とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

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第3章 自由連合同盟都市国家メルキオール 地方城塞都市カイロス編

第65話 どこかで見たことのあるハゲの件

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接近している盗賊の下っ端共6人は鎧袖一触という表現すら生温いワンサイドゲームで、戦闘らしい戦闘にはならなかった。

【マップ】で下っ端共の数を確認。ケイロンへ【索敵】指示後、【目標個別捕捉ターゲットマルチロック】、【手加減】使用後、弓矢の【弓術】による全体狙撃が可能な【ミリオンシュート】を指示。盗賊下っ端共全滅。

針鼠の様に矢が刺さっているけれども、死んでいない盗賊下っ端共の完成だ。

ちなみに、奴等は全員騎乗して接近していたので、乗られていた可哀想な馬達には【念話】で盗賊共のアジトの場所を聞いて、解放してあげた。

弱い者虐めをしてしまったのだが、相手が私欲のために平気で懸命に生きてきた堅気の商人ギルド所属の商人を殺してきた輩だから、全然罪悪感が湧かない。

「……殺さないのかね?」

ヘリオスさんが聞いてきた。

「ええ、寧ろ死んで終わりにしてあげるつもりはありませんよ。
こいつ等に悔い改めろと言っても無駄だから、精々犯罪奴隷として残りの人生を社会に貢献してもらいますよ」

そう言いながら、俺は淡々とケイロンが撃って賊に刺さっている矢を全て【空間収納】に回収した。

続けて、瀕死の盗賊の下っ端共をそのまま【石化】して、【空間収納】にしまった。

こいつ等からは矢を回収ついでに全員【鑑定】して、馬から聞いたこいつ等のアジトの情報の確認と前科もチェック済み。

中には女性もいたけれども、元冒険者で素行不良とパーティークラッシャー、最後のパーティーで殺人を犯して、冒険者ギルド登録抹消。それから盗賊になった人物なので、同情すらできん。

犯罪奴隷落ちした女性の末路は18禁エロ展開必至だが、殺人強盗をやっている彼女等は自業自得以外のなにものでもない。



「本当は最後まで役に立つ出番が来ないことが一番いいんだけどなぁ」

俺はそうぼやいて、【空間収納】から殺された人数分のを出した。

「そうだね。だが、ユウ君がいてくれたおかげで彼等の遺族も少しは救われる」

「たしかにこのままでは彼等の遺体は野犬や野生の魔物の餌になるしかありませんからね」

ヘリオスさんとヘファイスさんはそう言って、俺が【魔術】で遺体を協力して、俺が出した棺の中に入れた。

周辺警戒はケイロンとクロエに任せ、他のメンバーは訓練の疲れが癒えていないため俺の【睡眠魔術スリープ】で休んでもらっている。

完全18禁Gレベルの損壊をさせられた遺体があるから、肉体疲労に加えて、この精神疲労を与えるのは酷過ぎるので、ヘリオスさんとヘファイスさん合意の下、強制的に眠ってもらった。

