英雄よ、我が道を行け。

一章 一言目「きっかけは。」

   俺の名前は秋好神樹。かみのきと書いてシンキと読む。確実に名前負けしそうな漢字に加え、学校でのあだ名は｢神様」だ。ひいおじいちゃんが考えてくれた名前だからまぁまぁ気に入っているが、これが両親だったら兄貴直伝必殺海老ぞりを……話がそれた。
  今は俺の住んでる埼玉から遠い奈良に来ている。何故こんなに遠くまで来ているかと言うと理由はいたって単純、俺の名付け親、つまりひいおじいちゃんに会いに行くところだ。俺は今時珍しいひいおじいちゃんッ子だ。もう九十八歳になる老いぼれだが、博識で、今から行く八ッ夏村のことを一番知っている。実はこれが俺の楽しみでもあるのだ。
  八ッ夏村には多くのお話があって、調べて見ると奥が深い話ばかりで面白い。毎回調べては考えをまとめ、ひいおじいちゃんに話すのが恒例だ。今回のお話はとある英雄伝説について。それはこんなお話だ。


   これはまだ戦争が終わりきっていない、秋のこと。
   村の山奥に父と子の二人家族が引っ越して来ました。戦争中でも食べ物に困らず、敵に狙われることのないこの村は日本でも安心できる場所でした。
   冬が過ぎ、花の匂いが漂う春の先。山奥に暮らす家族の父親がなくなりました。理由はわかりません。ただ、なくなったという噂だげが村に流れました。子一人を哀れに思った村の人々は子どもの家へ足を運びました。村の人々は驚きました。山奥で会った子どもはまだ五つに満たないほどの小さな少女だったのです。黒髪のお髪に透き通るほどの決め細やかな肌。何より何色とも言い表せないほど鮮やかな瞳。物珍しさゆえ、引き取ると言い出した者もいたとか。だが、少女はそれをすべて断り、家の奥へ入ってしまいました。
    月日はたち、少女の家族が来て六回目の秋。まだ少女は断り続け山の奥深くに住んでいます。前と違うのは、少女が山を降りて来るようになったことです。
   その頃からでしょうか、村で不幸なことが起こるようになったのは………………





「 私たちの人生は、私たちが費やした努力だけ 
     の価値がある。」
                           
                              モーリアックより