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~幕間2~
第60話 【生活魔術】の系統としての確立とメルキオールの衛生改革の件
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ベルのご両親との面会は恙無く進み、菓子折りとして渡した謹製どら焼きは大好評で商人ギルドのレシピ登録を確約させられた。
話題はベルと俺、飛鳥、クロエの仲に始まり、俺が作った【生活魔術】を正式に【魔術】の1系統、無属性魔術の1つとして普及させる話に及ぶ。
ベルが俺達と初めてパーティーを組んで同行したときに俺達が【生活魔術】使ったのを初めて目の当たりにしたときから、その有用性と必要性をこの両親に伝えていたそうだ。
そして、実際にベルの両親、特に俺の義母にもなる魔術師の名家の出であるベルファリスさんから物凄い勢い習得意欲で食い付かれた。
これまで、飛鳥とクロエ、ベルに【生活魔術】を覚えさせていたときは俺のスキルで【複写】して【譲渡】していたが、今後、実際に普及させるとなると規模が桁違いになるので、この方法は使えない。
しかし、俺は代替案として術式巻物という物を使って魔術を習得する方法を考えていた。
これは魔術制約書を応用したもので、1度使うと術式巻物に記載している【魔術】の術式を使用者の術式記憶領域に焼き付けて使用可能にする【譲渡】を再現した術式を組み込んでいる。
なんで今まで存在していなかったのか疑問だが、どうせ大した理由ではなさそうなので考えるのをやめた。
使用後は巻物に記載してある術式は全て消える仕様だ。
更に、別紙に術式巻物に記載してある術式を書き写しても記載している魔術を習得することができないコピーガード機能を巻物自体に多重に仕込んでいるので不正取得はほぼ不可能。
使用後の白紙巻物は再利用可能で、巻物に登録されている特定人物の魔力を巻物に流すことで消えた術式が表示されて、再び使用できる仕組みにしている。この仕組みも商人ギルドに特許として登録した。
そして、早速ベルファリスさんが術式巻物で【生活魔術】を覚え、【清潔】などを試して絶賛され、彼女の兄弟に【生活魔術】を普及させる協力をさせてほしいと懇願された。
ベルファリスさんのご兄弟は魔術ギルドに所属しているが、いろいろ問題を起こして犯罪奴隷となって魔術師ギルドから永久追放された前魔術師ギルド長と対立していた派閥に所属している。
就任が混迷している次期魔術師ギルド長に兄が就任し、兄弟と賛同者と共に醜い権力争いばかりを続ける前ギルド長の派閥を押さえ込むか、新たに別ギルドを立ち上げるかという話が上がっているそうだ。
元々ベルファリスさんの家系は魔術を生活に活かすことを代々考えていた家系ではあったものの、既存の術式では威力が強過ぎるため生活には活かせず、使用魔力量を抑える様に術式を改変すると今度は弱過ぎて使い物にならなかったり魔術を維持できないという問題が発生。研究は頓挫していたそうだ。
しかも、【消臭】や【清潔】といった発想は思いもしなかったと絶賛された。
まぁ、それもそのはず。何せ【生活魔術】の多くは元の世界の空想の産物が半分と生活家電などの機能が半分を占めているからだ。
俺達が【生活魔術】普及については関わらない、俺達の名前で普及活動を行わないことを条件にベルファリスさんの兄弟とは後日、魔術誓約書を交わすことも追加して合意した。
俺が関わらないことにこだわることを訝しまれたので、現状で既に悪目立ちしているので、これ以上妬み嫉みの源になる事柄はいらないことを告げたら納得してくれた。
続いて、ミーネさんとも話を進めている衛生環境改善、石鹸の品質向上普及とシャンプー、リンス、トリートメントなどの話に移った。
この世界の文化は【魔術】があることからか、完全ではないが中世ヨーロッパ文化に近い。
衛生に関してもその歴史は西洋のそれに近い流れを辿っている。
【魔術】が戦闘を想定して作られたものだったため【魔術】を用いてお湯を沸かすことは困難。
そのため、生活で使うお湯を沸かすのは専ら薪を用いる手間と時間がかかるため、湯船に浸かる入浴は支配階級や富裕層中心のものであるのはこの世界でも同じだった。
