幻獣を従える者

暇野無学

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 ドラゴンを並べ終わると、ツアイス伯爵が国王陛下と宰相閣下にそれぞれの特徴などを説明していた。
 その後ヴォルグとワンの魔法を披露することになり、魔法訓練場へと場所を移すことになった。

 この時になって初めて三頭の魔法の能力を知りたいために呼ばれたと理解した。
 ドラゴンや野獣討伐で散々魔法を使ってきたので隠す事もないのと、見物している国王陛下や宰相閣下が怪我をしない程度の、中の魔力を使った魔法を披露した。

 * * * * * * *

 〔剛力の槍と剣〕と名乗るパーティーの一人、メルガンに背負われて屋敷を出発した。

 ヘンザ村までは剛力の槍と剣のリーダー、デイルが先頭を歩くが、中肉中背で大男三人が一言も逆らわずに従っているので腕は良いのだろう。
 すれ違う冒険者達は、メルガンが背負った背負子に後ろ向きに座る俺を見て変な顔をしている。
 ヨハンの長めのローブを羽織っていて手足が見えないので、俺が負傷しているのは解らないだろう。

 ヘンザ村を出てからはグレイが先頭を歩くが、俺達が出会った場所はヘンザ村からだと相当南になる。
 あの時西に向かっていて出会ったのが、マルチエの剣と名乗ったパーティーだった。
 あれ以来あの場所には一度も行ってないが、グレイの野生の勘に任そう。
 ゴールデンゴートとシャムの狩り場に行く時に一度も迷ったことがないので、俺は黙って従っていれば良いか。

 メルガン、ウォルド、スタンリーの三人が交代で俺を担いでくれているが、がたいがデカいので軽々と担がれるとちょっと自尊心が削られる。
 ヘンザ村から東南方向へ七日程歩いた所で、剛力の槍と剣とお別れだ。
 依頼書にサインし礼として各自に金貨二枚を渡し、此処から西に行けばフルスクかエリンザス辺りに出ると教えておいた。

 此処からはバルクとサンデイに交代で担いでもらうが、先を急がないというか得意の撒き餌をして野獣を手に入れるつもりなので、のんびりと進むことになる。
 アルカン達は、撒き餌をして野獣を討伐しているのを知らない筈なので驚くかな。

 * * * * * * *

 半日ほど進み見通しの良い所を見つけて野営の準備をすると、ブラック、シルバー、スリーに、オークかハイオークを探せと命じて送り出す。
 グレイは途中で狩った野獣を、結界のドーム周辺にばら撒いて待機だ。

 「此って、ヨハンの待ち伏せと同じよね」

 「そう、ファルにもやらせれば狩りが楽になるよ」

 「そりゃ無理だ。と言うか、俺達はこんなに奥まで来ないからな」
 「そうよね。野獣を狩るにはファイヤーボールって案外使い難いのよ。強すぎれば黒焦げで買い叩かれるし、弱ければ逃げられるか怒らせてしまい強力な反撃を受けるわね。雷撃も相手が動いていると中々当たらないのよ」
 「まっ、結界があるので危険は少ないし、弓を使えばそれなりに稼げるので感謝しているよ」
 「だな」

 「ランディスは何をするつもり何だ?」

 「俺は皆が思っているほど強くない。魔力を纏っていれば人並み以上の力は有るがそれだけだ。授けの儀の時に授かったのはスキルだけで、それも何のスキルか判らず色々と試した結果、テイマーとしてのスキルを見つけたんだ」

 「それでも大当たりだぞ」

 「ああ、確かにね。でも今回の事で、所詮俺も間抜けな一人と痛感させられた」

 「乱戦の最中に、一人の悪意を感じて防ぐのは無理だぞ」

 「確かにな。その為に幻獣を探しに来たんだ。それに試したい事もあってな」

 丁度シルバー達が戻ってきたのでその話は打ち切り、シルバーから結果だけを確認しておいた。
 その後は撒き餌に集まって来た野獣の品定めをして一日が終わった。

 * * * * * * *

 陽が高くなってからのんびりと出発して目的地に向かう。
 シルバーが案内してくれた所には直系5、6m程の円筒状の高い塀が出来ていて野獣の咆哮が聞こえてくる。

 「この声はオークか?」
 「いやいやハイオークだろう」
 「まさか、此奴に担がせる気か?」

 「そうだけど。力持ちだし必要無くなったら売って終わり」

 「だが臭いぞ」

 「クリーンで何度も洗えば臭みは消えるさ」

 「それなら俺達は必要無いんじゃ・・・」

 「いやいや、いてもらわなくちゃ困るんだよ」

 「そうなのか?」

 グレイの手加減した雷撃をハイオークの脳天に落としてもらい、お姫様抱っこされた俺がハイオークをテイムした。
 魔力を込めたウォーターを連続して浴びせて洗い、クリーンの三連発と仕上げにリフレッシュ。

 うっとりしているハイオークを、ハイクと命名する。
〔鑑定、ハイク、♂、11才、ハイオーク(ランディスの使役獣)〕

 早速背負子を担がせて、先導するグレイの後に着いていくように命令する。

 「相変わらず突拍子もない事を思いつくな」
 「本当よねぇ。でもハイオークを使役獣にした冒険者は初めてじゃないの」
 「ハイオークを使役獣にしようって奴はいなかった筈だぜ」

