とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

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~幕間1~

第14話 俺が如月飛鳥嬢を助けることに至った経緯と魔改造牢屋崩壊の真相の件

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正直に言えば、俺は当初、如月飛鳥という少女を助ける気は微塵もなかった。

彼女の父親が取締役を務める会社が自分の勤めていた会社の取引先でお得意様であるという、彼女一個人とは全く無関係。あの他の4人同様、彼女とは通りすがりに行き違った赤の他人という関係だ。

王城でこの世界の常識を学び、実戦に備えた訓練を行っているときに僅かにその関係は変化した。

この世界で、というよりも召喚されたオディオ王国で選民意識の1つとなっているスキルの【魔術】。

原因は不明だが、如月飛鳥だけが取得していなかった。このことにより、密かに王国脱出後の生活を見据えて、この国では蔑視されている【錬金術】を鍛える俺同様、彼女も軽視される様になった。

召喚したこの国の人間ならまだしも、一緒にこの世界に召喚された4人の幼馴染達からも彼女は軽蔑されるようになったのだった。

俺は錬金術師が不遇職で教師役がいなかったため、書庫に篭って僅かにある書物から独学で【錬金術】を修めざるをえなかった。

余談だが、この国はポーションなどの薬品類は他国からの輸入に頼りきっている。

飛鳥嬢は【魔術】を取得する方法と元の世界に戻る方ための情報を集めるために足しげく書庫に通っていた。
そして、俺が休憩で手隙のときに彼女から助力を求められたことをきっかけに俺は飛鳥嬢と言葉を交わすようになった。

彼女の話を聞くうちに彼女の人となり、真面目で世話焼きな性分を俺は知った。彼女が話し上手なのと、やはりいろいろ溜まっていたのか、彼女達5人について俺は多くを知ることになった。

彼女達の生まれはやはりいづれも資産家や由緒正しい名家で名門校に通っていた。この世界に召喚された日は夏期長期休暇、社会人にとっては学生時代には想像もできない程の果てしない隔たりがある所謂、夏休み。その中で唯一の登校日だったそうだ。

今となってはもう叶うことがない話だが、彼女達5人は学校の最高学年。学部こそは違うものの、同じ大学に通う予定で、駄メンと脳筋は推薦で、飛鳥嬢とメガネ、ロリっ子は実力で既に安全圏内という判定。

久しぶりに5人集まったので意外にもメガネの発案であの後、食事に行くはずだったらしい。

駄メンと脳筋、ロリっ子にとって甲斐甲斐しく世話を焼く飛鳥嬢は正しくオカンポジであった。メガネに対する彼女の認識は勉強などを競う好敵手で、5人組のご意見番。暴走した3人を止めるときの頼れる相談相手だった。

また、彼女から野郎3人に対して恋愛感情は皆無。幼少からの長い親しい付き合いの影響で家族意識が強く、どうしても特別な異性として意識することができないそうだ。

ただし、飛鳥嬢は駄メンが自分に一方的な好意と執着を抱いていることに気づいていた。しかも、駄メンは彼女が自分に好意を抱いていて、自分の伴侶になることを偏執的に信じて疑わないらしい。

飛鳥嬢に好意を抱く同年代の男子に駄メンは容赦なく攻撃をし、そのフォローに駄メンの両親が毎度奔走させられていたらしい。飛鳥嬢が被害者救済に動こうとすると、どこから嗅ぎつけたのか、加害者の駄メンの執拗な妨害が入ってできなかったそうだ……ナニソノヤンデレ。

脳筋からは時折、身の危険を感じる肉欲に満ちた視線を向けられて、飛鳥嬢は警戒心を抱いていたそうだ。

その一方で、なんと恋愛とは無縁そうで、天心爛漫に見えるあのロリっ子から、脳筋との恋愛相談を受けて2人の仲を取り持つべく応援していたらしい。その結果、この世界に召喚される前の今年の梅雨に脳筋とロリっ子は結ばれたそうだ。生々しい部分も含めて。けれども、脳筋から飛鳥嬢に時折送られる不穏な視線は止まなかったようで飛鳥嬢とロリっ子の悩みの種らしい。

メガネからは男2人から感じる様なものは全くなく、フラットな友人関係だったと彼女は感じていたようだ。彼は付かず離れず、深く踏み込まないスタンスの付き合いをに終始していた様だ。

俺が投獄されてから、飛鳥嬢はアリシア王女や国王に対して、自身の危険を顧みずに直談判してくれていたのを俺はスキルを通して知った。

結局、どちらの訴えも有耶無耶にされた上、結果としてアリシア王女に如月飛鳥は4人組と同じように操る手駒としては不要な存在と認識されて、同じく役立たずのレッテルを貼られた俺と共に切り捨てられることにつながった。

飛鳥嬢と俺が害される計画を事前に察知した俺はこれを機に、以前から進めていたオディオ王国からの脱出を決行することに決めた。飛鳥嬢を彼女の今の境遇からも含めて救出できるのも、この機会が最善という判断もあったからだ。けれども、飛鳥嬢を助け出すにしても、ただそのまま命の危機を回避するのではなく、俺は彼女に選ばせることにしていた。

