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1章 『勇者』は失業の危機にある。

『犬』から『妃』に職種変更命令(プロポーズ)お受けします! 1

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 ───初夜が始まり、4日目にしてようやく毒蛇様がお鎮まりにならはった。

 予定では今日を入れてもあと2日で蜜月は終わりとなるらしい。
 これまでの3日間で俺の体はすっかりご主人様だけのメスに作り変えられた。

 ご主人様の与えてくださる熱に、媚毒の甘い痺れに、睦言を囁かれる度に肌の感覚などが鋭敏になり、髪からすら快感を拾うほどにまで俺の体は高められた。
 最後の方になると、俺はもう訳がわからないくらいに乱れて、ご主人様も俺を物理的に喰いそうなギラギラした眼をされて、ガンガンにおけつを責めてくださるから、体が悲鳴をあげていた。

 それで今は部屋に備え付けの明らかに囚人用とは思えない、アホみたいにデカい風呂に入れられている。
 それもわざわざ特別に調合された薬湯にだ。
 これはご主人様の催淫毒である媚毒を抜く為でもある。

 因みにご主人様は蜜月を一時的に中断して、緊急でお仕事?に出かけられている。

 そんな俺のそばにいるのは……
 
「お加減はいかがですかお妃様?」

 ランちゃんとよく似た顔立ちの銀髪金眼の美ショタっ子が、俺にニコニコとした笑顔を向けて尋ねてきたが、その目は笑っていない。

 彼は琥珀コハクさんという。
 なんとこのひとはランちゃんのおとうはんらしい。

「ランちゃんのおとうはんにおかあはん、なんかえろうお手数かけてしもてすんません。
もうかましまへんから、どうぞ休んどって下さい」

 どうにも彼らには気を使ってしまうので、出来れば退出してほしいということを、暗に伝えるつもりで言ったのだが……

「………これも我らの務め。気遣い無用だ」

 ヅカ風麗人の見た目に反して大変愛想のない物腰の、ランちゃんとよく似た兄貴って雰囲気の赤毛金眼のロリっ子が、えらい堅い物言いで「それは否」という返事をしてくれた。

 彼女は柘榴ザクロさんという。
 このひとはランちゃんのおかあはんらしい。

 このランちゃんのご両親という、どう見ても中学に入る前の年頃にしか見えない、ご主人様と同じくらいの見た目のロリとショタが、甲斐甲斐しく俺のお世話をしてくれているが…………落ち着かない!

 ふたりは確かにランちゃんによく似ているが、どちらかというと逆にランちゃんの子どもはん…いや、弟はんや妹はんといった方がいいような、そんな見た目のお子さんたちである。
 どちらも同じ白地の着物とご主人様のご紋『白紫陽花』の入った白い袴姿だ。
 問題は髪型とか物腰とか口調とか色んなことがちぐはぐでやりにくい。

 (「息子がお世話になりました」なんてこの見た目で言わはるから、頭がパーンってしそうになったわ)

 琥珀ちゃん・・・・・から「あの子の父です」と言われ、柘榴くん・・・・から「あれの母だ」と自己紹介され、このへんがオメガバースの世界や!とか思っていたら……

 ふたりとも角が生えておらず、身につけているものや立ち振る舞いからでしか性別の判断がつかなかったが、このランちゃんの両親と名乗るふたりはなんと、男の娘と雄んなの子のカップルだった!

 もう…ここまで来るとややこしすぎて、俺のポンコツ頭では追いつかない。

 (突っ込んで聞くんはやめにした)

 俺はこのロリショタカップルを置いていったことを、ランちゃんに文句を言いたかった。

「あの~お気遣いなく。何なら外して頂いても結構やさかいに」

 (寧ろそれをお願いします)

 少し考え事をしたいので、席を外していただきたい。
 見た目によらず、古武士のような柘榴さんも、腹の読めないニコニコした笑顔の琥珀さんも、どちらもやり難くて仕方がない。

「いえいえ、若様の大事な方をお守りしなくてはいけません」
「我らはこのような見目をしているが、そこいらの鬼よりも頑強だ。安心されよ」 

 しかし、ふたりとも頑として譲ってくれない。
 おまけに俺を護るとまで言ってくれている。
 この子らもステータスがおかしい子らで、俺より強いから何も言えずにいる。

「………………(どないしよ、ほんまに落ち着かへん)」

 布団から動けない俺を風呂に放り込んだのはランちゃんだが、その後はこの子たちふたりが世話をしてくれている。

 だが、俺は勘弁してほしかった。

 なんせ初っ端からこのロリとショタは、俺のお穴のお浄めをするとか言いだすのでビビった。
 さらにこの悪魔のようなお子さん方は、排毒の為に俺の息子殿を扱いて出すとまで仰る!

 労基法と児童福祉法とかに色々と引っかかることをもう既にされた気がするが、そのへんは本当に大丈夫なのだろうか?

「ランちゃんアンタはなんて土産を置いていったんやーー!」って叫びたくなった。

 (詳細については黙秘します!)

 物凄く疲れた攻防のあと、何度か薬湯と水風呂を行き来して、たまに風呂から上がって休んだりもしたが、おとうはんとおかあはんによれば、もう殆どの毒は抜けているらしい。

 このふたりと問答しても埒が明かないので、やけくそで受け入れたが、考え事くらいゆっくりさせて欲しかった。

 開き直り考え事に没頭する。

 無理なら俺の脳内フォルダのご主人様か、(自主的に)封印された兄貴のメモリアルを使い、トリップすることにした。

 俺がこの風呂に入れられるまでには、ちょっとしたいざこざがあった。



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