査定用紙を差し出してきた。
 受け取ったものの、値段はよく判らないので礼を言って了承したが直ぐに後悔した。

 ホーンラビット 19羽×8,000ダーラ=152,000ダーラ
 ヘッジホッグ 14頭×27,000ダーラ=378,000ダーラ
 エルク 2頭×62,000ダーラ=124,000ダーラ
  3頭×78,000ダーラ=234,000ダーラ
 ホーンボア 5頭×73,000ダーラ=365,000ダーラ
  4頭×66,000ダーラ=264,000ダーラ
  2頭×62,000ダーラ=124,000ダーラ
 フレイムドッグ 9頭×13,000ダーラ=117,000ダーラ
  7頭×11,000ダーラ=77,000ダーラ
  5頭×8,000ダーラ=40,000ダーラ
 ハウルドッグ 5頭×16,000ダーラ=80,000ダーラ
  7頭×14,000ダーラ=98,000ダーラ
  3頭×11,000ダーラ=33,000ダーラ
 グレイウルフ 3頭×41,000ダーラ=123,000ダーラ
  4頭×37,000ダーラ=148,000ダーラ
 ブラックウルフ 5頭×55,000ダーラ=275,000ダーラ
  4頭×52,000ダーラ=208,000ダーラ
 グレイシープ 1頭×130,000ダーラ
  2頭×56,000ダーラ=112,000ダーラ
 オレンジシープ 1頭×73,000ダーラ
  1頭×69,000ダーラ
 計 3,224,000ダーラ

 また細かく書いてくれたが総額で3,224,000ダーラ、多いのか少ないのかよく判らない。
 と言うか獲物の単価が高いのか安いのかが分からない。
 40日近くエリンザスの手前で滞在していたが、その間にグレイが魔法の練習がてら狩りをした結果の一部だ。
 3,224,000を40日で割ると、一日平均80,000少々。
 6、7名で狩りをすると、一人頭11,000から13,000ダーラにしかならない。
 冒険者って危険な割に儲からないのがよく判る。

 使役獣を連れたテイマーを仲間にすれば、危険は使役獣に任せて稼ぎだけ手に入るのだから声を掛けてくるはずだ。
 でも目の付け所は間違っていない、大物はグレイが保管しているので稼ぎはもっと大きいだろう。

 マジックポーチに金貨が17枚程あるので32枚足して49枚、ランク3-30の物が金貨35枚だったので、下取りに出せばランク5-10が買えそうだ。
 今回は紹介状を貰えないので、魔道具商に出向いて直接交渉しなければならない。
 一度街の外へ出て、マジックポーチ中の物をグレイに預けてからお出掛けだ。

 少し遅く街に戻り、警備兵に魔道具商の場所を尋ねると丁寧に教えてくれたが、クラウスさんが何か言い含めている様だ。
 取り敢えず場所は聞いたのでブァルター通りのフンベルト商会へお出掛けだ。

 この店も表に警備の者が立っていて用件を尋ねられたが、3-30の物を見せて容量の大きい物に買い換えたいと告げると中へ入れてもらえた。
 手持ちのマジックポーチを売り、ランク5-10の物が欲しいと伝えると3-30の物を確認して金貨25枚で引き取れると言われた。
 ランク5-10の物は金貨70枚、7,000,000ダーラなので、今後の為にランク6-10でどの程度のお値段か確認する。

 ランク4以上はマジックバッグと呼ばれると教えられて、ランク5以上はワンランク上がる毎に金貨35枚必要だと言われた。
 ランク6-10を買うと金貨105枚、10,500,000ダーラと聞いてこれ以上の物は諦めて、5-10を7,000,000ダーラで買い今後は時間延長をすることに決めた。

 時間延長処理は中に物が入っていても大丈夫と教えてくれたが、手数料が金貨2枚で1増やす毎に金貨1枚が必要だそうで10倍単位で延長してくれると教えてくれた。

 取り敢えず使用者登録と登録者制限を付与してもらい、お茶などを買いに市場に向かった。
 市場で買い物をしているときから嫌な視線を感じていたが、南門を出てアッシュと合流すると消えたのでさっさと街を離れた。

 野営の時にマジックバッグから食料全てをアッシュに預けて、バッグの中には着替えや武器など腐らない物だけになった。
 グレイがちょっとむくれていたが、今大物を売りに行ったらお前の空間収納がバレちゃうので駄目だと宥めておく。

 * * * * * * *

 「父上、王家からの呼び出しが届いたそうですが」

 「まったく、コリンヌが余計な事ばかりをするせいで・・・」

 「あの女だけですか。父上がもう少し気概を持っていればこのような事にはならなかったのでは?」

 「お前は私に意見をするつもりか!」

 「オリブィエ家がマルセンス侯爵に鼻面を引き摺り回されているのは・・・」

 「黙れ! それ以上余計な事を言うのなら・・・」

 「どうなさいます。あの女のせいで、次男も三男四男も此処を嫌って王都から戻ってきません。唯一居たユリアンは使用人の小倅以下の扱いでしたし」

 「黙れと言っている。お前を跡継ぎから・・・」

 エラートが横に向けて掌を差しだすと、後ろで剣の鞘走る音に伯爵が驚愕の表情になる。
 伯爵の護衛の一人が抜き身の剣を逆手に持ち、柄をエラートの掌の上に乗せている。
 何が・・・他の護衛達は身動ぎもせずに剣を受け取ったエラートを見ている。

 馬鹿な!

 逃げようと思ったが身体が動かず、エラートが突き出す剣をまともに受けてしまった。

 〈ウッ〉 胸に突き立つ剣を信じられないといった顔で見ていたが、そのまま崩れ落ち僅かな間藻掻いていたが事切れて動かなくなった。

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