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一章 降って湧いた災難
朱と梔子と緋 伍
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古い…夢を見た。
俺のお姫様との出逢いだ。
初見したあの時より、あれは俺を怖れぬ生意気で可愛いやつだった。
一族の中でも非常に強い力を持つ茨木や四童子でさえ、最初は俺を恐れ怖がった。
怯え前に立つことすら出来なかった。
永く番い、沢山の子を設けたが、初めの子以外は全て喪った。
【青】の神子も、【赤】の子も、お前によく似た魂を持つ御子も。
『 』に害され、連れ攫われ、それより俺の大切な最愛は『彼方』からの出口と成った。
褥より起き上がり長く伸びた髪をかき上げる。
(今朝も白練が整えさせろと煩かったな)
隠れ見えなかった視界の端に、美しい庭白百合の花が目に入る。
俺の閨にある花瓶に生けられた一輪の庭白百合。
これは俺と最愛の初めての子が俺に顔を見せに来る際、その時一番に美しいものを選りすぐり持って来る。
その場に足を運べば気が狂いそうになる故、こうして生けられたものを愛でていた。
(俺の【域】よりあまり出ず、この様に現と夢の間を彷徨うようになり幾年経たか…)
花瓶の側まで行き、その前に座り込む。
日がな一日このようにして過ごしていた。
(務めも放り出し、腑抜けてしまった俺のことを早く叱りとばしてくれ)
首を傾げ優雅に咲くその姿にお前を思い出す。
耳長の姫君としての教育を受け、天上の美姫とまで呼ばれるほどに気高く美しかった俺の妃。
お前が俺に嫁いだ当初「耳長かぶれ」などと言い難色を示していた者たちが、慈愛に満ち罪びとにまで赦しや癒やしを与えるお前に傾倒していく様は愉快だった。
穢れを祓い、魂の損傷ですら癒せる【慈悲】の神子に、皆は大層驚いていた。
あんなにも頑なであった者たちですらお前を認めた。
皆がお前の還りを待ち望んでいる。
(無論俺もだ)
────。俺の俺だけのお姫様、お前が恋しい。
お前の体に咲いた俺の【華】が見たい。
俺に咲くお前の【華】だけではなく、お前に…お前の心臓に咲いた、お前自身の【華】を見たい。
俺の白百合。
稀なる美しく貴い魂を持つ、俺だけのお姫様……
「百合、百合百合百合…………ゆ、り…」
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