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~幕間2~
第57話 うちに来たメイドさんのケアとメルキオールの食事状の一部の件
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それはメイド兼魔術師のベルリアーナ・メルクリウスが俺達のパーティーに正式加入し、豚鬼事件の報酬としてメルキオールの西地区で屋敷をもらい、道場とトイレなどの改築が完了して居を移した当日のことだった。
『ご主人、大変じゃ!大変じゃ!』
なにやらクロエが騒いでいるな。
俺は私室での荷解きが終わり、今は一仕事終えて防音を解除している工房の錬金術部屋にいる。
そこで俺は錬金術師ギルドで請け負っているポーション作製の仕事をしていた。
時刻は丁度夕食前。
この屋敷の維持管理のための使用人達はまだいない。明日の昼に到着する。
そして、今日の夕食当番は俺だ。
ノックがあったので、俺は入室許可をすると、クロエがベルさ……ベルの手を引いて連れてきた。ベルの顔には困惑が浮かんでいる。
「なにが大変なんだ?」
状況が全くわからない俺は元凶であるクロエに問いただすことにした。
『我が言葉を並べるよりも、ご主人が実際に視た方が早い。メイド長の、特に髪の毛を【鑑定】してたもう!』
クロエはベルのことをメイド長と呼んでいるのだが、なにを言い出すのかと思ったが、
「ああ、ベル、【鑑定】を使うが構わないか?」
「はい。私にはなにをクロエが言っているのか分からないのでお願いします」
とりあえず言われた様に【鑑定】でベルを視る前に本人に使用許可を得る。
いかに本人が俺に気を許していても、許可なくしたら気持ちのいいものではないだろう。
許可が下りたので、俺はベルを【鑑定】した。
そして、俺はクロエが言いたいことをすぐに理解した。
「ベルには不躾な質問で悪いのだが、どのくらいの頻度で入浴、湯浴みをして、その髪の毛の手入れはどのようにしているんだ? 上流階級の人たちも同じ方法で手入れをしているのか?」
認識の齟齬がどの程度のものか確認するため、俺はベルに訊いてみた。クロエは静観している。
「はい、入浴は一般的に2~3日に1回で、錬金術師ギルドもしくは薬品ギルドが販売している石鹸を買える者は石鹸を泡立ててそれで頭と身体を洗います。あ、品質では錬金術師ギルドの石鹸が上です。その後、水またはお湯で泡を洗い流して、乾いたタオルで水分を拭き取ります。裕福なご主人様の仰る上流階級の者はこの方法で洗浄しています。石鹸を買えないものは水で汚れを落として拭き取るだけです」
ベルは淀みなく丁寧に答えてくれた。
やはり、俺の予想に近い答えだった。
まぁ、地球の中世ヨーロッパは入浴の習慣が廃れていて不衛生を誘発していた歴史がある。
この世界は頻度は現代日本より少ないとはいえ、それに比べれば中世ヨーロッパに近いこの異世界はいくらかマシだ。
しかし、【魔術】という便利なものがあるのに頻度が低いのが謎だ。
錬金術師ギルドで販売している石鹸はミーネさんとジェシカさんが作製しているのはオリーブ油と海藻灰で作られた硬い化粧石鹸。
地球の歴史では12世紀ごろから大量生産されていた石鹸とほぼ同じもので香料は使われていなかったはずだ。
薬品ギルドで販売している石鹸は知らないが、ベルが言うように質がミーネさん達が作ったものより低いなら、勘定にいれなくていいだろう。」
「クロエ、飛鳥と一緒にベルを連れてこの屋敷の浴室の機能点検をしてこい。一先ず、浴槽とシャワーきちんと動作するか確認して、ベルはこれとこれと、これ、それとこれを使って、3人で入浴してきてくれ。使い方はクロエと飛鳥に訊いて、肌に合わなかったらすぐに使うのを止めて、匂いも気に入らなかったらすぐに言ってくれ。着替えはクロエ、サイズフリーのあれを【共有収納】に入れてあるから、ベルの分はそこから出してあげてくれ。あと、今日は俺が食事当番だから、俺は夕食の後で風呂に入るよ」