公衆浴場もあったがなまじ治癒の魔術が万能であったために、病原菌や微生物の存在が探究されず、目視で確認できなかったことが災いした。
張りっぱなしの湯を使い続けるという不衛生極まりない浴場が続出。
結果は言わずもがな、多くの皮膚病罹患者から死人まで出したため、完全に公衆浴場は姿を消すことになる。
貴族と富裕層の風呂が使った湯を棄てていたことを考えれば使った湯がよくないものだとわかりそうなものだが……。
話が脱線したので戻す。【魔術】という望んだ結果を魔力と引き換えに簡単にもたらす便利な存在の悪影響で、ときに生命を脅かす細菌や病原菌がこの世界にも存在しているけれども、その探究がこの世界では熱心にされていない。
それをしているのは極一部の錬金術師だけだ。
「治癒魔術万能説」が蔓延る所為で、馬糞や人糞は路上投棄と放置が平民達の間では一般的になっている。
このまま【生活魔術】を広めてもロクなことにならない。寧ろ悪化しかねない。
俺はベルファリスさんが使った後、術式巻物にある細工を施すことにした。
ベルのご両親は既に俺と飛鳥が異世界人であることを知っているので、中世ヨーロッパで不衛生と疫病がもたらした悲劇を伝えた。
MyPadに資料として保存してある関連グロ画像も2人に見せた。2人とも納得して、現状の深刻さを受け止めてくれたのでありがたい。
その後、ベルのご両親2人にシャンプーとリンス、トリートメントなどを渡した。
それらは異世界電子通販で購入したもので、ミーネさん達が研究しているものの1つの目標物ということを言い含めて渡した。
資金があれば俺の【異世界電子通販】で買えるが、際限なく受け付けるつもりはないので、数量限定であることを伝えている。
義父になるルークさんは男性がシャンプーなどを使うことに懐疑的だったが、某社のCMと加齢臭に関するレポートをベルファリスさん達に内密で見せたら、顔を青くされて感謝された。
ミーネさん達の石鹸をはじめとした衛生用品と化粧品の研究費のメリクリウス商会から支援してもらえる約束を得て、後日、ミーネさんを交えて正式な文書にすることを決めて、最後はお茶と俺が用意したお菓子で歓談し、面会は終了した。
話題はベルと俺、飛鳥、クロエの仲に始まり、俺が作った【生活魔術】を正式に【魔術】の1系統、無属性魔術の1つとして普及させる話に及ぶ。
ベルが俺達と初めてパーティーを組んで同行したときに俺達が【生活魔術】使ったのを初めて目の当たりにしたときから、その有用性と必要性をこの両親に伝えていたそうだ。
そして、実際にベルの両親、特に俺の義母にもなる魔術師の名家の出であるベルファリスさんから物凄い勢い習得意欲で食い付かれた。
これまで、飛鳥とクロエ、ベルに【生活魔術】を覚えさせていたときは俺のスキルで【複写】して【譲渡】していたが、今後、実際に普及させるとなると規模が桁違いになるので、この方法は使えない。
しかし、俺は代替案として術式巻物という物を使って魔術を習得する方法を考えていた。
これは魔術制約書を応用したもので、1度使うと術式巻物に記載している【魔術】の術式を使用者の術式記憶領域に焼き付けて使用可能にする【譲渡】を再現した術式を組み込んでいる。
なんで今まで存在していなかったのか疑問だが、どうせ大した理由ではなさそうなので考えるのをやめた。
使用後は巻物に記載してある術式は全て消える仕様だ。
更に、別紙に術式巻物に記載してある術式を書き写しても記載している魔術を習得することができないコピーガード機能を巻物自体に多重に仕込んでいるので不正取得はほぼ不可能。
使用後の白紙巻物は再利用可能で、巻物に登録されている特定人物の魔力を巻物に流すことで消えた術式が表示されて、再び使用できる仕組みにしている。この仕組みも商人ギルドに特許として登録した。
そして、早速ベルファリスさんが術式巻物で【生活魔術】を覚え、【清潔】などを試して絶賛され、彼女の兄弟に【生活魔術】を普及させる協力をさせてほしいと懇願された。
ベルファリスさんのご兄弟は魔術ギルドに所属しているが、いろいろ問題を起こして犯罪奴隷となって魔術師ギルドから永久追放された前魔術師ギルド長と対立していた派閥に所属している。