その理由はまず、彼女が今後俺と行動を共にするならば、俺の持つURスキルについてオディオ王国脱出後の彼女の行動方針に合わせて教える必要がでてくるリスクが俺にあること。

次に、彼女自身は気づいていなかった様だが、これまで無意識のうちにこれからも変わることがないと飛鳥嬢が思っていた節がある4人の幼馴染達への依存から彼女が脱却する決断をする必要があること。

そして、駄メン達に殺されるのを選ぶか、俺と共に王国を出るかの選択を彼女に委ねたのは彼女の意思で未来を選んで欲しいという俺の偽らざる本心があるからだ。まぁ、この最後のは強引に事を進めて、飛鳥嬢から恨みを買うのが面倒だというのもある。

しかし、これまで長い間親しい関係を築いていた4人から直接命を狙われたことで飛鳥嬢が受けた衝撃は俺の予想よりも大きかった。致死力のある魔術が迫るという命の危機が間近に迫ってもまともな判断ができないほど彼女は狼狽していた。

その状況下であっても、飛鳥嬢は自身の答えをなんとか言葉にしてくれようとしていたのだが、空気を読まないアリシア王女と王女の下僕となった魔導師(笑)のメガネが飛鳥嬢の邪魔をした。メガネが【火魔術】を内包した【合成魔術】を仮にも地下の密室であるあの場所で使ってきたときは呆れ果てたが、それを利用して、多少ダメージ受けたが、俺は庇った飛鳥嬢と共にその場からすんなり離脱することに成功。

当初の計画通り、予め用意していたアリシア王女達を足止めする”シリアスさんを殺すコントトラップ”を発動。やはり、金だらいはトラップの鉄板である。

それから、たっぷりの血糊を内部に仕込んだ俺と飛鳥嬢2人分のダミー人形を瓦礫の下敷きにして、魔改造牢屋の天井を崩壊。俺達は隠し通路を使って王城から遂に脱出を果たした。この脱出のときに飛鳥嬢はまだショックから立ち直れていなかったので、俺は豊満な彼女の感触を背中に感じつつ、飛鳥嬢をおぶって隠し通路を駆け抜けた。

そして、隠し通路出口から少し離れた場所に雨風を凌ぐために予め【土魔術】の【石工ストーンクラフト】で作っていたバストイレ別付4LDKの仮拠点に居を移して今に至る。



『それで、ご主人よ。あの娘を連れ込んだ弁解は以上かのう?』

メイド服に身を包んだ銀髪金眼、褐色肌の幼女が正座をしている俺を両腕を組んで睨んでいる。その様子は迫力よりも可愛らしさが勝るため、思わずその頭を撫でて愛でたくなるが、今はお説教中で怒られるだけなので断念した。

目の前の彼女の両耳は人のそれより尖っており、頭の両眉よりも上の部分には立派な角が生えている。また、その胸はその小柄な体に不釣り合いなほど発育していて豊かである。そして爬虫類と思しき尻尾が可愛らしく生えている。

いわずもがな、この子は闇黒魔竜クロノエクソス、クロエの生まれ変わりである。

あの卵から孵化して、肉体がある程度安定してから、クロエにはこの仮拠点を建築後にここの管理と救出してから気を失った飛鳥嬢の世話をお願いしていたのである。

既にオディオ王城から脱出して2日目の朝。昨日は城下町と王城で脱出前の最後の仕上げを丸1日行った。今頃王城はまず間違いなく地獄となっている。その事態を知ったら、王城には誰も近寄りたくなくなることは必至。

慰謝料も貰ったから、俺はもう金輪際あの城に用はない。頼まれても近寄るものか。そして、深夜に仮拠点に戻って気絶するように眠りに就いた俺が目を覚ましたら、王城と城下町の件は事前に説明していたが、事後承諾の形で飛鳥嬢を連れ込んだ俺にクロエはプンプン状態なのである。

「ああ、結果は伴わなかったけれども、彼女は俺が冤罪で投獄された時に俺を釈放するために尽力してくれた。俺共々、オディオ王族に命を狙われて、彼女に生きるか死ぬかの選択を提示したのだが、彼女の答えを言う前に勇者(笑)達が殺しに来たので、彼女を助けてここに連れて来た。すまん。クロエには手間をかけた」

クロエの目を見て俺は答えると、彼女はため息を吐いて組んだ腕を解き、俺の頭を抱き寄せた。

「クロエ??」

「あの娘の世話についてを我は言っているのではない。軽微とはいえ、ご主人が怪我をしたときは心の臓が止まるかと思ったぞ。他の人族よりもご主人は頑丈になったかもしれぬが無理はしてくれるな」

戸惑う俺にクロエは心の底から安堵した声音でそう告げた。

「ああ、気をつけるよ」

「うむ……」

「失礼します。如月です」

不意にノックがして、これから呼びに行こうかと思っていた飛鳥嬢が入室許可を求めてきた。

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