「どんなに疲れていてもヴァルカも起きていたら、絶対に手伝うと言って聞きませんからね」

そう言ってヘファイスさんは苦笑いを浮かべながら、遺体を棺に納めていく。



「……っ、ぷはぁ」

俺は遺体の修復のために使うことになった燃費の悪い無属性魔術の【時間遡行リトログレイタイム】を連続使用。

【時間遡行】:物体の時間を巻き戻して元の状態に戻すことができる。但し、過去に遡る程魔力消費量は増大する。譲渡禁止。複製不可。

魔力回復のために魔力回復薬マナポーションをガブ飲みするはめになった。

だが、その甲斐あって、全ての遺体の棺への収納が完了した。それらは俺の【空間収納】に保管してある。

既に日は完全に落ちてしまっているので、今日はこの場で野営することになった。

「では行ってきますね」

「ああ、すまないが頼んだよ」

『我も付いて行くから問題ないぞ』

「こちらのことはお任せください」

”六連団”とかいう盗賊共をこのまま野放しにしていると被害が拡大する上に、メルキオールに戻る帰りにも襲撃を受けかねない。

奴等のアジトも判明しているので、俺は遠慮なく潰すことにした。

出撃メンバーは豚鬼オークの村に潜入したときと同じく、俺とクロエ。

周辺警戒はこれまでどおり、ケイロンと俺が【人造石兵創造ゴーレムクリエイト】で作製した人造石兵達に任せる。

護衛依頼の依頼人であるヘリオスさんが安全なこの場に残るのは当然。
ヘファイスさんには万が一のときのため残って貰うことになった。

飛鳥とベル、ヴァルカさんの3人は今も馬車のベッドの上で夢の中。
ことが終わるまで起きることはない。



【気配遮断】と【認識阻害】のいつものお忍びスキルコンボを発動して、今回は更に【竜人化】で翼を出して、地形の影響を受けずにクロエと共に移動。

『……♪』

一緒に空を飛べることにクロエはご機嫌だった。

そして、目的地の六連団とかいう盗賊のアジトに到着。

場所は森の中で、元は放棄されて地図から消えた開拓村を流用しているようだ。
しかも、ご丁寧に門番まで立っている。

クロエと身を潜めて様子を伺っていると、村の奥から来たローブを着た人物が門番をしている盗賊2人と会話をしていたところだった。

はて? どこかで見たことのあるローブとつらだ。ローブの人物はその上からも分かる立派なものをもっているのがわかる。

まぁ、飛鳥とベルには劣る。さて、会話内容はっと……。

「……そうですか。貴方達も交代の時間まで頑張ってください」

「「……へい」」

肝心の内容は聞けずじまいか、仕方ない。おや?

「ちっ、抱き甲斐のありそうな体だが、あれで頭にちゃんと髪の毛がありゃあな」

「おい、やめろよ! 彼女の耳に入ったら、お前も【火球ファイアーボール】で焼き殺されるぞ!」

「ちょっ、マジかよ!?」

「ああ、あの人、元オディオ王国の宮廷魔術師の筆頭だったらしいぜ。彼女の悪口言った奴が怒りを買って、俺の目の前で、あの人が放った【火球】食らって黒こげになった」

「へえ、なんだってそんな人がこんな辺鄙なところで盗賊の幹部なんかやってんだよ?」

「さあな、戦闘能力は高いが、うわ言の様に『アスカ、アスカ……』と呟いて、女を犯すことしか考えていないあの狂人と、どこぞの貴族のお嬢様と思しきプライドだけは高い見た目だけはいい女、あの3人を引き連れてきた今のお頭もなぜか髪の毛はないんだぜ」

「ふ~ん……もしかして、あの4人噂の呪いでも受けているんじゃねえのか?」

「あん? なんだよその噂の呪いって? 」

「ここに来る前に行商人から聞いた話だが、オディオ王国で初代国王が封印していた竜を今代の王族が下手うって解き放ちまったらしい。去り際に竜が今までの恨みの報復で城にいた連中に呪いをかけたらしいぜ」

「なるほどなぁ、そう言えば、元宮廷魔術師の筆頭だったていうあの人もたしか、カマセって家名のあるお貴族様だったはずだぜ」

「……お前、なんだってあの女のことそんなに詳しいんだよ? もしかして、狙っているのか?」

「! っ、悪いかよ!?」

「別に悪かあねえが、ちと高嶺過ぎやしないか?」

「いいんだよ! いづれ手柄挙げて、あの人に見合う男に俺はなるんだからよ!」

「……」

「……」

真に残念だが、人の命をなんとも思わない殺人強盗集団にいる者の運命はここで犯罪奴隷落ち一択のみ。

談笑に熱中して注意が疎かになって、隙だらけの門番2人に俺は【石化】をかけて石像化。

すぐに2つの石像を【空間収納】にしまった。

最早、手馴れてきてしまっている”しまっちゃうおじさんコンボ”再び。

しかし、外道の一味であるこいつらは豚鬼同様、極悪盗賊死すべし!慈悲はない!!

『面白い話をしておったのう。ご主人のかけた呪いを受けし者か……他の呪いはもう解けておるのかのう、ご主人?』

クロエがあることに思い至り、引き攣った顔で俺に尋ねてきた。

「”下痢”をする呪いの効果は既に切れているはずだ。ただ、メルキオールのスラムと同じ環境だと思うから……」

『ご主人、前回の豚鬼共の村に忍び込んだときと同じく、我はご主人の退路を確保するのじゃ!』

俺の言葉で、下痢の呪いによる汚物の悪臭こそないものの、その他の悪臭がこの先に満ちていることを察知したクロエは食い気味に言葉を被せてきた。

「はあ、わかったよ。この前同様、周辺警戒とヘリオスさん達への定期連絡の中継は頼んだぞ」

『任せるのじゃ!』

幼女メイドから闇夜に紛れる闇黒幼竜形態になって、サムズアップをクロエは返してきた。

門番の2人に【石化】をかける前に【探知結界】の類の存在を警戒して、【鑑定】を使ったが、防犯となる【魔術】が全く施されていなかった。

魔術師がいるのにこの状態は不自然だ。

俺は警戒しつつ、気を引き締めて、再度【気配遮断】と【認識阻害】をかけなおし、完全無防備な夜空から村の中に侵入した。

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