俺はそう言って、異世界電子通販を起動して、ゼラニウムの香料が使われたボディソープとシャンプー、リンス、ダブル洗顔不要のクレンジングオイル、ついでにそれらを入れる籠を購入した。
梱包から籠を取り出し、購入した物を全て入れてベルに手渡した。
「え?え?」
『わかったのじゃ、ほれ行くぞメイド長。説明はあとじゃ。”コール 飛鳥”。飛鳥、今どこじゃ? ふむ、それは好都合じゃ。ご主人からメイド長を連れて先に風呂に入れとお達しじゃ』
そう言って、クロエは困惑しているベルの手を引っ張って、ギルドカードの”コール”を使って飛鳥に連絡をして錬金術部屋を出ていった。
さてさて、俺は厨房に行きますか。
今日の夕食は以前つくり置きしておいて寝かせていたビーフシチューをメインにしよう。パンもフランスパンがあったから、スライスして焼くか。サラダも作らなくてはな。
俺は後片付けを終えて、錬金術室のある工房を後にした。
■
クロエ達の入浴シーンを期待していた紳士諸君には悪いが、そのシーンはカットだ。
平行世界が生まれれば、そこで挿入されるかもしれないが……って俺はなにを言っているんだか。
さて、女性陣は全員入浴を済ませて、全員浴衣姿で食事中である。
飛鳥も普段はポニーテイルにしているが、今は下ろしているので、違った印象を受けて別人に見えるから不思議だ。
『はぐはぐ……』
クロエは安定の食いしん坊を発動している。
「……」
そして、サラサラの白い髪の毛のベルは湯上りで頬が上気して、艶やかな色気がある。
普段はキリッとしているが、今はどこか夢見心地の中にいる様な普段の姿と乖離している珍しいという表現が当てはまるポーっとした様子だ。
上品に、シチューを口に運び、時折自分の髪の毛をみつめていた。
ベルの髪の毛と肌は実は彼女の肌に合っていなかった石鹸で洗っていたことでダメージを受けて痛んでいたのが、さっき使った【鑑定】で分かった。
俺が渡したものを使ったことで、完全ではないがキューティクルも回復し始めている。
このまま問題がなければ渡したものを使い続けることで、傷んだ髪も治るだろう。
「ユウさん、ワカメがあったのでしたら、明日の朝はお味噌汁がいいでしょうか?」
明日の朝食担当の飛鳥が胡麻ドレッシングがかかった海藻のサラダを美味しそうに口に運びながら言う。
「お願いできるかな。味噌はメルキオールの市場で探しているけれども、まだ見つかっていないから、手持ちのもので頼むよ」
「わかりました。お豆腐も試作品はまだきちんと固まっていませんので、【共有収納】の中のものを使いますね」
そう言って飛鳥は笑みを浮かべた。
彼女はメルキオールの市場で見つけた大豆とにがりで豆腐を自作している。実家で祖母から教わって作っていたそうだ。種類も木綿と絹を試作している。
どちらも現在のJ○には珍しく、実際に作っていたそうで手馴れていたため、試作の際、俺とクロエは手伝いに専念していた。
俺が新しく創ったスキル【共有収納】は【空間収納】の劣化版共言えるスキルだ。
スキル所有者は任意で“共有収納"に入っているアイテムを取り出せる。
個別に【空間収納】を【複写】して【譲渡】しようとしたが、【複写】の段階でエラーになったので代替案として考えていた【共有収納】を創った。
また、劣化【空間収納】と言える魔導具のアイテムボックスを飛鳥もクロエも持っているから【空間収納】はあまり必要ないとも言われてしまった。
専ら食材が【共有収納】の大部分を占めているが、ソート機能で整理されているので、詰め込むだけと、とても便利だ。
他に【共有収納】に入っているのはケイロンの矢や【投擲】用の使い捨て武器。みんなが作ったポーション各種の消耗品などだ。
それから頼まれて【異世界電子通販】で購入した菓子類や飲料、衛生用品に衣類といった物も俺が補充している。
飛鳥達にはアイテムボックスに空きができて助かると喜ばれた。
「「『「ごちそうさまでした」』」」
夕食のビーフシチューは好評で終了。
メルキオールにはブイヨン、コンソメがあって、ブイヤベースも屋台で売っていた。
オディオ王国とは違ってそれらが既にあった。ブイヤベースは普通に美味しかった。
もっとも作る手間は変わらない。
