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第1章 オディオ王国編

第9話 王権による冤罪で3Kな地下牢なうな件

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脳筋を体術スキルの【一本背負い】で一本とって撃沈した俺は、直後に踏み込んできた騎士達に謁見の間へ連行された。

自動発動したスキル【システム:EX LV1】も『任意解除』で今は使用不可時間クールタイムになっている。このスキルは作ったはいいが、3分間の制限時間と時間超過で強制行動不能というハイリスクな性能だから、レベルが低い今は使い勝手が悪すぎる。

ちなみに強制行動不能は全身に発生する地獄の筋肉痛のことである。これは制限時間内に『任意解除』することで回避できる。誤作動したとき、使い慣れずに初めて制限時間を超過したときは……本当に地獄だった。

騎士達に反抗してもメリットどころかデメリットしかないから俺は大人しく連行された。それに騎士達が踏み込んできたタイミングがあまりにも早過ぎる。駄メンと脳筋が騒ぎを起こして使用人達が報告する時間を考えると不自然過ぎるのだ。つまり、この流れは最初から仕組まれていた罠だったようだ。

「ユウ・アンドウ、貴様を勇者タケシ・ドモンを負傷させた罪で勇者の地位を剥奪し、懲役刑に処す。連れて行け」

ろくに事実確認もしないまま、オディオ国王は頭がわいているとしか思えない罪状で俺に懲役刑を有無を言わせず言い渡した。

流石、文明が元の世界の現代日本より遅れている異世界の王政国家。正当防衛という概念は当然なく、明確な事実よりも国王の恣意的な判断が優先されるようだ。やはり腐ってやがるなこの国は。

そして、謁見の間には何事もなかったかのように、俺に乱暴されたということになっているアリシア王女が五体満足でニンマリと笑みを浮かべていた。殴りたい、あの笑顔。



それから、連れてこられて入れられたのは暗い、汚い、臭いの3Kが揃ったオディオ王城の地下牢なう。

手枷や魔術封じの首輪をさせられるのかと思いきや、それらを全くされずに俺は鉄格子の向こう側に追いやられた。錬金術師が無能職というこの国の固定概念のおかげだからか、少々無用心すぎないかい。俺は大助かりだからいいけれども。

流石に、このまま大人しくしていてもいいことは皆無。また、遂に待望の脱出の機会が巡ってくるので、俺はこれまでしていた自重をやめて、短い間だがお世話になりそうなこの3Kな不快空間である牢屋の中を居心地がいい快適空間に改造することにした。

まず手始めに4つ目に作ったスキル【魔術創造】で更に作り出した【土魔術】の【石工ストーンクラフト】で鉄格子のこちら側に石の扉を作って向こうからの視界を完全に遮断した。

次に、同じく【魔術創造】で作り出した【生活魔術】の【清潔クリーン】と【殺菌ステアリゼイション】、【消臭デオドラント】でこの3大清掃魔術で不快空間を洗浄。

更に【生活魔術】の【空調エアコンディショニング】で一気に過ごし易い快適空間に変えた。【清潔クリーン】と【殺菌ステアリゼイション】、【消臭デオドラント】の3つは【魔術創造】で真っ先に作って連日使用している。

また、俺が入れられた牢屋は囚人が俺以外いないため、かなり広い。俺以外の囚人がいない理由は現国王が牢屋にいた囚人を全員、外に出して処刑したからだと牢番さんが言っていた。中には俺みたいに冤罪で捕まっていた者も少なくなかった様で、このオディオ王国は表向き磐石に見えるが、実は人手不足でボロボロだ。先代国王の【予知夢】が現実になる日は必ず来るだろう。

そして、【石工ストーンクラフト】で作った衝立で石扉のすぐの小部屋と寝室、浴室、便所の間仕切りをして、【石工ストーンクラフト】で浴室の洗い場と浴槽を作った。

【火術】の【火球ファイアボール】と【水魔術】の【水球アクアボール】を【魔術創造】で作っているからこれで風呂に入れる。もしかしなくとも、王城内に割り当てられていた個室よりも豪華かもしれない。

