とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

文字の大きさ
46 / 108
第2章 自由連合同盟都市国家メルキオール 首都メルキオール編

第46話 豚鬼殺し(オークスレイヤー)? いいえ、豚鬼虐殺者(オークジェノサイダー)ですが、なにか?の件

しおりを挟む
「ケホッ、なっ!……んで?」

プスプスと煙を上げながら立派な黒こげアフロになったキリオが黒い煙を吐いて倒れた。シリアスさんは逃げ出した!

豚鬼オークの中に魔術が使える特殊個体がいたのか? 

いやいや、キリオをったのは、いや、【手加減】しているから奴はまだ生きている。気絶しただけで死んではいない。お分かりいただけたようにキリオをやったのは俺だ。

このキリオ本人は隠していたつもりなのだろうが、俺のスキル【マップ】の前ではバレバレ。出会ってからずっと、そこかしこにいる豚鬼オーク共とキリオは同じ敵対表示の赤マークだったのだ。

俺はこのことにすぐに気づいて、即座に一計を案じ、”コール”でヘリオスギルド総長、バルガスのとっつぁん、ミーネさん、飛鳥、クロエに伝えた。

このキリオの目標はバルガスのとっつぁん(の命)であるのは俺が完治させてからしきりに熱い目線を送っていたからすぐに分かった。

そして、キリオが真っ黒であると完全な確証を得たのは実は先程だ。キリオは4人パーティーと言ったのに、目の前には女性冒険者が4人……明らかに数が合わないではないか。

更に、パーティーリーダーの女騎士がキリオを完全に視界に入れているのに無反応だったからだ。キリオが言うようにパーティーリーダーの彼女がキリオを送り出したと言うのなら、キリオを見て、喜色を浮かべるか、なにかしらの反応をするはずなのに無反応というのは不自然極まりない。

もっとも、そのパーティーリーダーが反応する代わりに別のパーティーメンバー、女魔術師がキリオを見て、わずかだが、反応していたのを俺は見逃していない。かなりの高確率で、キリオとこの女魔術師にはつながりがある。

それはそれとして、馬車から飛び降りて豚鬼オークに襲われているパーティーを救出すべく着地したバルガスのとっつぁんのがら空きで隙だらけな背中を見て、キリオは絶好の機会と見たのか、ご丁寧に致死毒を塗った短剣で襲い掛かろうとした。

まぁ、一見がら空きに見えるとっつぁんの背中は俺がとっつぁんにお願いしたである。

キリオは自分が襲う側だから、とは夢にも思っていなかったのだろう。南無。

結果、まんまとひっかかったキリオを俺が黒焦げアフロの刑に処したのだ。俺はただキリオをコケにした訳ではない。キリオコイツにはいろいろ吐いてもらわなければならないことは山の様にあるのだ。殺すなんてとんでもない。俺の本日の安眠と快眠、精神の平穏を奪う片棒担いだ報いは受けて貰う。

キリオの両手から零れ落ちた取り扱い注意の致死毒を塗られた短剣2振りを俺が【空間収納】に回収し、流れる様なこなれた手つきでクロエが喜々としてアフロキリオが縄抜けできないように関節を縛り上げて、自殺防止の猿轡を噛ませて、装甲馬車の荷台に転がした。

『一丁上がりなのじゃ!』

一仕事をやりきったとてもいい笑顔でそう言ったクロエは文字通り、竜の翼を出して空を飛んで冒険者パーティーの救助に向かった。

その間にバルガスのとっつぁんと飛鳥が遂に疲労で限界を迎えて動けなくなった女冒険者達と合流を終え。ケイロンは淡々と的確な弓矢による狙撃でオークを撃破して肉を稼いでくれている。

「ふっ、はっ!」

飛鳥は【剣術】スキル、【居合い斬り】から【唐竹割】に派生する【十字斬】で豚鬼オークの正中線と心肺を切り裂き、1体ずつ確実に仕留めている。

「グォウッ!」

飛鳥の攻撃の隙を突いて1体の豚鬼オークが背後から襲いかかろうとするが、

「ヤラセマセン!」

ケイロンの放った矢で沈黙する。

「ギルド長?」

「おう! 生きてるな? こいつ飲んで動けるようになったら、お前等はあの馬車へ行け! ここは俺達が抑える!」

そう言ってバルガスのとっつぁんは俺が渡したポーション瓶1ダース入れた箱をパーティーリーダーの女騎士の足元に滑らせて渡し、次々に襲い掛かってくる豚鬼オーク達の攻撃を手にした大槍で受け流しつつ、その攻撃の勢いを利用する【槍術】スキル【風車返し】で返り討ちにしていく。

『ぼさっとするでない!【領域回復エリアルヒール】! これで動けるであろう? きりきり馬車へ移動するのじゃ!』

クロエが動きを止めて呆けていた冒険者パーティーを叱咤して、【領域回復エリアルヒール】で完治はしないまでも動けるレベルまで治癒と疲労回復を行った。

ほどなくして、動けなかった冒険者パーティーは自分の足で馬車に全員乗車した。

俺は周囲に豚鬼オーク共の増援おかわりや他の魔物が近寄ってきていないか【索敵】をしつつ、飛鳥達味方には【攻撃力上昇】などの補助魔術バフ豚鬼オーク共には阻害魔術デバフをかけて戦況を有利に進めた。

「ぶもぉ! ぶもおおおおおおおおお!」

1体一際体格の大きい豚鬼オークが咆哮を上げると、半数近くの27匹まで数を減らしていた豚鬼オーク達は退却を始めた。だが、俺は奴らを生かして返すつもりは……ない。

「バルガスのとっつぁんと飛鳥は巻き添えになるかもしれないから下がってくれ! クロエは奴等を。闇黒魔竜の力を見せてやれ!!」

『任せよご主人! その期待に見事応えてみせよう! とっておきの【竜魔術】の1つを使うでの。飛鳥とバルガスは急ぎ我の後方に下がるのじゃ』

俺は豚鬼オークが逃走を察知してすぐに、この戦いの幕を下ろすよう、クロエに指示を出した。

「バルガスさん、急いでクロエの後ろまで退きますよ!」

「お? おお!」

飛鳥に追従して一番離れていたバルガスのとっつぁんは急いで駆け出した。

「マスター、ワタシニモシジヲ」

ケイロンが行動指示を仰いできた。

「……念のため、【障壁シールド】を張っておいてくれ」

「了解シマシタ」

ケイロンは駆け足で飛鳥とバルガスのとっつぁんが戻ってきたのを確認すると【障壁シールド】を張ってくれた。焚きつけた手前、クロエの【竜魔術】の影響で俺達がダメージを受けるのはしゃれにならないので念のため防御を固める。その間、クロエは【竜魔術】固有の詠唱を続けている。

『…壮麗かつ豪放なるモノを前に蛮勇を奮う者達よ、其の力の片鱗を目の当たりにし、己が浅慮を悔恨せよ!』

あ、これは俺が知っている豚鬼オーク相手だと確実にオーバーキルするヤツだ。射線上には……豚鬼オーク以外なにもないから、まぁ、いいか。

『【メガ・フレア】!』

クロエが前に突き出した両腕を軸に大きく広げた竜の翼の幅を持つ極太レーザーを思わせる青白い爆炎を伴った熱線が放たれた。その熱線は遁走する豚鬼オーク共を一匹残らず飲み込んで……肉片も残さずに蒸発させた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...