妖精族を統べる者

暇野無学

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31 侯爵・伯爵・子爵

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 引きずられて行く自称マグレード・バイカル子爵殿とその護衛達、責任者らしき男は苦笑いをしているので、どうも奴を知っているようだ。
 まっ事の顛末を書面にして宰相陛下に丸投げだ。
 俺を嵌めようとしているのなら、面倒事を押し付け合う楽しい間柄ってことだな。
 
 支配人を呼んで書面を認め王宮へ届けて貰う。
 宛先はオーセン宰相、差出人はアルバートで察するだろう。
 
 少し遅れたが夕食を始める。
 酒を呑み旨いお肉を頬張りながらエミリーがぼやく。
 
 「いやーアルの煽りの巧みな事、笑っちゃうねぇ」
 「嫌な野郎だが、アルに掛かると憐れになるから不思議だよな」
 「アル、本物の貴族様と知ってて煽ったろ」
 「キルザなんて、素知らぬ顔で一人呑んでいるもんねー」
 「俺達が貴族様相手にあれをやれば、即座に切り捨てられるわ、怖い怖い」
 
 皆好き勝手言ってくれるよ、怖かったのにグスンって、無視するな!。
 ハプニングがあったが楽しい夕食も終わり、安らかに夢の中へダイブ
 
 昼過ぎに宰相閣下から折り返しの書面が届く、
 マグレード・バイカル子爵を警備隊より引取り、取り調べ中なり。
 以前より貴族の権威を振り翳し、横暴なる振る舞い多く目を付けていたと。
 今回俺に対する暴言は、国王陛下や宰相の再三に亘る指示を無視した事許し難く、取り調べの結果次第では爵位剥奪もありうると書いてある。
 
 翌日再び書面が届き、王宮にて面談希望とは如何なる罠を仕掛けて来たのかな。

 * * * * * * * *

 宰相応接室に案内されたが、宰相一人だけなので拍子抜けな気分。
 
 「伯爵を候爵に陞爵し、ヨルム・ハイド男爵を子爵に陞爵し領地を与えたい。ついては功第一の君が無冠では、彼等を陞爵したり領地を与えては他の貴族に示しが付かないのだ。其れと言うのも、君の御蔭で爵位が余って困っているのだよ。領地経営とか領民や税収など面倒事の必要がない、年金貴族位で良いから受けてくれ。年金貴族なら爵位と屋敷をもらうだけで、今まで通り好き勝手していて良いから。君の為の授爵式は行わないので頼むよ」
 
 やはりそう来るか、まっ予想外では無いし嫌になればポイして逃げるか。
 
 「どうせ嫌になれば逃げる気だろう。国王陛下も、君を拘束出来るとは思っていないので受けるだけ受けてくれ。エスコンティ伯爵とハイド男爵の後が支えているのだ、頼むよ」
 
 拝み倒され爵位は何時でも返還可能で如何なる行動も制限しないとの約束で受ける事に為った。
 
 「有り難い。君の功績で陞爵する、エスコンティ伯爵とハイド男爵の陞爵の式典は見届けてくれよ」

 * * * * * * * *

 居並ぶ貴族達の間を進むエスコンティ伯爵とハイド男爵。
 一歩下がった後を歩む俺。
 二人が跪き頭を垂れるが、俺は軽く一揖しただけ。
 
 玉座から国王陛下が立ち上がり、二人の前で宝石で飾られた宝剣を手に伯爵の前に立つ。
 
 「アルバート伯爵の横に立ってくれ」
 
 何かやる気だなと陛下を睨むが、素知らぬ顔で俺を待つ陛下。
 大人の対応で伯爵の右横に立つ。
 
 「アルバート汝を伯爵に叙爵する、王都に屋敷を下賜し金貨3.000枚を年金として与えるものとする。王家に忠誠を誓う必要は無い、自由に暮らせ」
 
 ニヤリと笑い、おもむろに伯爵の肩に宝剣を降ろす。
 
 「汝カナード・エスコンティを候爵に陞爵する」
 
 「有り難き幸せ、今後ともエルゴア王国の為に誠心誠意仕えます」
 
 「汝ヨルム・ハイド男爵を子爵に陞爵し、アラモナの領地を与える。以後励めよ」
 
 「有り難き幸せ、エルゴア王国の為、誠心誠意仕えます」
 
 式典は終わった。
 伯爵の前に俺の授爵を印象付ける計画だったな、見事に嵌められたが騒ぐ訳にも行かないので返礼はそのうちにな、陛下。
 
 王宮の馬車でホテルに帰るとウーニャとキルザに馬車の用意を頼む、行き先はエスコンティ伯爵邸今日から候爵邸だな。
 
 候爵邸には貴族達の祝いの馬車が続々と詰めかけている。
 何とか候爵様と子爵様の前に立ち祝いの言葉と共に目録を差し出す。
 カナード・エスコンティ候爵様にはサランドの酒100本、火炎蜂の蜜100本を祝いの品として贈呈。
 ヨルム・ハイド子爵様にはサランドの酒300本、火炎蜂の蜜300本、金貨3.000枚を祝いの品として贈呈。
 
 「おいおい、大分差がついてるぞ」
 
 「候爵様はあまり物入りにはならないでしょうが、子爵様はこれから大変ですよ。顔繋ぎの酒一本で宜しく付き合えるなら、易い物です。いきなり子爵としての体面を保つのも難儀かと思いまして、逸れに候爵様と陛下から金貨をたっぷりと頂いておりますので大丈夫ですよ。在庫もたっぷり有りますので、御入用の際はお申し付け下さい」
 
