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第3章 自由連合同盟都市国家メルキオール 地方城塞都市カイロス編
第72話 飛鳥とベル、クロエのカイロスのハロウィンの件
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「「「トッリック、オアトリート?」」」
『がお~、とりっく、おあとり~となのじゃ!!』
飛鳥お手製の狼の着ぐるみを着て、ノリノリのクロエは魔女に仮装した飛鳥とベルと一緒にハロウィン衣装に仮装したカイロスの子供達と共に民家を回っている。
クロエの着ている狼の着ぐるみはワイルドウルフの毛皮を洗浄して使用しているもので、裏面も丁寧に作られているため保温性にも優れていて、そのまま寝間着に使える実用性もある。狼の顔はある程度デフォルメされている。
飛鳥は保有しているスキルをフル活用して、驚異的な速度でこの着ぐるみと自分の分とベルの分、そして、ヴァルカさんの分の仮装衣装を縫いあげた。
後日、作ってある型紙を複製して、商人ギルドに登録すると言っていた。
カイロスのハロウィンでは、子供はカイロスの東門に決まった時間に集まって、集団で家の入り口のジャックオーランタンに明かりが点いている家を回ることに決まっていることを宿の人から俺達は教えられた。ヘリオスさん経由の案内だと思われる。
ちなみに、ヴァルカさんはヘファイスさんと飛鳥の合作のワーキャットの着ぐるみを着たものの、鏡を見て、あまりに似合い過ぎていた為に精神的ダメージを受けて卒倒し、部屋に篭ってしまった。
彼女のことはヘファイスさんに任せて、飛鳥とベル、クロエの3人が参加することになった。
念のため、首なし騎士に仮装したケイロンをステルス状態で護衛に付けている。
俺はなにをやっているかと言うと、【気配遮断】と【認識阻害】、【光学迷彩】の隠密スキルコンボを駆使してのカメラマンである。きちんとした仕事である。間違ってもお子様達を見守るお仕事ではないので、勘違いしないように。
しかも、ヘリオスさん経由で、ルークさんとベルファリスさん、ベルのご両親からの密命である。対価はメリクリウス商会カイロス支店での乳製品の原価購入権。
俺1人ならば【竜人化】で翼生やして、メルキオールから空飛んで半日もかからずにカイロス来れるので、カイロスの特産品である乳製品を安く買えるのは大きい。
任務内容は、ベルのカイロスハロウィンでの動向の撮影記録である。
そのベルだが、飛鳥が作ったゴスロリアレンジの魔女仮装衣装がおそろしく似合っている。黒い衣装に映えるロングの銀髪。肩を出して、胸元も開いたワンピースとふんだんにフリルが使われたスカート。足には黒いハイソックス。ベルのスタイルのよさを損なわない見事なデザイン。
普段のメイド服も名前が似た某ゲームのメイドさんの様に出てとても似合っている。しかし、こちらの服も色とデザインでよりベルの魅力が引き立てられている。とても素晴らしい。飛鳥のセンスに脱帽せざるを得ない。
その飛鳥はというと、ベルの黒のゴスロリ魔女服とは対になる白の和ロリで、ベルとは違った魔女服になっている。彼女の左手には俺が飛鳥に頼まれて作った樫の木製の小道具の杖を片手に持ち、白い生地の一部で霊魂も表現していたりと、かなり凝った作りになっている。
ベルを可愛がっているあの両親が彼女のこの姿見たら、大喜びする姿が目に浮かぶ。
白と黒の魔女の引率で、魔物の仮装をした子供達、中には獣人の子供もいるが、分け隔てなく訪れた民家の人たちはお菓子を振舞っていた。
「あっ……」
『大丈夫かの? ほれっ』
「うん、ありがとう」
「痕が残らないうちにきれいにしましょうね」
「少し沁みますが、我慢してくださいね」
「うっ、お姉ちゃん達、ありがとう」
転んだワーキャットの仮装をした少女をクロエが助け起こして、飛鳥が下級回復薬を出し、受け取ったベルが傷口の消毒した後に下級回復薬を使って傷は綺麗に塞がった。
大したトラブルもなく、このまま最終目的地のカイロスの街役場まで到着できるかと思ったのだが、
「おっ、いい女がいるじゃねぇか。おいお前等、ガキ共のお守りなんかしてないで、俺達の相手をしろよ」
カイロスの住人の男共はハロウィンであることを理解し、飛鳥とベルに目を奪われはするも、声をかけることはしなかったのだが、バルタザール騎士王国から駐在地に来ている騎士の中の素行の悪い馬鹿は違った。声をかけるだけでなく、子供達一行の行く手を塞いだのだ。
「お断り致します。邪魔ですので、そこをどいてください」
「貴方がたの様な殿方のお相手をする理由と意義が見出せません。恥をかかないうちにお引き取りください」
飛鳥が即答し、ベルが要求を辛辣な言葉で一刀両断した。
飛鳥達をナンパしようとした2人を【鑑定】したが、飛鳥、ベル、クロエの3人では過剰戦力過ぎる程実力差があった。しかも、2人組みは飲酒していたようで、状態異常:酩酊となっている。
見たところ、鎧を纏っているし、長剣も佩いているから、勤務中と思えるのだが、バルタザール騎士王国の騎士団に不安を覚える。
