とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

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第3章 自由連合同盟都市国家メルキオール 地方城塞都市カイロス編

第62話 うちに染まった鍛冶職人夫婦と勘弁してほしい特命の護衛依頼の件

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専属鍛冶職人の元技師ギルドのトップツーを迎えて早3週間。

この職人達も我が家に染まった。そうそれは物凄い勢いで磁石に砂鉄が吸い寄せられるが如く。

まず、我が屋敷の使用人宅にも完備している”ウォシュレット”に驚嘆。

次に、食事は3食を基本屋敷の食堂で、身分を気にする必要がある来客時以外は使用人の別なく全員で摂っている。

ギルドの依頼などで欠席する場合は要連絡。うちの食事の質と量に2人は絶賛。

そして、

「「素晴らしい……」」


”浴室”と”衛生用品各種”にヴァルカさんとヘファイスさんは大喝采だった。

鍛冶という肉体重労働で、仕事柄汗だくになるのは当然。

しかし、通常のお湯での入浴は沸かすまで時間がかかるという、入ろうと思った時には汗が引いて不快な臭いだけが残るという痒いところに手が届かないものだった。

けれども、俺達の専属鍛冶師として屋敷に来たことにより、仕事場兼住居備え付けの浴室は魔導具によっていつでも温度調節した給湯が可能。

しかも、本邸の屋敷の浴場も終業の鐘(17時頃に鳴る鐘)が鳴るまでは基本入浴自由という好待遇。

屋敷の浴場は男女別である。その上、俺と飛鳥、クロエ、ベルが使える専用の隠し部屋の混浴のものがある。

「いやはや最高の職場環境ですね。最早、ここを自分から辞めて出て行くことが考えられません」

とヘファイスさんは朝食の食休み時に苦笑い。

ヘファイスさんとヴァルカさんには仕事として、刀以外の俺達専用の決戦用武器防具の作製を開始してもらって順調に進んでいる。

また、普段使いの武器防具類も俺がダメ出しもらいながら強化した。

俺が屋敷の衛生用品は全て基本、俺が【異世界電子通販ネットショッピング】で購入しているものなので、過酷な鍛冶労働で荒んだ髪質、肌質がケアされて、そのただでさえ高いヘファイスさんのイケメン度が上昇。

とはいえ、そんなヘファイスさんは奥さんであるヴァルカさん一筋な愛妻家。

しかも、全員が自立している子持ち夫婦だったというから驚いた。

ヘファイスさんは見た目完全に20代前半の優男。成人している一番下のお子さんの年齢は23歳らしい……。

お子さん達はそれぞれ商人ギルド、従者ギルド、冒険者ギルド、錬金術師ギルドに所属している男女2名ずつの計4兄弟姉妹だそうだ。

「あれ?俺達、錬金術師ギルドに所属していますが、お2人のお子さんにお会いしたことないですよね?」

「いや、そんなはずはないぞ。粗相でもしてクビになっていない限り、”ジェシカ”は錬金術師ギルドの受付をやっているはずだ」

ヴァルカさんがさらっと言う。

「『「え”……」』」

事実を既に知っていたベル以外、この場にいた俺と飛鳥、クロエが驚きで固まったのは想像に難くない。



装備が順調に揃ってしばらくして、冒険者ギルドから俺達に呼び出しがあった。

「指名依頼ですか?」

俺は冒険者ギルドのバルガス冒険者ギルド長に飛鳥、クロエ、ベルを伴って重要案件向けの個室に通され要件を聞いた。

「ああ、すまねぇが、ユウ達宛てで来ている。悪いがこいつを読んでくれ。この文書はこの話が終わった後に俺が責任を以って処分する。ああ、ミーネには既にこの話しを通してあるから大丈夫だ。それから、依頼人からの要望でヴァルカとヘファイスまでなら話しても問題ないが、それ以外へ詳細は他言無用だ」

そう言ってバルガスのとっつぁんが差し出した封書を開いて俺は中身を読んだ。

「なるほど、依頼人はヘリオスさんか……」

そう言って、俺は読み終えた文書を飛鳥に渡して、他の2人も確認するよう伝える。

依頼の内容はメルキオール北西から西部に広がっているエレボール山脈のバルタザール騎士王国との国境付近に住んでいるヘリオスさんの親友が会いたがっているという連絡がバルタザール騎士王国に出入りしている商人ギルド所属の商人から入ったそうだ。

これまでその様な連絡は一切なかったため、便りがないのがいい便りだった訳だが、今回なんらかの異変があったと思われる。

戦力として破格である俺達を道中の護衛という名目で連れて行き可能な限りその手助けをしたいそうだ。

「とはいっても、俺達は冒険者ギルドに登録して間もない。ランクはAになっていないから指名依頼が来ても規則で受けられないから困るのですがねぇ?」

俺達が冒険者ギルドに登録したのは豚鬼事件のときで、ランクはまだCだったはず。

俺の言葉に飛鳥とクロエが頷くが、ベルだけは俺達のその言葉を聞いて苦虫を噛み潰した様な表情をした。

「バルガス冒険者ギルド長、ランクの件についてご主人様達にお話されていないですか?」

冷めた目線のベルから極寒地にいるのかと思わせる程の冷気が迸る。

「いっ、いや、ランクの件に関しては自分からユウ達に伝えるからバルガスとミーネから通達は不要だとヘリオスギルド総長から連絡があったから……」

ベルの恐ろしい気迫に圧されて、しどろもどろとなるとっつぁん。

無理もない俺もこの状態のベルのお説教は怖い。

そのとき、まるでタイミングを見計らったかの様に俺にヘリオスさんからギルドカードの”コール”が入った。

俺はそれを”オープンコンタクト”で周囲にも聞こえる様にして繋げた。

「はい、どうされました?」

『ああ、すまないユウ、君に、いや、君達に伝えるのが後回しになってしまったことがあってね。
今、君達は私が出した指名依頼の件で冒険者ギルドにいるのだろう? 大変申し訳ないが、君達の冒険者ランクはB+に上げさせてもらっている』

