62 / 131
062 佐山邸で調査再開③
しおりを挟む
私の疑問に西村課長がすぐさま提案をしてくれる。映画が観られれば何か気付くことがあるかもしれない。
「それと、前から思っていたんだが、比江島氏の切除は単純な『阿部定』模倣なんだろうか? その、ソレが祭壇に供えられたというのが気になるんだが。『夜を殺めた姉妹』では祭壇にそんなもの供えられてなかったように思うし」
尾崎係長も気になっていたことを口にする。これは私も思っていた。
「······もしかして地下室殺人に関連する映画があるのかもしれないね。ちょっと思いつかないけど。
八頭女史の件、映画見立ての殺人なんて狂ったことが本当に起きているのだから、あながち日比野さんの推測も外れてないように思うし」
田代主任のコメントには誰も何も返答しない。地下室殺人の映画。この世は未見の映画に溢れている。映画専門館の研究員が揃っても思い至らない作品が存在するのかもしれないが、そこまでマイナーな作品をモチーフにしたのなら逆に犯人は相当の映画マニアだということだ。
「そういえば、川真田氏と門木氏がいたって?」
「はい。太った男性と猿のマスクの男性が突然入って来て、私はそのすぐ後に意識を失ってしまったのですが、後で八頭女史の使用人が彼らをそう呼んでいましたからそういうお名前なのだと」
池上の問いかけに私が答えると、田代主任が大きく相槌を打ってくれた。
「それならその二人かもしれない。
ニッコー門木氏は基本的に公に出て来ない人で、何かあると猿のマスクを付けてくるんだ。門木というのもモンキーの当て字で本名も素顔も分からない。覆面批評家でこの人も映画コレクターだね。集めているのは批評家だからか映画全般の本とか雑誌だと思うよ」
「門木氏は、試写会にも現れないし徹底してるよな。一般公開されてから批評を書くスタイルだ。
もう一人の川真田氏は川真田猛といって、この人もまた映画コレクターだよ。しかも生粋の映画獣。特撮映画系を専門に集めている人だが、カルト映画もオーソドックスなものも、とにかく映画獣だから何でも観るタイプで、名前の通り猪突猛進。映画のためならエンヤコラなのか、どこの特集上映に行っても見かけるよ」
少し呆れたように尾崎係長が零すと、他の四人も頷いている。私は周りを見ていないのかな。あんな特徴的な体型の人なら分かりそうなものなのに、川真田氏を見かけた記憶がない。
「······噂だと二人もヨシイ古書店と懇意だって」
「ヨシイ古書店ねえ。井ノ口なんかは図書室の充実を図るためにあそこからも買おうとするが、あんまり縁を結びたくないよな、何となく」
「井ノ口は資料を増やすことに執念を燃やしてるからなあ」
「でも佐山氏のコレクションが寄贈されたら、ヨシイ古書店から買うこともないかもしれませんよね?」
「そうなるといいよね。まずは全て受け入れて、目録作って、書籍類を図書室に渡してみて······だね。長い道のりだなあ」
「それと、前から思っていたんだが、比江島氏の切除は単純な『阿部定』模倣なんだろうか? その、ソレが祭壇に供えられたというのが気になるんだが。『夜を殺めた姉妹』では祭壇にそんなもの供えられてなかったように思うし」
尾崎係長も気になっていたことを口にする。これは私も思っていた。
「······もしかして地下室殺人に関連する映画があるのかもしれないね。ちょっと思いつかないけど。
八頭女史の件、映画見立ての殺人なんて狂ったことが本当に起きているのだから、あながち日比野さんの推測も外れてないように思うし」
田代主任のコメントには誰も何も返答しない。地下室殺人の映画。この世は未見の映画に溢れている。映画専門館の研究員が揃っても思い至らない作品が存在するのかもしれないが、そこまでマイナーな作品をモチーフにしたのなら逆に犯人は相当の映画マニアだということだ。
「そういえば、川真田氏と門木氏がいたって?」
「はい。太った男性と猿のマスクの男性が突然入って来て、私はそのすぐ後に意識を失ってしまったのですが、後で八頭女史の使用人が彼らをそう呼んでいましたからそういうお名前なのだと」
池上の問いかけに私が答えると、田代主任が大きく相槌を打ってくれた。
「それならその二人かもしれない。
ニッコー門木氏は基本的に公に出て来ない人で、何かあると猿のマスクを付けてくるんだ。門木というのもモンキーの当て字で本名も素顔も分からない。覆面批評家でこの人も映画コレクターだね。集めているのは批評家だからか映画全般の本とか雑誌だと思うよ」
「門木氏は、試写会にも現れないし徹底してるよな。一般公開されてから批評を書くスタイルだ。
もう一人の川真田氏は川真田猛といって、この人もまた映画コレクターだよ。しかも生粋の映画獣。特撮映画系を専門に集めている人だが、カルト映画もオーソドックスなものも、とにかく映画獣だから何でも観るタイプで、名前の通り猪突猛進。映画のためならエンヤコラなのか、どこの特集上映に行っても見かけるよ」
少し呆れたように尾崎係長が零すと、他の四人も頷いている。私は周りを見ていないのかな。あんな特徴的な体型の人なら分かりそうなものなのに、川真田氏を見かけた記憶がない。
「······噂だと二人もヨシイ古書店と懇意だって」
「ヨシイ古書店ねえ。井ノ口なんかは図書室の充実を図るためにあそこからも買おうとするが、あんまり縁を結びたくないよな、何となく」
「井ノ口は資料を増やすことに執念を燃やしてるからなあ」
「でも佐山氏のコレクションが寄贈されたら、ヨシイ古書店から買うこともないかもしれませんよね?」
「そうなるといいよね。まずは全て受け入れて、目録作って、書籍類を図書室に渡してみて······だね。長い道のりだなあ」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる