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~幕間1~
第15話 俺がこの世界で生きていくことを決めたことについての件
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「助けていただいたのとこの服、ありがとうございました」
そう言って、目の前の少女、如月飛鳥は礼儀正しく頭を下げた。今の彼女は普段のポニーテールではなく、下ろしているロング。また、彼女が着ているオディオ王国女性騎士向けの制服ではなく、クロエ手作りの白いワンピースだ。このメイドラ○ン、ものすごく優秀なのである。ワンピースの素材は俺が城下町の店で買ってきたものだ。
「礼には及ばない。こっちとしても打算と多少の下心があったからな。それで話とは今後のことでいいかな?」
俺の返答に飛鳥嬢はきょとんとして、頷いた。
『ご主人、既に朝餉の用意はできているから、話合いの前に朝餉にしよう。』
「そうだな。如月さんも話し合いの前に朝食するけれども、いいかな? それと、彼女も同席するけどいい?」
「はい。ご相伴にあずからせていただきます。お世話になっている身ですので、その方の同席について異論はありません」
「ありがとう」
「いえ」
飛鳥嬢の返答を聞いてすぐにクロエはキッチンに下がり、俺と飛鳥嬢は言葉を交わしつつテーブルに座った。
■
『今日の朝餉の献立はご飯に豆腐の味噌汁、卵焼き、魚が用意できなかった故、野菜炒めじゃ』
クロエがドヤ顔で朝食の配膳しくれた。ザ・和食の定番の焼き魚ではなく、野菜炒めなのは海や川がない土地柄によるもので仕方がない。食材はご飯と豆腐、味噌、出汁、調味料各種は俺が食糧として買っていたもの。卵と野菜炒めの肉と野菜は城下町で購入したものだ。
「『「いただきます」』」
どの料理も見た目は勿論、味も文句のつけようのないできばえで、気がつけば俺はおかわりをしていた。
「和食……」
こっちの世界に来てから洋食オンリーだった飛鳥嬢は涙を浮かべて堪能していた。
「「ごちそうさまでした」」
『お粗末さまでした。我は後片付けをするから、ご主人とアスカは話合いをしてたもう』
朝食を堪能した俺達にクロエは緑茶を淹れた湯のみをそれぞれ提供して、食器を重ねてキッチンにさがった。
つくづくできたメイドさんである。
■
「ふう、さて、大分間が空いてしまったけれども、あのときの君の答えを教えてもらっていいかな?」
緑茶で一服した俺は同じく落ち着いた飛鳥嬢に聞きそびれた二者択一の答え、幼馴染達の手で生きるのを諦めるのか、抗って生き続けるのかを問うた。
「はい……。私は、生きようと思います。たとえ、【魔術】が使えないから無能と蔑まれてみんなに見限られて、たとえ、元の世界に戻れなくても、私は私だからできることをこの世界で見つけたいです……」
「……そうか」
絞り出すように落ち込んだ声で答えを告げた彼女にそう答え、俺は湯のみの中のお茶を一口飲んだ。
「俺は現状、君に指図するつもりはない。できるのは情報と選択肢の提示くらいだ。だから、運命共同体として俺と一緒に行くか、それとも自分の道を進むかは君が自分で考え、自分で選ぶといい。ただ、別の道を行く場合は今度あったとき、俺は君の味方ではないことを忘れないでほしい」
この世界の常識で言えば、飛鳥嬢は既に成人扱いされる年齢。彼女はあの4人と違いきちんと自分で考えることができるから、たとえ俺なんかがいなくとも大丈夫だろう。性格・容姿ともに俺好みの美少女ではあるが、無理矢理ものにするのは俺の趣味ではないので却下だ。
「……わかりました」
飛鳥嬢は納得して頷いた。
「では今後の方針の話だけれども、その前に情報の共有をしよう。これから話すことは俺が独自にあの王城で調べたことで、危ない橋も渡ったことだから信憑性は高い。多分強いショックを受ける内容だから、心して聴いてほしい」
俺の言葉に飛鳥嬢が頷いたのを確認して俺は話を続ける。
「まず前提として、俺は解析系のスキルを持っている。周囲に教えていない理由は信用できなかったからだ。そのスキルで俺達が召喚されたときに使われた魔方陣を解析した」
俺は愛用のMyPhoneで撮影した初めにこの世界にいた場所にあった魔方陣の写真を飛鳥嬢に見せる。
