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卒業旅行
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『ねえ、太陽く~ん。今日の夜、二人で抜け出さない?』
――甘ったるい猫声で言う。
これは、柏木さん?
『あいつ、やっぱ太陽くんのこと狙ってるよ!?』
――眉間に皺を寄せ、少し怒っている繭。
『美雨は、一人じゃない』
――雨男、くん?
*ーーーーーーーーーーーーーーーーーー*
・
*ーーーーーーーーーーーーーーーーーー*
ザーザーとアスファルトに打ち付けられた雨の音が妙に耳に響く。
『あぶねぇぇええええ!!!!』
誰かに向けて、叫んでいる男の人。
顔は、見えそうで見えない。
けれど、声からして緊迫感が伝わる。
叫んでいるあなたは、いったい誰なの―?
*ーーーーーーーーーーーーーーーーーー*
―卒業旅行当日。
バスと新幹線に揺られて、2時間弱。
無事に京都に着くことができた。
「やっと着いた~!」
「京都だぜ、太陽、彰っ!」
「京都だな」
「和樹、あんまりはしゃがないで。恥ずかしいから」
繭、和樹くん、太陽、彰くんの順番で話す。
私は、その光景がなんだか可笑しくて、口角が上がり、笑ってしまう。
「美雨」
「なに?」
さっきまで彰くんの傍に居た太陽が、私の隣に来た。
「大丈夫なのか?」
え?
大丈夫って?
「何のこと?」
「新幹線で寝てるときに、泣いてたぞ?」
泣いて、た?
私が?
目尻に指先を持っていき、涙が出ているかを確認する。
けれど、何も泣いた形跡はそこにはない。
次に、泣いたことを思い出してみる。
でも…。
「う~ん...」
何も思い出せない。
むしろ、泣いた記憶がない。
「怖い夢でも見てたのか?」
「そうかも?」
「何で、疑問形なんだよ」
可笑しそうに、くしゃりと笑った太陽。
「思い出せないんだもん」
本当に思い出せない。
きっと、太陽の言ったように怖い夢を見ていたんだと思う。
大切な夢なら、覚えてるはずだしね!
「美雨、太陽くん、行くよ~!」
繭が振り返り、私たちを呼ぶ。
その声に私と太陽は、繭のところに向かった。
・
「これって、右?左?」
「ここ右じゃないか?」
「感覚で行こうぜ!きっと、右だって!」
さっきから目的地の神社になかなか行くことができない私たち。
繭と彰くんが地図を見てくれているけど、それでも辿り着くことができない。
中々付かない私たちに痺れを切らしたのか、感覚でいこうぜなんて言っている和樹くん。
ふと、周りをぐるりと見渡す。
あ、ここって…
「ねえ、ここ右じゃなくて左...だと思う」
根拠はないけど、何故かそう思う。
「本当!?
まあ、ここにいてもあれだし、美雨を信じて行ってみよう!」
繭の一言で、私の言った道を歩いていく。
確か、ここをまっすぐ歩くと...
「おっ、着いた!美雨ちゃん、ここ来たことあるの?!」
目を見開き、驚いたように言った和樹くん。
「ううん、ない...よ」
「そうなの!?地図も見ないで着いたから、知ってるのかと思った!」
そう思うのも無理はない。
だって、目の前には、行きたかった神社があったのだから。
私もびっくりしている。
ここに来るのは、初めてのはずなのに。
なんで、道のりがわかったんだろう?って。
まるで、ここに1度来たことがあるかのような感覚に陥った。
「美雨」
「太陽?」
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ?」
「そっか、ならいいんだ」
私は首を横にコクリと傾ける。
太陽の大丈夫?の意味がよくわからなかった。
でも、何故か太陽のその気遣いに、どこかホッとする自分がいた。
「じゃあ、お参りしようか」
彰くんの声にみんなで、お賽銭を入れ、お願い事をする。
この神社は、縁結びで有名な神社。
男女の縁だけでなく、友達や家族、上司や後輩などの全ての縁にご利益がある、とネットに書いてあった。
自分のお願い事を終え、チラリと隣にいる太陽を見た。
たい、よう?
目を瞑っていて表情なんてわからないはず…
なのに、太陽の顔はどこか寂しげで...昨日の弱った太陽を見ているようだった。
太陽がどこかに消えてしまうような、そんな気がした。
だからなのか、私は、無意識に手を伸ばし、太陽の制服の裾を掴む。
「美雨?」
お願い事が終わったのか、目を開け、少し驚きながら私の顔を見た。
「ぁ...っ」
太陽の声にいま自分がした行動に驚いてしまい、パッと掴んでいた手を離した。
「ありがとうな」
そう言って、柔らかく笑い、まるで私の気持ちを分かっているかのように、
頭を優しく撫でてくれた。
「太陽も美雨も、イチャイチャしないでね~」
「そうだな、一応俺たちもいるからね」
「俺は、二人のイチャイチャ見れて嬉しいよ~!」
茶化すように繭、彰くん、和樹くんの順番に言う。
...っ!
体の体温が少し上がったのが、自分でわかる。
私、何してるんだろう...っ
もう、恥ずかしい...!
両手で自分の両頬を挟んで、落ち着かせるために深呼吸をする。
「じゃあ、他も回りますか!」
繭の元気な声に、次の観光場所に向かった。
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