就任が混迷している次期魔術師ギルド長に兄が就任し、兄弟と賛同者と共に醜い権力争いばかりを続ける前ギルド長の派閥を押さえ込むか、新たに別ギルドを立ち上げるかという話が上がっているそうだ。
元々ベルファリスさんの家系は魔術を生活に活かすことを代々考えていた家系ではあったものの、既存の術式では威力が強過ぎるため生活には活かせず、使用魔力量を抑える様に術式を改変すると今度は弱過ぎて使い物にならなかったり魔術を維持できないという問題が発生。研究は頓挫していたそうだ。
しかも、【消臭】や【清潔】といった発想は思いもしなかったと絶賛された。
まぁ、それもそのはず。何せ【生活魔術】の多くは元の世界の空想の産物が半分と生活家電などの機能が半分を占めているからだ。
俺達が【生活魔術】普及については関わらない、俺達の名前で普及活動を行わないことを条件にベルファリスさんの兄弟とは後日、魔術誓約書を交わすことも追加して合意した。
俺が関わらないことにこだわることを訝しまれたので、現状で既に悪目立ちしているので、これ以上妬み嫉みの源になる事柄はいらないことを告げたら納得してくれた。
続いて、ミーネさんとも話を進めている衛生環境改善、石鹸の品質向上普及とシャンプー、リンス、トリートメントなどの話に移った。
この世界の文化は【魔術】があることからか、完全ではないが中世ヨーロッパ文化に近い。
衛生に関してもその歴史は西洋のそれに近い流れを辿っている。
【魔術】が戦闘を想定して作られたものだったため【魔術】を用いてお湯を沸かすことは困難。
そのため、生活で使うお湯を沸かすのは専ら薪を用いる手間と時間がかかるため、湯船に浸かる入浴は支配階級や富裕層中心のものであるのはこの世界でも同じだった。
公衆浴場もあったがなまじ治癒の魔術が万能であったために、病原菌や微生物の存在が探究されず、目視で確認できなかったことが災いした。
張りっぱなしの湯を使い続けるという不衛生極まりない浴場が続出。
結果は言わずもがな、多くの皮膚病罹患者から死人まで出したため、完全に公衆浴場は姿を消すことになる。
貴族と富裕層の風呂が使った湯を棄てていたことを考えれば使った湯がよくないものだとわかりそうなものだが……。
話が脱線したので戻す。【魔術】という望んだ結果を魔力と引き換えに簡単にもたらす便利な存在の悪影響で、ときに生命を脅かす細菌や病原菌がこの世界にも存在しているけれども、その探究がこの世界では熱心にされていない。
それをしているのは極一部の錬金術師だけだ。
「治癒魔術万能説」が蔓延る所為で、馬糞や人糞は路上投棄と放置が平民達の間では一般的になっている。
このまま【生活魔術】を広めてもロクなことにならない。寧ろ悪化しかねない。
俺はベルファリスさんが使った後、術式巻物にある細工を施すことにした。
ベルのご両親は既に俺と飛鳥が異世界人であることを知っているので、中世ヨーロッパで不衛生と疫病がもたらした悲劇を伝えた。
MyPadに資料として保存してある関連グロ画像も2人に見せた。2人とも納得して、現状の深刻さを受け止めてくれたのでありがたい。
その後、ベルのご両親2人にシャンプーとリンス、トリートメントなどを渡した。
それらは異世界電子通販で購入したもので、ミーネさん達が研究しているものの1つの目標物ということを言い含めて渡した。
資金があれば俺の【異世界電子通販】で買えるが、際限なく受け付けるつもりはないので、数量限定であることを伝えている。
義父になるルークさんは男性がシャンプーなどを使うことに懐疑的だったが、某社のCMと加齢臭に関するレポートをベルファリスさん達に内密で見せたら、顔を青くされて感謝された。
ミーネさん達の石鹸をはじめとした衛生用品と化粧品の研究費のメリクリウス商会から支援してもらえる約束を得て、後日、ミーネさんを交えて正式な文書にすることを決めて、最後はお茶と俺が用意したお菓子で歓談し、面会は終了した。
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