「解析してわかったことはあの魔方陣は起動するのに多量の魔力を必要とすること。ランダムに別世界の存在で、適性因子をもつ集団をこの世界に喚び出すこと。喚び出した存在をこの世界の存在として固定する代償として喚び出した存在の元の世界での存在記録を抹消すること。特に最後の内容は魔方陣のここの部分に組み込まれていた」
俺はそう告げて、最大化した魔方陣の写真の該当部分を指差した。
「つまり……」
「俺達は元の世界に奇跡的に戻れても、既に存在自体がなかったことにされているということになる。もっと踏み込んで言えば、元の世界というのがどの世界を指すのか、目印を根本から念入りに消されてわからなくさせられている」
俺の言葉に飛鳥嬢は驚きで目を見開いた。
「バタフライ効果って知っているかい?」
「はい。力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とはその後の系の状態が大きく異なってしまうという現象ですよね」
「原義はその通りで、この話に合わせて大雑把に言うと、俺達が存在した世界はわずかな選択肢が異なる無限に近い数の並行世界の存在が考えられる。元の世界に帰るというのは、砂漠の中で砂金1粒を探す作業の様なものなのだけれども、さっき言った魔方陣の最後の部分の所為で、元の世界を特定するにはその無限にある世界の中から目印なしで元の世界1つを見つけ出さなければならない。砂金1粒すら砂粒に変えられてしまっている状態だ」
「逆に私達の存在が消されている世界を見つければ……」
「それは『悪魔の証明』をすることになるから実質不可能だ。俺達の存在が消されている世界もどれだけあることやら……そもそも、俺達は元の世界がどの選択肢で成り立っていたものか、その選択自体を知る手段もないけれども、最早元の世界を知る術すらない。徒労と無為に時間を過ごして一生を終えるよりも、俺はこの世界で平穏豊かに生きていくことを選ぶよ」
俺の告げた元の世界に帰れない事実に飛鳥嬢はショックを受けたようだが、俺の選択には理解をしてくれたようだった。
「さて、如月飛鳥、君はどうする? 俺とこの世界で生きるのを選ぶのか、独力でこの世界で生きるのか、それとも元の世界に戻る方法を探すのか」
俺は彼女に選択肢を提示した。
そう言って、目の前の少女、如月飛鳥は礼儀正しく頭を下げた。今の彼女は普段のポニーテールではなく、下ろしているロング。また、彼女が着ているオディオ王国女性騎士向けの制服ではなく、クロエ手作りの白いワンピースだ。このメイドラ○ン、ものすごく優秀なのである。ワンピースの素材は俺が城下町の店で買ってきたものだ。
「礼には及ばない。こっちとしても打算と多少の下心があったからな。それで話とは今後のことでいいかな?」
俺の返答に飛鳥嬢はきょとんとして、頷いた。
『ご主人、既に朝餉の用意はできているから、話合いの前に朝餉にしよう。』
「そうだな。如月さんも話し合いの前に朝食するけれども、いいかな? それと、彼女も同席するけどいい?」
「はい。ご相伴にあずからせていただきます。お世話になっている身ですので、その方の同席について異論はありません」
「ありがとう」
「いえ」
飛鳥嬢の返答を聞いてすぐにクロエはキッチンに下がり、俺と飛鳥嬢は言葉を交わしつつテーブルに座った。
■
『今日の朝餉の献立はご飯に豆腐の味噌汁、卵焼き、魚が用意できなかった故、野菜炒めじゃ』
クロエがドヤ顔で朝食の配膳しくれた。ザ・和食の定番の焼き魚ではなく、野菜炒めなのは海や川がない土地柄によるもので仕方がない。食材はご飯と豆腐、味噌、出汁、調味料各種は俺が食糧として買っていたもの。卵と野菜炒めの肉と野菜は城下町で購入したものだ。
「『「いただきます」』」
どの料理も見た目は勿論、味も文句のつけようのないできばえで、気がつけば俺はおかわりをしていた。
「和食……」
こっちの世界に来てから洋食オンリーだった飛鳥嬢は涙を浮かべて堪能していた。
「「ごちそうさまでした」」
『お粗末さまでした。我は後片付けをするから、ご主人とアスカは話合いをしてたもう』
朝食を堪能した俺達にクロエは緑茶を淹れた湯のみをそれぞれ提供して、食器を重ねてキッチンにさがった。
つくづくできたメイドさんである。
■
