映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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084 待ち伏せ①

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「ねえ、それでどうだったの? 映画とか話し合いとかさ」
「ええとですね、映画の方はこれを読んでもらえますか? 話すより早いんで」

 注文を済ませると、山森が待ちかねていたというように昨日の事を聞いてくる。

 表通りから少し中に入ったところにあるカフェに入った私達は、いつもならランチが届くまでに他愛のない雑談をするところだが、山森は朝からこの件が聞きたかったのだという。

 実は映画のあらすじを説明をするのは苦手だ。あれこそ脳の差が出てしまうというコンプレックスがある私は、用意しておいたメモを渡す。これは主観が入る感想や批評的な書き方ではなく、覚えている限りをプロット風に書いた『夜を殺めた姉妹』のストーリーだ。




――――――――――

冨樫甲児監督作『夜を殺めた姉妹』

●精一杯の装いをした姉妹が、夜の街に向かう。姉は着物、妹はワンピース。とある郭に行くが、「痩せぎすじゃ話にならん。だがよい相手を紹介してやろう」と成り上がりの女衒に二人まとめて売られそうになる。と、そこに郭の一番の姐さんが現れ、「こいつに付いて行くと死ぬよ」と耳打ちされ、隙を見て逃がしてもらう。途方に暮れた姉妹は、母の薬代のために髪を売ろうとした床屋で、「本当に困ったら信仰を捨ててそこに行けば食べさせてもらえる場所」として隠れキリシタンの住処を教わる。

●時が流れ、母の弔いを済ませた姉妹は、髪も短くして家も何もかも売り払っていた。姉美千代の婚約者だった男が「姉妹で妾になるか?」と嘲りに来るが、毅然と断る。妹華子は最後まで琴だけは手元に置きたいと駄々を捏ねたが、手に持てる荷物だけを抱えて家を後にする。そして、隠れキリシタンの潜伏先へ。下働きをしつつ、見知らぬ信仰には関わらないようにする姉妹を彼らは何も言わなかった。その事で姉妹の心は徐々に解れていく。

●ある日華子が買い出しに行った先で一人の男と知り合う。穏やかで優しい、中性的な美貌を持つ男。妹の荷物を落としてしまったお詫びに甘味をご馳走してくれたという。表向きは隠れキリシタンとは分からぬように共同生活をしているが、信仰の違いからか姉妹は常に疎外感を感じていた。それが元いた場所の空気を纏う男との出会いにより、華子は浮つくようになる。そんな中男が二人の演奏が見たいと手放したはずの琴と三味線を贈ってくれる。勧められるまま演奏し、喝采を受ける姉妹。礼を言うため姉妹が男を呼び止めようと後を追うと、男の前を塞ぐように男の父が現れて、見合いをするようにせっつくのを見る。嫌がる男だが、父と共に消えて行ったそこは、かつての姉妹の家だった。

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