野菜や肉は完全無農薬で、含まれる魔力が味を底上げしているから、こっちの方が食材の品質が上と思える。
また、それらと異世界電子通販で某社の固形ルー使っている俺達の料理の味は、レシピを違えない限り失敗しない。
メルキオールがオディオ王国やカスパル帝国に狙われていた理由が改めてわかった。
『ご主人、大変じゃ!大変じゃ!』
なにやらクロエが騒いでいるな。
俺は私室での荷解きが終わり、今は一仕事終えて防音を解除している工房の錬金術部屋にいる。
そこで俺は錬金術師ギルドで請け負っているポーション作製の仕事をしていた。
時刻は丁度夕食前。
この屋敷の維持管理のための使用人達はまだいない。明日の昼に到着する。
そして、今日の夕食当番は俺だ。
ノックがあったので、俺は入室許可をすると、クロエがベルさ……ベルの手を引いて連れてきた。ベルの顔には困惑が浮かんでいる。
「なにが大変なんだ?」
状況が全くわからない俺は元凶であるクロエに問いただすことにした。
『我が言葉を並べるよりも、ご主人が実際に視た方が早い。メイド長の、特に髪の毛を【鑑定】してたもう!』
クロエはベルのことをメイド長と呼んでいるのだが、なにを言い出すのかと思ったが、
「ああ、ベル、【鑑定】を使うが構わないか?」
「はい。私にはなにをクロエが言っているのか分からないのでお願いします」
とりあえず言われた様に【鑑定】でベルを視る前に本人に使用許可を得る。
いかに本人が俺に気を許していても、許可なくしたら気持ちのいいものではないだろう。
許可が下りたので、俺はベルを【鑑定】した。
そして、俺はクロエが言いたいことをすぐに理解した。
「ベルには不躾な質問で悪いのだが、どのくらいの頻度で入浴、湯浴みをして、その髪の毛の手入れはどのようにしているんだ? 上流階級の人たちも同じ方法で手入れをしているのか?」
認識の齟齬がどの程度のものか確認するため、俺はベルに訊いてみた。クロエは静観している。
「はい、入浴は一般的に2~3日に1回で、錬金術師ギルドもしくは薬品ギルドが販売している石鹸を買える者は石鹸を泡立ててそれで頭と身体を洗います。あ、品質では錬金術師ギルドの石鹸が上です。その後、水またはお湯で泡を洗い流して、乾いたタオルで水分を拭き取ります。裕福なご主人様の仰る上流階級の者はこの方法で洗浄しています。石鹸を買えないものは水で汚れを落として拭き取るだけです」
ベルは淀みなく丁寧に答えてくれた。
やはり、俺の予想に近い答えだった。
まぁ、地球の中世ヨーロッパは入浴の習慣が廃れていて不衛生を誘発していた歴史がある。
この世界は頻度は現代日本より少ないとはいえ、それに比べれば中世ヨーロッパに近いこの異世界はいくらかマシだ。
しかし、【魔術】という便利なものがあるのに頻度が低いのが謎だ。
錬金術師ギルドで販売している石鹸はミーネさんとジェシカさんが作製しているのはオリーブ油と海藻灰で作られた硬い化粧石鹸。
地球の歴史では12世紀ごろから大量生産されていた石鹸とほぼ同じもので香料は使われていなかったはずだ。
薬品ギルドで販売している石鹸は知らないが、ベルが言うように質がミーネさん達が作ったものより低いなら、勘定にいれなくていいだろう。」
「クロエ、飛鳥と一緒にベルを連れてこの屋敷の浴室の機能点検をしてこい。一先ず、浴槽とシャワーきちんと動作するか確認して、ベルはこれとこれと、これ、それとこれを使って、3人で入浴してきてくれ。使い方はクロエと飛鳥に訊いて、肌に合わなかったらすぐに使うのを止めて、匂いも気に入らなかったらすぐに言ってくれ。着替えはクロエ、サイズフリーのあれを【共有収納】に入れてあるから、ベルの分はそこから出してあげてくれ。あと、今日は俺が食事当番だから、俺は夕食の後で風呂に入るよ」
俺はそう言って、異世界電子通販を起動して、ゼラニウムの香料が使われたボディソープとシャンプー、リンス、ダブル洗顔不要のクレンジングオイル、ついでにそれらを入れる籠を購入した。
梱包から籠を取り出し、購入した物を全て入れてベルに手渡した。
「え?え?」
