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118 寄贈感謝会の日に④
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佐山家のご家族がいらっしゃった。由紀子夫人、美千代さん、華子さん、牧田さん、江藤弁護士の他に、もう一人。
「あの方は?」
「ああ、華子さんの旦那さんで、政治家の丹羽喜市郎氏だね。佐山氏のあの別邸の一帯の地主一家で、何らかの繋がりがあって結ばれたものだろうね。歳も離れてるしさ」
60歳は越えているだろうか、押し出しの強い感じの男性だ。50歳そこそこの華子さんとだと一回り近くは離れているように見える。
館長が佐山家に挨拶に向かい、和やかに談笑を続けている中、館内の職員達も続々と集まってくる。外部委託の職員さんは今日はご遠慮頂いているので、純粋な当館職員だけだと40 名程だろうか。研究員は毎年採用を行うわけではないので、少数精鋭の職場と言えるだろう。
ほぼほぼ集まったところで、西村課長がマイクを取る。
「佐山家の皆様、本日はご来館下さり誠にありがとうこざいます。故・佐山義之氏のこれまでのご功績には快挙に暇がないものでございますが、当館への学術的貢献の御遺志において職員一同大変感謝しております。本日はご寄贈品の整理を終えたご報告と、ご遺族様への感謝の気持ちを表したくささやかではありますが会を催したく思います。
会場には佐山氏よりご寄贈いただいた貴重な映画資料を一部置かせていただきました。本日は皆様とこちらを拝見しながら故人の功績を今一度称えてまいりたいと思います」
慇懃に口上を述べてから、マイクを一つ館長にお渡しする。
「皆様、お手元にグラスをご用意下さい。佐山義之氏の映画界への寄与とご家族様のご健康、当館への感謝を持ちまして······乾杯!」
めいめいが会を楽しむ中、私はゆっくりと寄贈品を眺めていった。その近くには佐山家の皆さんもいて、政治家の丹羽氏の声がよく聞こえる。その側で牧田さんは蒼白な顔で付き従っている。義理の弟になるのに、丹羽さん相手は年上だし緊張するのだろうか。奥様の華子さんは関心なさそうにミニケーキを摘んでいる。由紀子夫人はこれまた牧田さんに負けず劣らず蒼白だ。美千代さんと丹羽氏だけが闊達に話す声が響く。
「日比野さん、自分で準備したのに食べないの?」
井ノ口がおかしそうに笑いながら近寄ってきた。
「用意で匂い嗅いでたら、お腹いっぱいになっちゃって」
「勿体ない! じゃあドリンクは? 取ってあげようか?」
「さっきいただいたばかりなので、後にします。井ノ口さんこそどんどん飲んで下さいよ」
「こんなに素晴らしいものを見てるだけで酔いそうだよ。『夜を殺めた姉妹』の関連品は全て見つかったのかな?」
「そうだと思いますよ。佐山氏所有のものについては」
井ノ口はじっとビニール越しのデスマスクを眺めながら、ため息を付いた。
「資料課はいいね。こんなお宝と間近で接することが出来て」
「そう、ですね」
「日比野さん」
突然、井ノ口が顔をぐっと近づけて、耳元で囁いた。
「八頭さんのブレスレットには何が入ってたの?」
「井ノ口さん······」
「分かってるんでしょう? 色々。ニッコー門木氏が待ってるから、この後ちょっと抜けようか?」
すごくいい笑顔を向けて井ノ口がそう言った。
「あの方は?」
「ああ、華子さんの旦那さんで、政治家の丹羽喜市郎氏だね。佐山氏のあの別邸の一帯の地主一家で、何らかの繋がりがあって結ばれたものだろうね。歳も離れてるしさ」
60歳は越えているだろうか、押し出しの強い感じの男性だ。50歳そこそこの華子さんとだと一回り近くは離れているように見える。
館長が佐山家に挨拶に向かい、和やかに談笑を続けている中、館内の職員達も続々と集まってくる。外部委託の職員さんは今日はご遠慮頂いているので、純粋な当館職員だけだと40 名程だろうか。研究員は毎年採用を行うわけではないので、少数精鋭の職場と言えるだろう。
ほぼほぼ集まったところで、西村課長がマイクを取る。
「佐山家の皆様、本日はご来館下さり誠にありがとうこざいます。故・佐山義之氏のこれまでのご功績には快挙に暇がないものでございますが、当館への学術的貢献の御遺志において職員一同大変感謝しております。本日はご寄贈品の整理を終えたご報告と、ご遺族様への感謝の気持ちを表したくささやかではありますが会を催したく思います。
会場には佐山氏よりご寄贈いただいた貴重な映画資料を一部置かせていただきました。本日は皆様とこちらを拝見しながら故人の功績を今一度称えてまいりたいと思います」
慇懃に口上を述べてから、マイクを一つ館長にお渡しする。
「皆様、お手元にグラスをご用意下さい。佐山義之氏の映画界への寄与とご家族様のご健康、当館への感謝を持ちまして······乾杯!」
めいめいが会を楽しむ中、私はゆっくりと寄贈品を眺めていった。その近くには佐山家の皆さんもいて、政治家の丹羽氏の声がよく聞こえる。その側で牧田さんは蒼白な顔で付き従っている。義理の弟になるのに、丹羽さん相手は年上だし緊張するのだろうか。奥様の華子さんは関心なさそうにミニケーキを摘んでいる。由紀子夫人はこれまた牧田さんに負けず劣らず蒼白だ。美千代さんと丹羽氏だけが闊達に話す声が響く。
「日比野さん、自分で準備したのに食べないの?」
井ノ口がおかしそうに笑いながら近寄ってきた。
「用意で匂い嗅いでたら、お腹いっぱいになっちゃって」
「勿体ない! じゃあドリンクは? 取ってあげようか?」
「さっきいただいたばかりなので、後にします。井ノ口さんこそどんどん飲んで下さいよ」
「こんなに素晴らしいものを見てるだけで酔いそうだよ。『夜を殺めた姉妹』の関連品は全て見つかったのかな?」
「そうだと思いますよ。佐山氏所有のものについては」
井ノ口はじっとビニール越しのデスマスクを眺めながら、ため息を付いた。
「資料課はいいね。こんなお宝と間近で接することが出来て」
「そう、ですね」
「日比野さん」
突然、井ノ口が顔をぐっと近づけて、耳元で囁いた。
「八頭さんのブレスレットには何が入ってたの?」
「井ノ口さん······」
「分かってるんでしょう? 色々。ニッコー門木氏が待ってるから、この後ちょっと抜けようか?」
すごくいい笑顔を向けて井ノ口がそう言った。
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