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047 教会本部の騒動

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 教会の集金システムに感心していると、いきなり周囲が真っ赤に染まり〈ドーン〉って轟音と共に吹き飛ばされた。

 〈アラド様ー〉サランの声が遠くに聞こえる。
 耳がガンガンするが、魔法攻撃防御の服が防いでくれているし、防御障壁も張っているので体に異常なし。
 買ってて良かった機織り蜘蛛の服、火魔法をくらったが服が燃えて素っぽんぽんにならずに済んだ。

 駆け寄ってきたサランに通路を守れと指示し、魔法攻撃者を探す。
 あららら、大教主様が侍らせていた女の中に魔法使いもいたようね。
 詠唱を唱えれば魔法攻撃を悟られるので、俺の意識が他に向かうまで待っててくれたようだが残念でした。
 と、思ったらアイスアローとストーンアローが襲って来た。

 前言撤回、ちゃんと護衛はいたのね。
 そりゃーむさい男より、お姉ちゃんを侍らせた方が目の保養にはなるけど、即応性に欠けるね。

 女だからって容赦しないのが俺の良い所、大広間と言えども10メートル少々しか離れていない。
 ライトソードを伸ばして胸を一突きすると、残りは恐怖に駆られて逃げ出したが逃げ道が無い。
 巻き添えを食らって、大教主様も騎士も煙を噴いて燻っているので死んでいる様だ。

 部屋の隅で震えている女達の所に行き、教皇と残り二人の大教主の居場所を吐かせる。
 大教主二人は、この建物内の別の場所に同じ様な居室が有る事、教皇は別棟に住んでいるとペラペラ喋った。

 市場で、店主達が妙によそよそしかったのは教会が関与していると思って問い詰めると、倒れている〔ボラベ大教主〕が指示し、俺達を見掛けたら教会に連絡せよと通達を出していたと答える。

 残り二人の大教主は、壁を挟んだ両隣に同じ様な部屋を持っているそうだ。
 そこ迄聞いて女達の後ろに目立たぬ扉が有るのに気がついた。
 開けろと言ったが、寝室になっているがボラベ大教主様しか開け方を知らないので、無理ですと言う。

 この一言でピンときたね、俺の両親や地下室に溜め込む貴族と同じ思考回路だろう。
 隠す場所が限定されている、サランを呼び戻し隠蔽魔法で姿を消してから寝室にジャンプする。
 広間の半分ほどの広さだが、全体的に艶めかしさの漂う部屋で家捜しする気にはなれない。
 マジックポーチに入れて隠されると探すのも面倒なので、他の大教主様の所を訪問することにした。

 この部屋から隣の大教主の寝室にジャンプし、広間の気配を探ると大勢の人間の気配がする。
 サランも同じ様な感想で、姿を消したまま壁抜けの要領でドアを抜け広間に侵入する。
 思った通り寝室へのドアの前には誰も居ないが、室内に怒鳴り声が響く。

 〈楯を前面に並べて押し出せ!〉
 〈魔法攻撃が止まっている今のうちに前進しろ!〉

 〈負傷者の治療が間に合いません〉
 〈癒やしの魔法使いでは治療出来ません! 光の魔法使いを寄越して下さい!〉

 〈馬鹿者! 賊に侵入され聖域を踏み荒らされているのだ! 奴等の排除もせずに泣き言を言うな!〉

 あ~あ、聖戦気取りだよ。
 この部屋に大教主らしき人物は見当たらないので、サランを連れてボラベ大教主の部屋に戻り、足止めの攻撃を指示する。

 「サラン楯を並べている所に、氷の塊を投げつけて吹き飛ばしてやれ。その後直ぐにファイヤーボールのでかいのを射ち込め! 其れが終わったら、反対側の大教主の部屋に行ってみよう」

 サランの攻撃が終わったら、壁抜けで反対側の大教主の部屋に侵入したが、此処にも大教主らしき姿が無い。
 騒ぎが起きたから逃げ出したらしい、後は教皇の部屋に行って居なければ出直して来る事になる。
 寝室のドアの前で震えている女に声を掛けるが、何も無い場所から教皇の居場所を聞かれ、お口パクパクの金魚状態。

 姿を見せて再度質問するも、お目々まんまるで腰が抜けたのか呆けている。
 付き合ってられないので、横っ面を張り上げて居場所を聞き出す。

 寝室側の外にこの建物と同等の建物が在り、その建物全体が教皇の住まいだと喋った。
 サラン共々、一度屋根の上にジャンプして教皇の建物を確認。
 教皇の建物は絢爛豪華を具現化した外観で、太陽の下で見れば目が眩むだろうと思われる程、夜の照明の下でも輝いている。
 その教皇の建物の正面が大神殿の奥側だった。

 神殿の奥、ウルブァ様の像の背後に壁を挟んで建てられていて、信者には見えない造りになっている。
 こりゃー、信者にじゃなく配下の教主や神父に対する虚仮威しの建物だろう。 権力の頂点を見せて有り難がらせ、その配下に連なる事で信者に説教と布施を集めさせる。
 何処の世界も、似たり寄ったりの集金システムだなと感心する。

 地上に降り、警戒厳重な建物の周囲を一巡りするが、出入り口は全て厳重に封鎖されている。
 物々しい警戒の中を歩いているが、隠蔽魔法のお陰で物見遊山と変わらない気分だ。

