幻獣を従える者

暇野無学

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 《アッシュ、こんなに大きな野獣の群れなんて、前にも有ったの?》

 《時々大きな群れが出来る時が有るわよ》

 おい! 聞いてないぞ!
 いや、俺が尋ねなかったので答えなかったんだろうが、迂闊だったわ。
 御年・・・初めて会ったときが確か240・・・7才だったはず。

 〔鑑定アッシュ、♀、251才、タイガーキャット(ランディスの使役獣)水魔法・雷撃魔法、魔力341〕

 251才か、魔力を放出していても341と、完全に猫又クラスだよな。

 〈パン!〉

 《痛ってぇぇぇ。アッシュ尻尾で叩くのは止めてよ》

 《えっ、ランディスが良からぬ事を思っていそうだったので、つい、ね》

 やっぱり並みじゃないね。
 そう言えばグレイの魔力はどうなっているのかな。
 以前鑑定した時は137が139に増えていたが、あれから確認するのをすっかり忘れていた。

 〔鑑定、グレイ、♂、7才、タイガーキャット(ランディスの使役獣)火魔法・土魔法・雷撃魔法・転移魔法・結界魔法・治癒魔法・空間収納魔法、魔力143〕

 グレイの魔力は143、以前の鑑定の時より少し増えている。
 おっと、アッシュに以前の事を聞いておかなくっちゃ。

 《前回の時はどうだったの?》

 《前回が何時かは知らないけれど、時々獲物が増える事があるのよ》

 《それじゃ、前の人との時は?》

 《ずーと昔よ。草を食むもの達は餌を求めて移動するので、餌となる草の多い所で待ち伏せしていたわね。狩りをするものは同じ様に餌となるものを求めて追ってくるのよ》

 そりゃそうだ。
 何方も餌を求めて移動するが、群れが大きいとそれだけ食料も大量に必要だ。
 ブラックウルフも餌を求めて移動していたので居場所がなかなか特定出来なかったのだろう。
 草食獣も大群となれば問題だが、彼等を見張っていれば肉食の奴等も集まって来る。
 ギルドは目撃情報を教えてくれるが、草食獣の群れる地点か群れを見張っていれば、ドッグ系やウルフ系の群れを作る奴等を待ち伏せできる。

 が・・・弱い奴ほど数が多いんだよな。
 下手な所で待ち伏せをしていると、あらぬ所でお食事をしていたって事にもなりかねない。
 結局目撃情報を頼りに動くしかないのかな。

 * * * * * * *

 クレア達とフレアとフィルを連れてギルドを出ようとして、珍しい顔と出会った。

 「エドガ達が、何でこんな所にいるの?」

 「強制招集に引っ掛かって、ランディスさんが居るのでプラシドへ行けと言われました」

 「丁度いいや、到着報告をしたら付き合って・・・一緒に行こうか」

 サブマスの所へ行き、エドガ達を預かると告げた。

 「知り合いか?」

 「グレインで俺の仕事を手伝ってもらっている。クレア達の調教を手伝ってもらおうと思ってね」

 「お前達の幻獣の魔法は?」

 「氷結魔法と雷撃魔法です」

 「ふむ、腕の良いパーティーくらいの戦力か」

 「だからクレアとフレアの戦力アップを手伝ってもらいたいんだ。上手くすれば、エドガ達の戦力も嵩上げできるからね」

 「それはあれを譲るって事か?」

 「テイム出来るのならね」

 「何時呼び出すか判らないので遠くに行くなよ」

 * * * * * * *

 サブマスの許可をもらったのでエドガ達を連れて表に出て、ダリス達風の牙を引き合わせる。

 「ランディスさん、ひょっとしてこの人達の手伝いですか?」

 「それも有るが、取り敢えずついてきてくれ」

 クレアとフレアにフィル、アデーレとヴォルグと俺の仲間達を連れて街を出るが、アデーレが俺の後に続くブラックウルフの群れを見て複雑そうな顔になっている。
 北門を出ると少し街から離れてから、草原に入った所にドームを作って拠点にする。

