映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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119 寄贈感謝会の日に⑤

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 腕を拘束された状態でヨシイ古書店に連れて行かれた。以前に立ち寄った店舗側ではなく、その奥のスペースだ。前に見たことのある店主がにこやかに出迎えてくれるが、完全にミスマッチだ。

「お嬢さんにこんなことしてごめんね? いらっしゃいませ。門木氏なら先に来てるよ」

 店主はそう言うと、奥の壁にもたれ掛かっている猿マスクの男を指さした。こちらもガムテープでぐるぐるに巻かれて、口も塞がれている。

「ひびの・けいさんは、池上くんと恋人なの? 違うとしてもそういうことにしようか? それでさ、噂の覆面男ニッコー門木氏が殺人者だって告白してきて、一緒に心中するってことにしよう!」

 男から荒っぽく猿マスクを剥ぎ取ると、そこにはグッタリした池上の顔があった。

「池上さん!」
「大丈夫だよ、日比野さん。彼には日比野さんが危ないよって言って、急いで来てもらったから、ちょっと疲れてるんじゃないかな」

 優しい声で言いながらも、井ノ口の動きは荒い。そのままベリッと口のガムテープを剥がす。池上の息が浅い。

「平気だよ、日比野ちゃん」

 苦しげな池上の腹を井ノ口が強く蹴る。

「ううっ······」
「勝手に喋らないでね」

 私は池上の隣に座らされた。

「じゃあ、二人の心中のシナリオを書いたから説明するね。『曽根崎心中』みたいには作れなかったけど、許して」

 井ノ口はいつも図書室で見るような笑顔でスラスラと話し出した。

「まずは、池上はニッコー門木だった。学生の頃から無記名で書いてた映画評論が人気となり、顔出しNGで活動を開始。国立映画資料館の研究員になってからも、こっそり続けていたんだ。
 それで新しく入って来た日比野さんと恋人になる。でも池上は門木であることだけでなく、他にも秘密があった。
 たまたま知り合った牧田君から『夜を殺めた姉妹』の資料のことを聞いて、どうしても欲しくなったんだ。それでヨシイ古書店さんに相談して、川真田とともに古紙回収者に扮して、いい資料があると佐山さんを唆してトラックの荷台にあがらせて、突き落として殺した」
「私は池上君がそんなことをするなんて知らなかったから驚きましたよ」

 両手を挙げて驚きのジェスチャーをして来るヨシイ古書店店主。おどけたような表情が憎たらしい。

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