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一章 二言目「追求せよ」
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少女が山を降りて来るようになってから、畑が荒らされたり、火事が頻繁に起きたり、行方知れずになっていた馬が頭だけで見つかったり、村で不幸なことが起きるようになりました。偶然だと思っていた村人達も痺れを切らして少女に会いに行きました。村の現状を聞かされた少女は一言こう言いました。
「あなた達はいつまでふざけたことをしているのですか?」
なんのことかわからなかった村人達も馬鹿にされたということはわかり、それ以来、村人達は少女を嫌いました。
そんな災厄が続いて二年目の夏、雨も降らず、田んぼは枯れはて、飢え死にするものが耐えませんでした。村人達はそれを山奥に暮らす少女に向けました。
苦しみから逃れたい村人達は少女を神への供物として殺すことに決めました。そして、少女を処刑するのは八日後と決めました。しかし、その八日間が村人達にとっての一番の地獄でした。嵐が訪れ、家は破壊され、瓦礫の下敷きになるものも数知れず。そのとき、少女は笑っていた。静かに、嘲笑うように。
とうとう少女を処刑する日になりました。しかし村人達は手を出しません。少女が自分で崖から飛び降りるという方法を取りました。崖の前に立った少女は村人を見てこう言いました。
「あなた達の犯した罪は重い。暮らしが元の豊かさに戻っても、あなた達の心にしっかりと刻みこまれたそれは消えることはないでしょう。あなた達が覚えていなくてもこの大地は忘れない。私はあなた達を救った。この事実は変わらない。覚えておきなさい。」
そう言って崖から飛び降りました。少女が見えなくなったころ雨が降り始めました。村人達はめぐみの雨だと喜びました。彼らは少女をこう言ったそうです。「あきれた英雄だった」と。それから村で災厄が起きることはなく、平和な生活をおくれるようになりました。彼女について書かれた石碑が今も彼女の墓と一緒に残っているそうです。
という話だ。自分勝手だと思うだろ?しかも自分で村人を救ったとか言って、彼女が死んで村人が救われたなら、災厄の原因は少女にあるってことになるし。あっ、そろそろひいおじいちゃんの家に着きそうだ。
俺はひいおじいちゃん家に着いたら、お茶を飲んでいるであろう居間に向かった。
「こんにちは、ひいおじいちゃん。」
「いらっしゃい、遠いところまでご苦労様。今日は何の話かな。」
「今回は英雄伝説についてだよ。」
「あぁ、あの話か、私の一番好きな話だ。」
おじいちゃんはこの話がとても気に入っている。この土地であった本当の話だとしたら、村が大好きなおじいちゃんが一番嫌いな話のはずなのに。
「なんですきなの?こんな嫌な話。」
「私が好きなのは話じゃなくて、話に出てくる少女だよ。」
「なおさらわかんない。言い方悪いけど疫病神じゃん。」
「神樹、確かにこの話だけ聞いたら悪い人に見えるが、本当は違うんだよ。」
「何でわかるの?」
「……本当の話、聞きたいか?」
おじいちゃんがこんなに悲しそうにしているのは初めて見た。だからかわからないけど、好奇心だけで聞いてはいけないような気がした。
「うん。」
俺はここで聞かなきゃ後悔すると思い、おじいちゃんの話に耳を傾けた。
そしておじいちゃんがゆっくり話し始めた。
英雄伝説の本当の素顔を。
「運命は、志あるものを導き、志なきものをひ
きずって行く」
セネカより
「あなた達はいつまでふざけたことをしているのですか?」
なんのことかわからなかった村人達も馬鹿にされたということはわかり、それ以来、村人達は少女を嫌いました。
そんな災厄が続いて二年目の夏、雨も降らず、田んぼは枯れはて、飢え死にするものが耐えませんでした。村人達はそれを山奥に暮らす少女に向けました。
苦しみから逃れたい村人達は少女を神への供物として殺すことに決めました。そして、少女を処刑するのは八日後と決めました。しかし、その八日間が村人達にとっての一番の地獄でした。嵐が訪れ、家は破壊され、瓦礫の下敷きになるものも数知れず。そのとき、少女は笑っていた。静かに、嘲笑うように。
とうとう少女を処刑する日になりました。しかし村人達は手を出しません。少女が自分で崖から飛び降りるという方法を取りました。崖の前に立った少女は村人を見てこう言いました。
「あなた達の犯した罪は重い。暮らしが元の豊かさに戻っても、あなた達の心にしっかりと刻みこまれたそれは消えることはないでしょう。あなた達が覚えていなくてもこの大地は忘れない。私はあなた達を救った。この事実は変わらない。覚えておきなさい。」
そう言って崖から飛び降りました。少女が見えなくなったころ雨が降り始めました。村人達はめぐみの雨だと喜びました。彼らは少女をこう言ったそうです。「あきれた英雄だった」と。それから村で災厄が起きることはなく、平和な生活をおくれるようになりました。彼女について書かれた石碑が今も彼女の墓と一緒に残っているそうです。
という話だ。自分勝手だと思うだろ?しかも自分で村人を救ったとか言って、彼女が死んで村人が救われたなら、災厄の原因は少女にあるってことになるし。あっ、そろそろひいおじいちゃんの家に着きそうだ。
俺はひいおじいちゃん家に着いたら、お茶を飲んでいるであろう居間に向かった。
「こんにちは、ひいおじいちゃん。」
「いらっしゃい、遠いところまでご苦労様。今日は何の話かな。」
「今回は英雄伝説についてだよ。」
「あぁ、あの話か、私の一番好きな話だ。」
おじいちゃんはこの話がとても気に入っている。この土地であった本当の話だとしたら、村が大好きなおじいちゃんが一番嫌いな話のはずなのに。
「なんですきなの?こんな嫌な話。」
「私が好きなのは話じゃなくて、話に出てくる少女だよ。」
「なおさらわかんない。言い方悪いけど疫病神じゃん。」
「神樹、確かにこの話だけ聞いたら悪い人に見えるが、本当は違うんだよ。」
「何でわかるの?」
「……本当の話、聞きたいか?」
おじいちゃんがこんなに悲しそうにしているのは初めて見た。だからかわからないけど、好奇心だけで聞いてはいけないような気がした。
「うん。」
俺はここで聞かなきゃ後悔すると思い、おじいちゃんの話に耳を傾けた。
そしておじいちゃんがゆっくり話し始めた。
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きずって行く」
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