 「アデーレにはクレアの指導をお願いするが、その前にやって貰いたい事がある。お察しの通りこの五頭は全て幻獣だが、火魔法を持っている奴をテイムして欲しい」

 「私がですか?」

 「そう今戦力アップを急いでいるんだ、自信を持ってテイムすれば大丈夫だから」

 アデーレを落ち着かせる為に小さなドームの中で、ワンと名付けた一頭を呼ぶ。

 「此奴は火魔法と雷撃魔法持ちだ。今は俺の使役獣となっているがそれを外すので、合図をしたらテイムしてみろ」

 「ランディスさんのテイムを外すですって!」

 「そう、使役獣の支配を外す方法があるのだが、極めて危険なのでそれは教えられない。アデーレは自信を持って、支配を外した此奴をテイムすれば大丈夫」

 フラッグにウルフの両足を固定させると、薬草袋を頭に被せる。

 《ワン、今からお前の支配を外すので、新しい主人に仕えろ》

 《ランディの・・・》

 《嫌か、嫌ならお前を殺さなきゃならないので、従ってやれ》

 《判りました》

 ワンの背に掌を置き(テイム、解除・解除)と呟き、支配が外れたか確認の為に鑑定して見る。

 〔鑑定、・・・、♂、5才、ブラックウルフ、火魔法、雷撃魔法、魔力91〕

 俺の支配が消えているのでアデーレに頷くと、アデーレが掌を背に乗せて「テイム・テイム」と呟く。

 「テイム出来たか」

 「出来ましたけど・・・」

 「其奴は火魔法と雷撃魔法持ちで、魔力は91だな。ヴォルグには雷撃魔法があるので教えやすいと思うぞ。名前を付けてやれ」

 「さっきこの子を呼んだ、ワンって?」

 「五頭もいっぺんにテイムしたので。名前を考えるのが面倒だったのでテイムした順番を呼び名にしただけさ」

 アデーレが呆れた様に俺を見ているので、もう少し呆れさせてやろう。

 「所で二頭とも攻撃魔法だけでは心許ないだろう。そこでだもう一頭テイムしてみないか」

 「ランディス様、何か良からぬ事を考えているでしょう」

 「空間収納魔法と結界魔法にもう一つ持っている奴を譲るので、テイムしろ。そうすれば攻撃の時も安全だし野営も防御柵なんて必要無くなるぞ。魔法はグレイ達を使って教えるので、アデーレは基礎訓練と扱い方を彼等に伝授して欲しいんだ」

 「ランディス様にそれが出来る事は知っていますが、私の様な者が三頭も幻獣を従えて良いものでしょうか?」

 「もう少しマシな身分証を持たせてやるし、エドガ達には、今アデーレが持っているのと同じ身分証を渡すので大丈夫さ。それといい加減様を付けて呼ぶのをよせよ」

 「ランディス様は恩人ですので、呼び捨ては畏れ多いです」

 「それよりも、もう一頭支配を外すのでテイムしろ」

 五頭もテイムしたのに、何が悲しくて空間収納持ちが四頭もいるんだよ。
 攻撃魔法も火魔法が一頭で、治癒魔法が二頭に土魔法と風魔法や水魔法と外れ物件だわ。
 酷いのになると風魔法、治癒魔法、空間収納魔法とか治癒魔法、空間収納魔法、結界魔法なんて、ブラックウルフには必要の無い魔法ばかりで溜息が出たからな。

 こんな魔法は人族にくれてやれ! と、アルティナ様に言ってやりたい。

 群れにいたのでは絶対に発現しないだろうし、使役獣になってもほぼ使い物にならないだろう。
 魔力が少なすぎて殺した方には、火魔法持ちが三頭もいたので勿体なかった。

 二頭目も無事にテイム出来て名前を付けたが、ワンとツウって何だよ。

 アデーレ曰く、ブラックウルフが二頭では見分けがつかないので、ランディス様を見習いました、と言われてしまった。
 ツウは治癒魔法、空間収納魔法、結界魔法持ちで、魔力が121だと教えるとびっくりしていた。

 譲渡が済んだのでエドガ達を呼んで説明したが、喜ぶよりも治癒魔法に困惑している。

 「ランディス様、治癒魔法は不味いんじゃないですか」
 「治癒魔法が優秀・・・に違いないと思うけど、女神教や貴族様が黙っちゃいないんじゃ」

 「俺の配下としての身分証をエドガ達にも預けるのでそれは大丈夫だ。結界で安心安全な塒と防壁が出来て、怪我をしたら治癒魔法で治して貰える上に、火魔法で攻撃力が格段に上がるんだぞ」

 「有り難いのか心配の種が増えたのか・・・」
 「余り長く冒険者は続けられないわね」
 「アデーレの護衛をして食って行く事になりそうだな」

 「治癒魔法が使える様になるには相当練習が必要だし時間が掛かるので、黙っていれば誰も気付かないさ」

 残り三頭を誰に押しつけようかな。
 水魔法、氷結魔法、空間収納魔法持ちと土魔法、空間収納魔法持ちは適当なテイマーに押しつけても良いが、風魔法、治癒魔法、空間収納魔法持ちはヨハンに押しつけようかな。
 空間収納があれば何時でも暖かいご飯を食べ放題だし、治癒魔法があれば老後も安心安全が売り文句かな。

 * * * * * * *

 基本的な訓練は、シルバーにファングとブラックが居て、アデーレとクレアの使役獣も居るので割合早く終わった。
 魔力操作も三頭にフラッグも加わり教えているが、時たまグレイが手本を見せて威張っている。
 魔力を小中大の三つに分ける事を覚えたら魔法の実地訓練だが、世の中そうは甘くない。
 と言うか、今は非常時なので野獣の群れ、特に群れる肉食系が見つかると呼び出されるので中々練習が進まない。

 それでも野獣討伐にアデーレとクレアを連れて行き、グレイのファイヤーボールの小中大をワンとフレアに見せて使い方を教える。

 * * * * * * *

 ある日、フルンベルト伯爵の使いと名乗る男がやって来ると、ヒューヘン宰相閣下からのお届け物ですと言って革袋を差し出した。
 ずっしりと重い革袋の中は、金色に輝く王国の紋章入りメダルだった。
 炎の輪に赤い熊さんが吠えていて赤線と星四つは俺の侯爵位に合わせている。
 ブラックウルフを五頭従えたのを知り、催促する前に送って来たな。

 * * * * * * *

 大規模な群れがいないときは、熊さん達が5、6頭から7、8頭で徘徊しているのを、応援の冒険者が討伐するときの手助けに駆り出される。
 厄介なのは、タイガーや熊さん達の討伐に駆り出されているのに、時たまグレイの嫌いな蛇がにょろりて現れる事だ。
 森の奥に居るはずの奴が人里近くに現れると一大捜索網が張られ、見つけると何故か俺達の所へ報告に来る。
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