『わかったのじゃ、ほれ行くぞメイド長。説明はあとじゃ。”コール 飛鳥”。飛鳥、今どこじゃ? ふむ、それは好都合じゃ。ご主人からメイド長を連れて先に風呂に入れとお達しじゃ』
そう言って、クロエは困惑しているベルの手を引っ張って、ギルドカードの”コール”を使って飛鳥に連絡をして錬金術部屋を出ていった。
さてさて、俺は厨房に行きますか。
今日の夕食は以前つくり置きしておいて寝かせていたビーフシチューをメインにしよう。パンもフランスパンがあったから、スライスして焼くか。サラダも作らなくてはな。
俺は後片付けを終えて、錬金術室のある工房を後にした。
■
クロエ達の入浴シーンを期待していた紳士諸君には悪いが、そのシーンはカットだ。
平行世界が生まれれば、そこで挿入されるかもしれないが……って俺はなにを言っているんだか。
さて、女性陣は全員入浴を済ませて、全員浴衣姿で食事中である。
飛鳥も普段はポニーテイルにしているが、今は下ろしているので、違った印象を受けて別人に見えるから不思議だ。
『はぐはぐ……』
クロエは安定の食いしん坊を発動している。
「……」
そして、サラサラの白い髪の毛のベルは湯上りで頬が上気して、艶やかな色気がある。
普段はキリッとしているが、今はどこか夢見心地の中にいる様な普段の姿と乖離している珍しいという表現が当てはまるポーっとした様子だ。
上品に、シチューを口に運び、時折自分の髪の毛をみつめていた。
ベルの髪の毛と肌は実は彼女の肌に合っていなかった石鹸で洗っていたことでダメージを受けて痛んでいたのが、さっき使った【鑑定】で分かった。
俺が渡したものを使ったことで、完全ではないがキューティクルも回復し始めている。
このまま問題がなければ渡したものを使い続けることで、傷んだ髪も治るだろう。
「ユウさん、ワカメがあったのでしたら、明日の朝はお味噌汁がいいでしょうか?」
明日の朝食担当の飛鳥が胡麻ドレッシングがかかった海藻のサラダを美味しそうに口に運びながら言う。
「お願いできるかな。味噌はメルキオールの市場で探しているけれども、まだ見つかっていないから、手持ちのもので頼むよ」
「わかりました。お豆腐も試作品はまだきちんと固まっていませんので、【共有収納】の中のものを使いますね」
そう言って飛鳥は笑みを浮かべた。
彼女はメルキオールの市場で見つけた大豆とにがりで豆腐を自作している。実家で祖母から教わって作っていたそうだ。種類も木綿と絹を試作している。
どちらも現在のJ○には珍しく、実際に作っていたそうで手馴れていたため、試作の際、俺とクロエは手伝いに専念していた。
俺が新しく創ったスキル【共有収納】は【空間収納】の劣化版共言えるスキルだ。
スキル所有者は任意で“共有収納"に入っているアイテムを取り出せる。
個別に【空間収納】を【複写】して【譲渡】しようとしたが、【複写】の段階でエラーになったので代替案として考えていた【共有収納】を創った。
また、劣化【空間収納】と言える魔導具のアイテムボックスを飛鳥もクロエも持っているから【空間収納】はあまり必要ないとも言われてしまった。
専ら食材が【共有収納】の大部分を占めているが、ソート機能で整理されているので、詰め込むだけと、とても便利だ。
他に【共有収納】に入っているのはケイロンの矢や【投擲】用の使い捨て武器。みんなが作ったポーション各種の消耗品などだ。
それから頼まれて【異世界電子通販】で購入した菓子類や飲料、衛生用品に衣類といった物も俺が補充している。
飛鳥達にはアイテムボックスに空きができて助かると喜ばれた。
「「『「ごちそうさまでした」』」」
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オディオ王国とは違ってそれらが既にあった。ブイヤベースは普通に美味しかった。
もっとも作る手間は変わらない。
野菜や肉は完全無農薬で、含まれる魔力が味を底上げしているから、こっちの方が食材の品質が上と思える。
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