作業を終えてMyPhoneを確認したら、丁度昼飯時だったので久しぶりにインスタントラーメンを食べることにした。業○スーパーで購入していたものは5食パックのサッ○ロ一番塩ラーメンとチャ○メラのしょうゆ。カット済みチャーシューと使いきりパックもやし、煮卵、カット葱、あと8枚切り焼き海苔も【空間収納】の時間停止枠に収納していたので賞味期限などは問題ない。

今回はチャ○メラのしょうゆにした。鍋と丼は【石工ストーンクラフト】で作った後に【清潔クリーン】と【殺菌ステアリゼイション】。

清潔クリーン】だけでいいように思えるかもしれないが、【清潔クリーン】では排除できない微生物がいるかもしれないので、ダメ押しの【殺菌ステアリゼイション】。元の世界では絶滅したが、こっちの世界で生き残っている病原菌があるかもしれない。念入りに消毒してリスク排除だ。

沸騰した鍋のお湯に麺を入れて麺を少しずつ解して2分少々。レシピでは3分と書いてあるけれども、少し固麺が俺は好みなので大体2分で麺の調理を終える。丼に粉末スープを入れて、麺を湯がいたお湯をまずは少量入れて粉末スープを溶かし、残りの規定量のお湯をいれる。後は丼に麺をいれて、少し解して、秘伝のスパイスを満遍なく降りかけ、海苔を載せ、その上にチャーシュー、煮卵、カット葱を載せる。入れたかったけれども、今回もやしはパス。使いきりパックのもやしの量は以外と多い。野菜炒めにも使えるので、今回のラーメンには入れなかった。

口の中に広がる久々のホタテと醤油の旨味。熱々の麺を啜って、スープも飲み干した。

こっちの世界に来てからよく言えば健康的だが、塩や胡椒といった香辛料・調味料は値段が高すぎるため、全く料理に使われていない。そのため、必要な塩分が不足しがちな食事だった。だから普段はインスタントラーメンのスープを飲み干すということはしないが、今回は遠慮なく飲み干してしまった。

石工ストーンクラフト】で作った即席のテーブルの上に空になった丼を置き、石椅子から立って軽く背伸びをして、俺はそれに気づいた。

天井に魔導具に必ずついている刻印、たしかこれは魔導具の魔力を注ぎこむために刻む紋様、があった。

食休みをはさみ、好奇心がうずくものの、俺はやることがあるので紋様に魔力を注ぐのは後回しにした。

それはRPGで定番の隠し通路探索だ。俺はプレイしたゲームで投獄されたら、この隠し通路探索を欠かしたことが実はない。

ストーリーモードの難易度が高過ぎて有名な某サバイバルファンタジーアクションゲームのネットPVPモードの牢獄面で見つけた隠し通路に何度お世話になったことか。太陽バンザイ。

そして、見つけた外へ繋がる隠し通路。【石工ストーンクラフト】が効かない壁にあった隠しレバーを引くオーソドックスなものだったが、目印になるものが皆無だから、これは常人なら全く気づくことができない。開いた通路は埃だらけで全く使われた形跡がない。

とりあえず、【清潔クリーン】で埃と汚れを分解して通れるようにした。

警戒しつつ、先に進んだら呆気なく外に出れた。出口は周囲に溶け込む枯れ井戸に偽装されているという素晴らしいものだ。

枯れ井戸の位置は国境近くの森だった。この出口はなんで牢屋に作ったんだ?という疑問がわいたが、先王の手記にあった昔の改築前、今の牢屋は魔術実験用の魔方陣があった広間だったという記述を思い出して納得した。多分、初代王妃の仕事だこれ。

ご都合主義よろしく、脱出路の確保をした俺は喉に刺さった小骨の如く好奇心を刺激し続ける刻印を調べることにして、魔導具を使う容量で魔力を刻印に注ぎこんだ。すると、景色が改築した牢屋の部屋から一気に暗転した。



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