とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

文字の大きさ
4 / 108
第1章 オディオ王国編

第4話 危機管理と称号で気づかされた俺の不幸の件

しおりを挟む
案内された個室で俺が初めにしたのはわかる範囲で盗聴器の類がないか【鑑定】での確認だ。

オディオ王国にはしばらくお世話になるけれども、俺は彼等を俺の味方とは思っていない。

案の定、『録音魔導機』というピンポン玉大の球体が部屋の中に2つ、調度品に溶け込むように隠されていた。

その一方で、部屋の周囲に監視をする人物は1人もいない。俺達を気遣ってということでいないということは極めて低いと考えている。

遠く離れた場所の様子を視ることができる【千里眼】の様なスキルの存在もあるかもしれないが、それを持っている者は国王達を含め、さっきの謁見の間にいた人々の中にはいなかった。


設置されていた『録音魔導機』の用途はボイスレコーダーと同じ。ただし、録音可能時間は丸1日途中停止後の録音再開は不可。防犯機能として、起動のための魔力を注いだ者しか録音内容を確認できない様になっている。

この『録音魔導機』を排除することも可能ではあるが、それはこちらがこの盗聴機に気づいていること、気づけること知られてしまう。これを設置した相手には出きる限り俺の情報は与えたくない。とりあえず、1日目は敢えてそのままにして様子見することにした。

明日、部屋をあけて戻ってきたときに真新しい『録音魔導機』に交換されているかどうかで対応方針を再検討することにした。

これまでを振り返って改めてこの国から早めに脱出する決意を固めた俺はベッドに腰掛けてステータスと置かれている状況の確認を始める。

おっとまずは【空間収納】でバックアップと業◯スーパーで買った食糧を収納してみるか。

LV2でも【空間収納】は十分使える。収納容量はコンテナ2つ分の大容量。時間経過設定を個別で可能。内訳も項目毎管理とまんまMMORPGのインベントリやアイテムボックス。しかも、今後のレベルアップで容量と機能拡張ありと素晴らしいアタリスキルだ。

スキル毎に最大レベルの設定が異なっている。まずレベル自体がないもの。続いて、最大レベル3、5、7,10となっている。【鑑定】は最大レベル7で、【空間収納】は最大レベルが10となっている。


とりあえず、本当に空間収納内の時間経過が違うのか、時間経過設定の有無の違いを冷やしたペットボトルジュースをそれぞれの収納枠に入れて実験。結果はこの部屋に戻ってきたときに確認する。


さて、さっきの国王と謁見した場所と魔方陣のある広間にいた全員に俺は気づかれない様、俺の目線の動きなど細心の注意払いながら【鑑定】をかけていた。

結果、【鑑定LV1】から【鑑定LV2】へ上昇。それから、幸い【鑑定】スキル持ちはこの城の中にはいないことがわかった。

しかし、【鑑定】と同様の効果を持つアイテムが存在しないとも限らないので油断はできない。

現時点で最も注意すべきは王女。彼女の保有スキルの中に【魅了LV3】という洗脳系スキルがあった。

【魅了】:能動性スキル:対象に好意を抱かせて、状態異常:魅了にするスキル。

魅了状態は5段階あり、軽度の1であれば持っていた悪感情が相殺され、2になると使用者に悪感情を抱かなくなる。最大の5になると使用者に思考を支配されるので大変危険。但し、魅了の効果は使用者の死亡及び時間経過で解除される。

やはりこの勇者勇敢は召喚した異世界人を洗脳して奴隷にするというアカン系異世界召喚にテンプレの1つだったようだ。俺の中で危機感が増した。

もっとも、王女様の関心は喜ぶべきか、悲しむべきか俺にはなく、駄メン達5人組みにあった。王女は俺にはこの【魅了】スキルを使わずに5人組全員に【魅了】を行使していた。あの5人組のなかで、おかんポジと思われるポニテ少女は王女の魅了付与の抵抗に成功して魅了状態を回避したようだが、他の面子は状態異常:魅了2になっていた。

興味深いのは王女が状態異常:魅了2になった者には再度魅了を使っていなかったことだ。
状態異常付与に成功した同一対象には連続行使に制限、もしくはクールタイムが発生するのかもしれない。

使われていないとはいえ、今後はどうなるかはわからないから、何かしら対策しないと危険だ。王女にあまり快く思われていないのなら、洗脳されてしまえば俺は捨て石にされるのはまず間違いないだろう。

このことを頭の片隅において、俺は再び自分のステータス画面を呼び出して眺める。

このステータス画面、開いているときは本人にしか見えない素敵仕様らしい。他人が見るには【鑑定】系スキルと同様の効果を持つアイテムが必要とステータスにあったヘルプ機能で確認した。

さっきはすぐに移動しなければならなかったから、称号の確認を後回しにした。
そして今、俺はそれを見て、目を疑った後、気を取り直して目薬をさし、称号の欄を再び目にした。そこには勇者のゆの字もなく、あったのは

称号:巻き込まれた異世界人

どうやら俺は関係者(勇者)じゃないのに現場に居合わせられたから一緒に拉致られたという不幸な被害者の役回りだったようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...