「ふう、さて、大分間が空いてしまったけれども、あのときの君の答えを教えてもらっていいかな?」
緑茶で一服した俺は同じく落ち着いた飛鳥嬢に聞きそびれた二者択一の答え、幼馴染達の手で生きるのを諦めるのか、抗って生き続けるのかを問うた。
「はい……。私は、生きようと思います。たとえ、【魔術】が使えないから無能と蔑まれてみんなに見限られて、たとえ、元の世界に戻れなくても、私は私だからできることをこの世界で見つけたいです……」
「……そうか」
絞り出すように落ち込んだ声で答えを告げた彼女にそう答え、俺は湯のみの中のお茶を一口飲んだ。
「俺は現状、君に指図するつもりはない。できるのは情報と選択肢の提示くらいだ。だから、運命共同体として俺と一緒に行くか、それとも自分の道を進むかは君が自分で考え、自分で選ぶといい。ただ、別の道を行く場合は今度あったとき、俺は君の味方ではないことを忘れないでほしい」
この世界の常識で言えば、飛鳥嬢は既に成人扱いされる年齢。彼女はあの4人と違いきちんと自分で考えることができるから、たとえ俺なんかがいなくとも大丈夫だろう。性格・容姿ともに俺好みの美少女ではあるが、無理矢理ものにするのは俺の趣味ではないので却下だ。
「……わかりました」
飛鳥嬢は納得して頷いた。
「では今後の方針の話だけれども、その前に情報の共有をしよう。これから話すことは俺が独自にあの王城で調べたことで、危ない橋も渡ったことだから信憑性は高い。多分強いショックを受ける内容だから、心して聴いてほしい」
俺の言葉に飛鳥嬢が頷いたのを確認して俺は話を続ける。
「まず前提として、俺は解析系のスキルを持っている。周囲に教えていない理由は信用できなかったからだ。そのスキルで俺達が召喚されたときに使われた魔方陣を解析した」
俺は愛用のMyPhoneで撮影した初めにこの世界にいた場所にあった魔方陣の写真を飛鳥嬢に見せる。
「解析してわかったことはあの魔方陣は起動するのに多量の魔力を必要とすること。ランダムに別世界の存在で、適性因子をもつ集団をこの世界に喚び出すこと。喚び出した存在をこの世界の存在として固定する代償として喚び出した存在の元の世界での存在記録を抹消すること。特に最後の内容は魔方陣のここの部分に組み込まれていた」
俺はそう告げて、最大化した魔方陣の写真の該当部分を指差した。
「つまり……」
「俺達は元の世界に奇跡的に戻れても、既に存在自体がなかったことにされているということになる。もっと踏み込んで言えば、元の世界というのがどの世界を指すのか、目印を根本から念入りに消されてわからなくさせられている」
俺の言葉に飛鳥嬢は驚きで目を見開いた。
「バタフライ効果って知っているかい?」
「はい。力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とはその後の系の状態が大きく異なってしまうという現象ですよね」
「原義はその通りで、この話に合わせて大雑把に言うと、俺達が存在した世界はわずかな選択肢が異なる無限に近い数の並行世界の存在が考えられる。元の世界に帰るというのは、砂漠の中で砂金1粒を探す作業の様なものなのだけれども、さっき言った魔方陣の最後の部分の所為で、元の世界を特定するにはその無限にある世界の中から目印なしで元の世界1つを見つけ出さなければならない。砂金1粒すら砂粒に変えられてしまっている状態だ」
「逆に私達の存在が消されている世界を見つければ……」
「それは『悪魔の証明』をすることになるから実質不可能だ。俺達の存在が消されている世界もどれだけあることやら……そもそも、俺達は元の世界がどの選択肢で成り立っていたものか、その選択自体を知る手段もないけれども、最早元の世界を知る術すらない。徒労と無為に時間を過ごして一生を終えるよりも、俺はこの世界で平穏豊かに生きていくことを選ぶよ」
俺の告げた元の世界に帰れない事実に飛鳥嬢はショックを受けたようだが、俺の選択には理解をしてくれたようだった。
「さて、如月飛鳥、君はどうする? 俺とこの世界で生きるのを選ぶのか、独力でこの世界で生きるのか、それとも元の世界に戻る方法を探すのか」
俺は彼女に選択肢を提示した。
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