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048 第三のコレクター八頭女史⑥
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「さっき話していた面白い部屋を見せるわ」
部屋着風のゆったりした赤いワンピースに着替えた八頭女史が、顔を直して戻ってきた。
「『猛獣たちの家』だけじゃないんですか?」
「私、コレクターもしてるって言ったでしょう? 日比野さんに少しだけ見せてあげる」
「ありがとうございます」
そうして勧められたそこは、おしゃれな展示室のようになったコレクションルームだった。先程の『猛獣たちの家』に出て来た日本刀、鳴子遊雲監督の『レディはいつも赤いリボンで』のヒロインが被っていた赤いリボン付きストローハットなどなど貴重なものが多く飾られている。
天井にはところどころにスポットライトや鉄の梁が走っていて、本格的な展示室の様相だ。
そして一際目立つのが黒ミサのようなおどろおどろしい祭壇。沢山の蝋燭が並び、逆さに掛けられた十字架、禍々しい魔法陣のようなものがある。
「すごいですが、この祭壇みたいなのって」
「これは、『夜を殺めた姉妹』の祭壇なの」
そう言って、室内に置かれた大型のソファにもたれ掛かった八頭女史が、どこかからシーシャを出して来て一つを吸い始めた。
私にもソファに掛けてもう1つのシーシャとワインをテーブルにセットされる。ただのフレーバーを楽しむものだから、フルーツ系にしといてあげる、とまるでスィーツのような扱いだ。仕方なく一口吸ってみる。思ったより口当たりは爽やかだ。でも······もういいかな。
もうもうとしてきた室内で、彼女はシーシャとワインでさらに口が滑っていく。
「『夜を殺めた姉妹』?」
「知らない? そうかあ。冨樫甲児『黄昏を纏いし姉妹』の続編なのよ」
「続編ですか?」
「そう。そこで出て来る悪魔を呼び出す祭壇」
観たことがない作品だったので、八頭女史があらすじを教えてくれた。
前作で生活に困り、裕福な生活から転落した姉妹は、隠れキリシタンに拾われ穏やかに過ごし始めたある日、父の事業を潰した相手を知る。怒りに震える姉妹に隠れキリシタンが本当の姿を見せる。実は悪魔崇拝の異教徒だったのだ。姉妹は美貌を活かして復讐相手の息子をおびき寄せ、彼を生贄にして復讐相手の破滅を祈ろうとするが途中で立ち止まる。それを異教徒達は許さずに三人もろとも生贄にした祭壇で大悪魔を呼び出そうとする······という明治の混乱期をおどろおどろしく描いた問題作だったらしい。
ただ時代的にキリシタンの弾圧について描かれたものだということで、世間的にも大っぴらに公開もしにくく、海外へも見せられない。そんなわけで名監督の作品でありながらカルト作となっているのだという。
部屋着風のゆったりした赤いワンピースに着替えた八頭女史が、顔を直して戻ってきた。
「『猛獣たちの家』だけじゃないんですか?」
「私、コレクターもしてるって言ったでしょう? 日比野さんに少しだけ見せてあげる」
「ありがとうございます」
そうして勧められたそこは、おしゃれな展示室のようになったコレクションルームだった。先程の『猛獣たちの家』に出て来た日本刀、鳴子遊雲監督の『レディはいつも赤いリボンで』のヒロインが被っていた赤いリボン付きストローハットなどなど貴重なものが多く飾られている。
天井にはところどころにスポットライトや鉄の梁が走っていて、本格的な展示室の様相だ。
そして一際目立つのが黒ミサのようなおどろおどろしい祭壇。沢山の蝋燭が並び、逆さに掛けられた十字架、禍々しい魔法陣のようなものがある。
「すごいですが、この祭壇みたいなのって」
「これは、『夜を殺めた姉妹』の祭壇なの」
そう言って、室内に置かれた大型のソファにもたれ掛かった八頭女史が、どこかからシーシャを出して来て一つを吸い始めた。
私にもソファに掛けてもう1つのシーシャとワインをテーブルにセットされる。ただのフレーバーを楽しむものだから、フルーツ系にしといてあげる、とまるでスィーツのような扱いだ。仕方なく一口吸ってみる。思ったより口当たりは爽やかだ。でも······もういいかな。
もうもうとしてきた室内で、彼女はシーシャとワインでさらに口が滑っていく。
「『夜を殺めた姉妹』?」
「知らない? そうかあ。冨樫甲児『黄昏を纏いし姉妹』の続編なのよ」
「続編ですか?」
「そう。そこで出て来る悪魔を呼び出す祭壇」
観たことがない作品だったので、八頭女史があらすじを教えてくれた。
前作で生活に困り、裕福な生活から転落した姉妹は、隠れキリシタンに拾われ穏やかに過ごし始めたある日、父の事業を潰した相手を知る。怒りに震える姉妹に隠れキリシタンが本当の姿を見せる。実は悪魔崇拝の異教徒だったのだ。姉妹は美貌を活かして復讐相手の息子をおびき寄せ、彼を生贄にして復讐相手の破滅を祈ろうとするが途中で立ち止まる。それを異教徒達は許さずに三人もろとも生贄にした祭壇で大悪魔を呼び出そうとする······という明治の混乱期をおどろおどろしく描いた問題作だったらしい。
ただ時代的にキリシタンの弾圧について描かれたものだということで、世間的にも大っぴらに公開もしにくく、海外へも見せられない。そんなわけで名監督の作品でありながらカルト作となっているのだという。
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