繋げるとすぐにヘリオスさんから謝罪の言葉が返ってきた。

「……」

事情があるのを察したのか、ベルは押し黙り、責められていたとっつぁんは胸をなでおろしていた。

「なぜ俺達を指名されたのですか?」

護衛依頼であれば他のAランク冒険者達に任せればいい。俺達の出る幕はそもそもないはずなのだ。

『君達の疑問は最もなものだと私も思うなにせ、単なる護衛依頼であれば今メルキオールにいるAランク冒険者に頼めばいいという結論を誰でも考える。ただそれはという可能性が全くなければの話だ』

「竜族と遭遇して戦闘になる可能性があると?」

竜の種類にもよるが、通常であれば成竜1匹に対して、前回の豚鬼オーク事件のおよそ倍の数近くの冒険者の数、Aランク冒険者6人パーティーが5組の最低でも合計30人で挑む大規模戦闘レイドバトルになる。

『ああ、あくまで可能性の域をでない話なのだ。出会ったとしても想定1匹だ。けれども、それが今回は枷になってね。竜族相手だと対象はAランク冒険者以上に限定される。Aランク冒険者に出す依頼料も最低ラインでも1人金貨1枚。今回は私の私事だから、私の個人資産から出す分には全く問題ないのだが、今、メルキオールにいるAランク冒険者は、正直に言って、前回の豚鬼事件で戦闘を経験した君達よりも戦闘能力に関しては遥かに劣る』

ヘリオスさんはため息を吐いて、そう語る。そこにはどこかやるせなさがある。

『別段彼等が悪いという訳ではない。話に上がったAランク冒険者の彼等は堅実に依頼をこなして冒険者ギルドが制定している難関であるAランク審査を通過してAランクになった冒険者だ。だが、此度の件で依頼を任せるには可能性とはいえ、彼等には竜族との戦闘は荷が勝ち過ぎる』

「竜族の様な強力な生物と戦闘になることはそもそもメルキオールではないからな。豚鬼事件、豚鬼の魔王が例外だ。今回の目的地である西の山、エレボールには危険度リスクランクB+の翼竜ワイバーンが多数生息しているが奴等は人里に下りてくることは滅多にない」

冒険者ギルドが制定している危険度ランクは対応する冒険者ランクの冒険者パーティーとそれ以上の冒険者ならば対応できる基準とされている。

魔物にも個体差があるため絶対とは言えないが、1つの指標として、その生息地などの情報を勘案されて冒険者ギルドで発行される護衛依頼の依頼料が決められる。

ちなみに、俺達の個人の冒険者ランクはさっきヘリオスさんが言った様にB+。

ただし、後でベルがバルガスのとっつぁんを問い詰めて知ったことだが、俺達、俺と飛鳥、クロエ、ケイロン、ベルの5人パーティーの冒険者ランクはS。

過大評価だと抗議したが、本来であればクロエ単体で冒険者ランクA+評価になるらしい。

原因はクロエが使える【竜魔術ドラゴロア】の【メガ・フレア】。

それだけでも脅威なのに俺達のパーティーには飛鳥という勇者りふじんと俺という規格外はんそくがいる。

だからパーティー冒険者ランクSこれでも低いととっつあんは力説した。

『故に今回は君達にお願いするしかないと私は思っている。君達に引き受けてもらえないのなら仕方がないから、私は単独で向かうとするよ。なにせ、私事とはいえ、表立ってギルド総長不在を知らしめる訳にはいかないから、お忍びでいかないといけないのでね』

知らない仲ではないので、別段引き受けてもいいかと思うが、俺は3人に確認する。

「俺はエレボール山脈の鉱脈と植生に興味があるから、受けようかと思うが、みんなはどう思う?」

「私は受けてもいいと思います。ヘリオスさんにはお屋敷の件でお世話になりましたから」

『うむ、我もよいと思うぞ。それになにやら、我等も行かねばならん気がするのじゃ』

飛鳥とクロエは快諾。それで問題になりそうなベルは……。

「報酬などのお話があがっていないので、その確認と交渉後にと思います」

言動が堅いけれども、賛成と。

「詳細を詰めて依頼を受けようと思います。ただ、こちらもエレボール山脈の鉱脈と植生調査などを行いたいのですがよろしいですか?」

『ああ、構わないよ。君たちが受けてくれるなら助かるよ。エレボール山脈は運がよければ希少金属が採掘できるし、希少な薬草もあるからそっちもいいよ。詳細は明日詰めて、5日後に出発でいいかな?』

ヘリオスさんは快諾してくれたので、俺達は冒険者ギルドで必要な手続きを終えた。

その後、屋敷に戻って使用人の皆とヘイファイスさんとヴァルカさんにエレボール山脈へ護衛の依頼で出張することを連絡した。


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