映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

文字の大きさ
86 / 131

086 待ち伏せ③

しおりを挟む
 メモを読み終えた山森が、何とも言えない顔で返して来る。

「観てないからっていうのもあるけど、難解。最後ってどういうこと?」
「カルト映画を舐めてました。私にもさっぱりです」
「そうかあ、冨樫ヤバいね。でもこの映画······よくアメリカで一度は受け入れられたね」

 それは本当にそう思う。宗教の知識がないけれど、隠れキリシタンが邪教集団で、悪魔呼び出して皆殺しにされるとか、キリスト教のお国柄で文句が出なかったのだろうか?
 それとも白岩監督を皮切りに国際的な映画賞をいくつか日本映画が獲ったことで、海外で日本映画ブームが起きた1950年代当時は、そういう事もあまり気にせず評価してくれていたのだろうか。

「セットとか映像とか、役者の演技も音楽もすごい良いんですよ。『黄昏』の方はどっちかと言うと終始ローアングル気味じゃないですか。『夜』は徐々に浮上していくような撮り方してたんですよね。髪を切ってカメラ位置が上がって、キリシタンのところに行って上がって、みたいな感じで。それで最後は月の夜空にカメラがパンするんですよ」
「そういう仕掛け? 女のしがらみを捨てる度に心が軽くなるみたいな?」
「あ、そう! そういう感じかもです」
「でもちょっと怖いね」

 それぞれのランチが来たので、お喋りは一時中断して食事を楽しんだ。ここはパスタが本当に美味しいが、添えられてくるバケットと手作りバターがとにかく最高で、カリカリさと軽い口当たりのハーモニーがこっちをメインにしたくなるほど好みだ。
 嬉しくてもぐもぐと食べていると、珍しく食が進まない風の山森がサラダをいじっている。

「あれ、どうしましたか?」
「うん。思ったより昨日ご飯食べ過ぎたかなぁって。ごめんね、残して」

 お腹をさすりながら申し訳無さそうな表情を見せて山森はカトラリーを置いてしまった、食べるのを諦めてしまったらしい。
 山森が手を付けなかったバケットをくれたので、ちょっと恥ずかしくなりながらも美味しく食べてしまった。アオリイカのパスタもすごく良かった。午後眠くならないように気をつけなければ。

「あの······さ、昨日の話し合いの方はどうだったの?」
「そうですね。ここでは少し言いにくいんですけど、三家が集まって······、実はけっこうお互いに色々あるおうちだったんですよ。合縁奇縁っていうか、悪縁っていうか」
「悪縁?」
「映画好きな人同士ですから、どうしてもよく劇場で会うでしょうし、なおかつコレクター同士ですから、より接触の機会が多かったんでしょうね」
「よく分からないけど」
「えと、この三家の中でも付き合ったり別れたりとか色々あったみたい、ってことです」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...