雨の日に傘をさして、きみにアイにいく。

あびくらむげ

文字の大きさ
10 / 17

雨の日の報告

しおりを挟む


―5月。
桜の花びらも散ってしまい、今では木の枝しか見ない。


そんなある日の放課後。


「よいっ、しょ...」


数冊の本たちを机の上に置き、いつも通りの仕事をする。
私は今、旧図書室にいる。


今日は、数週間ぶりに雨男くんに会える日。
そう、今日もザーザーと雨が降っている。


太陽との誤解を解いた日から、何も進展はなく、ただ前と同じ関係性に戻った。
ううん、少し違う...かも?
前までは、なんだかんだで太陽と私の間に一線があったように思っていた。
でも、今では、その一線がない。
無意識なのか意図的なのかわからないけど、私になにかと触れてくるようになった。


その度にドキドキして、期待して...
それを面白そうに、ニヤリと笑っている太陽。


これが、最近の私と太陽の関係性。


友達以上恋人未満の関係性では、なくなった気がする…
かといって、恋人以上の関係性でもないのも、また事実。


繭に、最近の関係性を話したら、とても喜んでくれていた。
何故か太陽に「太陽くんもはやく言うこと言っちゃえばいいのに」って、ぶつぶつ言っていたけどね。


―コンコンと、小窓を叩く音がした。


私は、小窓を開けて「久しぶり」と声をかける。


「久しぶりだね」


少し嬉しそうな声色で返事をしてくれた雨男くん。


「ここ最近ずっと雨が降らなかったもんね」


「そうだね」


「ふふっ」


手を口元に持っていき、笑みが溢れるのを隠す。
雨男くんに会えて嬉しいと思っている自分がいる。


太陽と会うのとは、また違う嬉しさ。


「嬉しそうだね?」


「うん!雨男くんに話したいことが、たくさんあるんだよ?」


本当に、たくさんあるの。


「そんなにあるの?じゃあ、さっそくだけど聞かせてくれる?」


「うんっ、あのね――...」


卒業旅行の時の話しや、太陽のことを話した。
たくさん、たくさん話したにも関わらず、嫌な声色ひとつしないで話を聞いてくれる雨男くん。


その優しさが、どこか太陽に似ていると思ってしまう。
太陽と雨男くんが重なって見えてしまって以来、どうも二人を繋げてしまう自分がいる。


太陽は、雨男くんじゃない。
そう頭ではわかっている。
けれど、何故か繋げてしまう。


その理由は、きっと―。
ときどき見せる、太陽の話し方や雰囲気が雨音くんに似ているから...なのかもしれない。


「...だから、雨男くんのおかげなの。ありがとうね?」


全部話し終え、雨男くんにずっと言いたかった言葉を口にした。


「そんなことないよ。」


「それが、そんなことあるんだな~」


雨男くんと繭がいなかったら、私は今、太陽と話すことさえしていなかったと思う。


「僕ね、今の話でちょっと分かったことがあるんだけど...」


「わかったこと?」


なんだろう?


「太陽くんって、美雨のこと好きなんじゃないかって、僕は思うんだけど?」


「ふぇ?」


いきなりの雨男くんの言葉に驚き、変な声が出てしまう。


太陽が、私のことを...好き?
ーそんなわけ、ないのに。


私とは裏腹に、雨男くんは楽しそうに言葉を続ける。


「美雨から告白しなよ!絶対成功するよ、僕が保証する。」


確信があるかのように、どこか自信満々に言った雨男くん。


こく、はく...か…


「雨男くん」


「ん?」


「私ね?太陽に告白したら、だめな気がするの」


これっていう、理由はないけど、そう思ってしまう。
それは、あのことがあるからかな?


「どういうこと?」


不思議そうに聞く雨男くん。


「前からそうなんだけどね?なんだか心がザワザワするの…」


ーそう。
前々から、心のザワザワを感じていた。


卒業旅行でも道が分かったり、会話もしたことないのに、相手の言いたいことがわかったり…。初めて授業で習う問題も答えがわかったり...


少し前ならただの夢なのかなって思っていたんだけど、ここ最近ずっと同じようなことが起こる。
なんて言ったら、しっくりくるんだろうか。


「まるで一度、体験したことがあるかのような...」


今いるこの瞬間が夢なような。
そんな気がしてならない。


「それが、日に日に大きくなっていってて...
だから、なのかな?不安、なの。」


それと太陽への告白は、関係ないんだけど。
でも、なんでだろう。
関係ないのに、関係があると思ってしまう。


漠然とした不安と恐怖が私を蝕んでいく。


「美雨、大丈夫だよ。大丈夫だから。」


雨男くんは、まるで自分に言い聞かせるように優しくそう言った。


雨男、くん?


「それに...」


それに?


「人生をもう一度、体験することなんてできないよ?」


そう。
人生をもう一度体験することは、できない。
いや、そんなことあるはずがない。
―だからこそ、不安になるの。


「美雨」


「なに?」


「ーーーーーー」


雨男くんが何かを言った瞬間、タイミングよく雨が強くなった。
ザーザーという音のせいで、なんて言ったのか、うまく聞き取ることができなかった。


「雨男くん、ごめんね。雨の音で聞き取ることができなかったの」


眉を下げて、もう一度言ってくれる?と、お願いをした。


「ううん、なんでもないよ。さっ、今日はもう帰ろうか」


そう言って、時計を見ると結構な時間になっていた。


「じゃあ、また雨の日に。」


「う、うん...またね?」


いつものように小窓から、虹色の傘が消えた。


さっきの雨音によって、消された雨男くんの言葉。
小さく、本当に小さくだけど。


「ごめんな」


と、聞こえたような気がした。
でも、その声が、何かを思い詰めているかのような…
雨男くんの心の叫びに聞こえたのは、気のせいかな。


また、次の雨の日の時も雨男くんに、会えるよね…?


何故かこの時、雨男くんにはもう会えないんじゃないかと、
急な不安にかられた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

花言葉は「私のものになって」

岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。) そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。 その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。 美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。 青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。

初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日

クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。 いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった…… 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新が不定期ですが、よろしくお願いします。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

【完結】言いつけ通り、夫となる人を自力で見つけました!

まりぃべる
恋愛
エーファ=バルヒェットは、父から十七歳になったからお見合い話を持ってこようかと提案された。 人に決められた人とより、自分が見定めた人と結婚したい! そう思ったエーファは考え抜いた結果、引き籠もっていた侯爵領から人の行き交いが多い王都へと出向く事とした。 そして、思わぬ形で友人が出来、様々な人と出会い結婚相手も無事に見つかって新しい生活をしていくエーファのお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ているもの、違うものもあります。 ☆現実世界で似たもしくは同じ人名、地名があるかもしれませんが、全く関係ありません。 ☆現実世界とは似ているようで違う世界です。常識も現実世界と似ているようで違います。それをご理解いただいた上で、楽しんでいただけると幸いです。 ☆この世界でも季節はありますが、現実世界と似ているところと少し違うところもあります。まりぃべるの世界だと思って楽しんでいただけると幸いです。 ☆書き上げています。 その途中間違えて投稿してしまいました…すぐ取り下げたのですがお気に入り入れてくれた方、ありがとうございます。ずいぶんとお待たせいたしました。

処理中です...