 「なら祝いの返礼の酒が足りないのだ、追加で頼めるか? 200本程頼む置き場所は執事に聞いてくれ。頼んだぞ」
 
 あ~あ、候爵様も大変だぁ。子爵様、顔が引き攣っているよ。お客様には和やかに挨拶をしてね。
 
 「ところで、アラモナって何処ですか」
 
 「エスコンティとは子爵領を挟んだ隣だ、馬車で10日前後の距離だな。アルバートのお披露目の時に、騒いだ馬鹿が取り潰しになり領主不在だった所だ」
 
 「じゃあ王都にも屋敷が有るって事ですね」
 
 「多分家財一式は残っている筈だと思うので、何とかなるだろう。私も手助けはするがアルバートも宜しく頼むよ」
 
 「今はどうなっているんですか」
 
 「領地は王家派遣の代官が管理しているよ。屋敷も管理人を置いている筈で最低限の使用人は居ると思うな。人手が足りないだろから、我が家からも人手を出すよ。逸れよりも、アルバートが賜る屋敷をどうする気なんだ」
 
 「伯爵、失礼候爵様は大変そうなので頼れませんので、オーセン宰相に丸投げします。仕返しの一つです」
 
 候爵様が馬鹿笑いをしてるよ。
 
 その夜馬車がなかなか候爵邸を出られないので、候爵邸にお泊りと為った。ウーニャ達と一つ部屋で良いと言ったが、伯爵様にその様な扱いは出来ませんと断られてしまった。
 
 ホテルに帰ると支配人が飛んで来て、伯爵位叙爵を祝われた、面倒事が益々増えそうで悪寒がする。
 エミリーやヘム・サイナム・キューロからも。伯爵位の叙爵を祝いの言葉をもらったが、礼を言ってこれからも呼び名はアルで良く、言葉使いも変える必要はないと念を押しておく。
 
 人手かぁ、エルクハイムの城壁造りの時に、真面目に働き学習した者を大量に雇ったがあの手で行くか。
 王都の冒険者ギルドに依頼して真面目な者で普通に働きたい者を斡旋して貰う事にしよう。
 未成年でも真面目に働く者を鍛えれば先々立派な使用人に成るだろうし、読み書き計算が出来れば働き口は何処にでも有るはずだ。

 * * * * * * * *

 久し振りな王都冒険者ギルド、受付カウンターに行きブラックカードを出してサブマスかギルマスを呼んで下さいと声を掛ける。
 サブマスのランカーさんが出てきたので、お久し振りですと御挨拶。
 真面目で普通に働きたい者がいれば、引き抜く様で悪いが紹介して欲しいとお願いした。

 快く受けて貰えたが、在庫を置いて行けと解体場に連行される。
 ブラウンベアからウルフ等々数十体を渡し、暫く王都に居ると思うので又寄らせてもらうと挨拶して帰る。
 
 ブラックカードの残高確認したら偉い事になっていました。
 この間陛下と伯爵・・・侯爵様にサランドの酒を売っただけで、金貨6.000枚だよ候爵陞爵の時に追加で200本売って金貨4.000枚・・・
 どうやって使えば減るのかさっぱり判らない。
 
 オーセン宰相から連絡があり、下賜される屋敷の下見をする様に連絡が来たので、管理の役人に案内されて見てきたが・・・でかい。
 エルクハイムの屋敷でもいい加減でかいのに、これはないわぁ~。
 宰相閣下に面談を申し込み、あんな馬鹿でかい屋敷はお断りします! 要らない! と拒否してきた。
 貴族街でなく市内で年金貴族が住まう様な小振りの家を要求、出来れば土地だけで良く建物は自分で建てると伝えておく。
 
 三日後に希望の物が見つかったので見てくれと連絡をもらい、見に行った。
 今度は広かったが木々に覆われ、森の趣がある広い土地で縦横300mは楽にあった。
 聞けば王家の御陵地だった物を公爵家が隠居所にと譲り受けたが、手付かずのまま放置されていたらしい。
 管理人が日々見回りを欠かさないので割合綺麗で、土地の境界線を確認しながら高さ5m程の土の杭を連続して立てる。
 夕方には綺麗に土の杭が立ち並び誰も中に入れなくなった。
 管理人がびっくりしていたが、無視だ無視。

 翌日ホテルを引き払い、新たに貰った土地にドームを造ってキャンプを始めると、フイーィの一族も一斉に移り住んできた。
 
 食料の備蓄はまだまだ有るし、ウーニャ、エミリー、キューロとキルザ、サイナム、ヘムの二組に分け、日々の魔法の訓練も怠ら無いように指示。
 これから雇う者達に、ウーニャやヘムの様な強い魔法使いが用心棒として居ることを示す為だ。
 
 一つの組には街で直ぐに食べられる食料の買い出しを頼む。
 残りの三人は貧民街に行き仕事をやる気が有る者を集めさせた。
 草むしりや片付け等で一日銅貨五枚5.000ダーラだ、年齢は問わず仕事を真面目にし休まない者をウーニャとキルザの組で選ばせた。
 両方の組に認められた者は仕事の後勉強をさせた、勿論その分の賃金も払う。
 
 貧民街でから通う者で、特に貧しい者達はドームの宿舎を造り寝泊まりをさせ、勉強も加速させた。
 優秀者は皆の前で褒め、賃金の割り増しや褒賞を与えて、皆のやる気を引き出していく。
 丸っきりエルクハイムで遣った事なので、ウーニャ達もなれたものである。
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