 幾ら姿が見えないからと言って、建物内にジャンプして人とぶつかっては騒ぎの元だ。
 締め切られた窓に近寄り内部の気配を探り、先ずサランがジャンプして侵入し、騒ぎが起きなければ俺も続く。
 この辺りは斥候役経験者である、サランの方が上手い。
 内部は人の気配も無く静かだと思ったのも当然だ、使用人達の食堂の様で質素なつくりになっている。

 ドアの隙間から通路を観察、そこ此処に警護の騎士達が立っているが緊張感が無いのか雑談をしている者も多い。
 指揮官らしい男を見つけたので、此奴を呼び寄せて建物内の構造確認と教皇の居場所を吐かせる事にした。

 「サラン、一人掻っ攫って此処に出すから、腹に一発入れて声を出させるな」

 俺の隣を指差し指定する。
 意味を理解したサランの頷きを確認してから、目的の男を転移魔法で引き寄せる。

 〈エッ〉俺の隣で驚愕の声が漏れたと思ったら〈グェッ〉と呻いて崩れ落ちる。

 〈エッ・・・〉
 〈何だ! 隊長が消えたぞ!〉
 〈お前! 寝ぼけているのか〉
 〈いま確かに此処に居たんだ〉
 〈馬鹿な事を言うな!〉

 通路では、目の前で人が消えたので騒ぎが起きている。
 サランは腹を押さえて呻いている男を素早く縛り上げ、口に雑巾を押し込んでいる。
 この辺り、俺の遣り方に馴れてきたのか手際が良い。
 気分は押し込み強盗♪

 のんびりしている暇は無いので、手っ取り早く木剣を取り出し膝の皿を叩き割る。
 痛みに呻き声を上げるが、口に詰め込まれた雑巾せいで悲鳴は外に漏れない。

 「痛いだろう、俺の知りたい事に答えるまで至る所の骨が折れるから覚悟しろよ」

 そう耳元で囁いてやると、俺の姿を求めてキョロキョロするが見える筈が無い。
 もう一つの膝の皿も叩き割る〈ウッグゥゥ〉見えない何かに攻撃されて鳥肌立てて呻く男に教えてやる。

 「お前に俺の姿は見えないよ。喋らなければ、次の犠牲者が来るまでお前の骨を砕き続けるからな。もう一つ、俺は治癒魔法が使えるんだ」

 そう言って、砕いたばかりの膝に(ヒール!)と治癒魔法を掛けてやる。
 淡い光に包まれて両足の膝の皿が治る。
 木剣で、治ったばかりに膝の皿をコンコンしながら、教皇の部屋の場所を訊ねる。
 教皇の部屋って言葉に体がビクンと揺れ、ジタバタと暴れ出す。

 すかさず膝の皿を叩き割り、その痛さを体に刻み込む。
 涙目で呻く男に〈教皇の部屋〉と囁きながら残りの膝の皿も割る。
 向こう脛に両鎖骨と順番に骨を砕いてやると必死に頷き出す。

 「喋る?」

 ウンウンと頷くので、口の雑巾を取り出してやる。

 「この部屋を出て右に行き、左の扉三つ目が教皇様の部屋だ」

 「教皇だけか? 他には誰が居る?」

 「大教主様二人と護衛が多数居る。ボラベ大教主様が賊に襲われたと知らされて、教皇様と対策を練ると言ってやってきたんだ。凄い火魔法の攻撃で、助けに向かった多くの騎士や警備の者がやられたからな。姿が見えないなんて、だれも言わなかったのに・・・何で俺だけが痛めつけられるんだ」

 愚痴りだした男を放置し、ドアを抜けて通路に出るが消えた男の事で騒ぎになっている。
 右往左往する騎士や警備の者を避けて通れそうに無い、サランに風魔法で通路の向こうまで吹き飛ばせるか聞いてみる。

 お任せ下さいの言葉と共に、左から右に向かって強風が吹き始めた。
 この閉鎖空間でどうなっているのかと? マークがポンポン浮かぶが、直ぐに窓やドアが吹き飛び轟々と音高く風の奔流が通路を吹き抜ける。
 通路に居た人々や椅子などが吹き飛び、転がって消えていく。
 何も無くなった通路を右に歩き、三つ目のドアの前に立つ。

 此処からが、本格的な荒事の始まりだ。
 ドアをアイスバレットで打ち壊し、内部で右往左往する騎士や護衛を叩き潰していく。
 穴の開いたドアを通して、アイスバレットがバンバン飛んでくるので、中の人間には反撃のしようが無い。
 ものの3分もせずに制圧完了、後はドアの影や壁で見えない場所の奴等だが、此方の姿が見えないのだから安心して室内に踏み込む。
 残敵掃討はサランに任せ、純白の衣装に金糸で刺繍が施された衣を纏う三人に近づく。

 「教皇と大教主だな」

 頭を抱え、伏せている三人に問いかけるが返事が無い。
 木剣で〈ゴン〉って音がするほどの勢いで頭を叩くと、呻き声を上げて身悶えしている。

 「返事をしなけりゃ、頭が潰れるまで幾らでも叩いてやるぞ」

 「わっ、私が教皇を致しております〔ヘポンズ〕です。叩かないで下さい」

 涙声で返事をした男はダルマさん体型、その体型でよく伏せていられたなと問いかけたい。

 「後の二人も名乗れ!」

 「大教主の〔モーデル〕です」
 「私は〔ゾラド〕です。乱暴はお止め下さい」

 「お前等は、俺達を無理矢理連れて来て働かせ、その上騎士や警備の者を多数配備していて乱暴だなんて良く言うな」
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