 「此奴なら力持ちなので、俺を担いでいても移動速度が落ちることはないだろう」

 グレイに、初めて出会った場所に真っ直ぐ向かえと言って後はお任せだ。

 * * * * * * *

 グレインを出発してから17日、懐かしい場所に戻ってきた。

 「珍しい場所ね」
 「随分大きな穴だな」
 「5、60m位はあるぞ」
 「うへー、足下はスカスカで、近寄ると落ちるぞ」

 「アッシュとグレイに初めて会った場所だよ。結界を作らせるから此処で待ってて」

 ハイクと共にグレイに降ろしてもらうと、オークの野郎が三匹ばかりいたので、グレイが即座に埋めてしまった。
 そういえば、この近くにオークの群れが居た場所あったっけ。
 その場所から逃れて東へと彷徨っていた時に落ちたのだった。

 アッシュの塒だった場所に穴を掘り、グレイが最後のお別れを済ませて埋め戻し表面を岩のように固くした。
 それならばと出入り口の足場を崩させて、穴の周囲を固めて降りて来られなくする様にお願いした。
 人族か鳥以外は此処から脱出するのを難しくしたので、オークなんぞが此処を塒には出来ないだろう。

 * * * * * * *

 目的の魔法を授かっている野獣を集めるために、一度西に向かいウルフやドッグ系の多い場所で野営を始めた。
 同時にグレイとブラックに、ヨハンからファイブを借りて足の再生を試みる事にした。

 グレイに治癒魔法の新たな使い方を説明すると《足を生やすの?》との返事が返ってきた。

 確かに再生は生やすのと同じだ、これを思いついたのもグレイやブラックの治療を見ていたからだ。
 野獣との闘いで怪我を負った者は、刃物でスッパリ切られたような傷よりも、爪や牙で抉られたり喰い千切られた傷が多い。
 刃物傷はそこを繋げば良いが、喰い千切られたり爪で切り裂かれた傷はそのままくっつければ無理がきて、引きつり動かなくなるだろう。

 だが治癒魔法で治した傷は綺麗に元通りに治る。
 無くした手足をくっつける事が出来ないのなら、傷から先を伸ばせば良いと思っただけだ。
 斬り落とされた傷は治る過程で幾らかは伸びる、つまり成長しているのだからできない筈はない。
 治癒魔法を授かっている幻獣が三頭も居るので試さない手はないが、生やすとは言い得て妙だ。

 グレイが何時もの様に、治療する相手である俺に肉球を押し当てるので、傷の近くに変更させて(元の様に戻れ)と願って魔力を流してもらった。
 その際に怪我や病気を治すように魔力を少しだけ使うのではなく、魔力操作の練習のように、腕、前足から細く長く魔力を流し
続ける様に言っておいた。

 俺がズボンの裾を捲り上げると、グレイが俺の前に座り傷口の少し上に前足を乗せた。
 ヨハンやフェリス達が興味津々で覗き込んでいる。

 そんな事は気にしないグレイが魔力を流し始めて治療が始まった。
 俺の足とグレイの肉球が接触しているので、何が起きているのか始めは判らなかった様だが「嘘っ!」とフェリスが叫んでグレイの足を指差している。

 「ん・・・?」
 「どうしたフェリス」
 「おい、何をしているんだ?」

 「傷口の治療だな」

 「直接治癒魔法を使っているの? 怪我が治っている筈なのに・・・どうして?」

 フェリスの言葉にヨハンがグレイの足を覗き込み「ほう、話には聞いていたが、ぴったりくっついても治癒の光りが漏れているな。何処を治しいるんだ?」

 「治してなんかいないよ。無くした足の再生が可能かどうかを試しているんだ」

 話している間も、グレイの治癒魔法が俺の身体に流れ込んでいる証に、肉球の触れているあたりから暖かなものが流れ込んできている。

 「それは女神教の高位治癒師の中でも、伝説級の数人のみに可能な治療だぞ」

 「へぇー、やっぱり再生治療は出来るんだ」

 「知らなかったのか」

 「知っていたら、こんな所にまで来て治療を始めないよ」

 「それでファイブにまでやらせるつもりで、俺を巻き込んだのか」

 「よく気付いたな」

 「当たり前だ。元はお前の使役獣で、それを俺に押し付けた。自分の使役獣を他人に譲ることが出来るのなら、それを取り戻す事も出来るはずだ」

 「取り戻すなんて事はしないよ。グレイの遣り方を見ているので、お願いすれば手伝ってくれると思うし」

 「でも、良いの?」

 「何が?」

 「伝説級の治療を私達に見せても」
 「無くした手足が復活する。伝説級の治療方法なら秘密なんだろう」
 「教会が黙っちゃいないぞ」
 「それに無くした手足が戻っていたら大騒ぎになるのは間違いない」

 「大丈夫だよ。女神教には何も言わせないし、治療方法が知りたければ教えてやるさ」

 「少し伸びている様だな」

 グレイの足を睨んでいたヨハンがぼそりと呟いたので、皆が一斉に傷痕を覗き込んでいる。

 「肉球と足の間が僅かに光って見えるぞ」
 「おお、本当だ! 治癒魔法って光りが降り注ぐと聞いていたが、ぴったりくっついていても大丈夫なんだな」
 「此ならこんな所まで来る必要は無かったんじゃないのか」

 手足が再生出来ても元通りに動くようになるまでリハビリが必要なんだよ。
 その間誰にも邪魔をされたくないし、幻獣を捕まえたら訓練も必要だ。
 その為にアルカン達に来て貰っているんだけど、説明が面倒だから黙っておこう。
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