「さあ、怪我しないうちに俺達の言う通りにしな! 俺達はバルタザール騎士王国の騎士だぞ!」
「そうだ! よく見れば下賎な獣人のガキもいるじゃねえか」
あろうことか、自称騎士の酔っ払いは腰の長剣を抜剣して、切っ先を子供達を庇うように立つ飛鳥とベルに向けやがった。
『マスター、如何致シマショウカ?』
ケイロンが【念話】で指示を仰いできた。本音を言えば、飛鳥達に切っ先向けた馬鹿共は、俺の手で死んだほうがマシな目にあわせたい。しかし、
『現状はまだ待機だ。おそらく、飛鳥達でこの場は解決できる。ケイロンにはその後のことをお願いするから、俺が指示しない限りは参戦しないでくれ』
『畏マリマシタ』
「貴方達の様な悪漢が騎士を名乗らないでください。不愉快です。民のために剣を抜く真面目に騎士の職務を全うしている方々に失礼ですし、騎士という言葉が穢れます」
飛鳥が目が笑っていない笑顔で答えた。
「この! 言わせておけば!!」
案の定、激高した自称騎士(笑)が飛鳥に向かって剣を振り下ろしたが……
「「ぐはぁああっ!」」
男達は鎧の上から、飛鳥の仕込み杖の隠し刀による【抜刀術】で胴を横薙ぎで一蹴された。
「安心してください。【峰打ち】ですし、殺しはしませんよ」
いや、飛鳥さん、貴女の持つ仕込み刀は逆刃じゃないですか。あ、【手加減】か。だったらセーフだね。
『ケイロン、騎士王国の騎士団が駐屯している場所に行き、この動画を騎士団の責任者に渡して来てくれ。匿名の民間人名義で』
『了解』
俺は自称騎士達の一部始終を収めた動画データを再生できる”記録結晶”にコピーして、ケイロンに指示と共に渡した。ケイロンは短い返事と共に駆けていった。
そして、俺はヘリオスさんに連絡を入れて、撮影を続けつつ、先ほど起きたバルタザールの自称騎士の暴行を報告した。
『騎士を名乗る癖に弱気者に刃を向けるとは恥をしるがいいのじゃ。これでも食らうがよいわ!』
俺がヘリオスさんに報告している横で、狼着ぐるみのクロエが無様に気絶している野郎2人の口に毒々しい紫色の液体を流し込んでいた。
ちょっ、クロエそれは男だったらアレが勃たなくなり、女性なら子供ができなくなる危険薬の”フノール”じゃないか。
まぁ、相手は下種2人だから、別にいいか。
その後、騒ぎを聞いて駆けつけてきた冒険者達によって、自称騎士2人は冒険者ギルドに連行されていった。
「もう怖い男の人たちは優しい小父さん達に連れて行かれたから大丈夫ですよ」
馬鹿2人に剣を向けられて泣き出しそうになっていた子供達をベルが優しく宥めていた。
■
トラブルと呼べないレベルのトラブルはあったものの、飛鳥とベルが引率する子供達一行は最終目的地のカイロスの街役場に無事到着し、解散することになった。
『では気をつけて行くのじゃぞ。これは餞別じゃ。向こうで食べよ。もう迷ったりしないで、両親の待つ天の国へ行くのじゃぞ!』
「わかった。ありがとう。クロエちゃんのおかげで大丈夫。クロエちゃんも元気でね」
『うむ、お主も息災でな。さらばじゃ』
「うん、バイバイ」
そう言って、クロエと話していた少女は笑顔で手を振り、次第に姿と存在が希薄になっていった。
そして、最後にはなにも残らなかった。いや、ネリネの花が少女がいた場所に咲いていた。
『がお~、とりっく、おあとり~となのじゃ!!』
飛鳥お手製の狼の着ぐるみを着て、ノリノリのクロエは魔女に仮装した飛鳥とベルと一緒にハロウィン衣装に仮装したカイロスの子供達と共に民家を回っている。
クロエの着ている狼の着ぐるみはワイルドウルフの毛皮を洗浄して使用しているもので、裏面も丁寧に作られているため保温性にも優れていて、そのまま寝間着に使える実用性もある。狼の顔はある程度デフォルメされている。
飛鳥は保有しているスキルをフル活用して、驚異的な速度でこの着ぐるみと自分の分とベルの分、そして、ヴァルカさんの分の仮装衣装を縫いあげた。
後日、作ってある型紙を複製して、商人ギルドに登録すると言っていた。
カイロスのハロウィンでは、子供はカイロスの東門に決まった時間に集まって、集団で家の入り口のジャックオーランタンに明かりが点いている家を回ることに決まっていることを宿の人から俺達は教えられた。ヘリオスさん経由の案内だと思われる。
ちなみに、ヴァルカさんはヘファイスさんと飛鳥の合作のワーキャットの着ぐるみを着たものの、鏡を見て、あまりに似合い過ぎていた為に精神的ダメージを受けて卒倒し、部屋に篭ってしまった。
彼女のことはヘファイスさんに任せて、飛鳥とベル、クロエの3人が参加することになった。
念のため、首なし騎士に仮装したケイロンをステルス状態で護衛に付けている。
俺はなにをやっているかと言うと、【気配遮断】と【認識阻害】、【光学迷彩】の隠密スキルコンボを駆使してのカメラマンである。きちんとした仕事である。間違ってもお子様達を見守るお仕事ではないので、勘違いしないように。
しかも、ヘリオスさん経由で、ルークさんとベルファリスさん、ベルのご両親からの密命である。対価はメリクリウス商会カイロス支店での乳製品の原価購入権。
俺1人ならば【竜人化】で翼生やして、メルキオールから空飛んで半日もかからずにカイロス来れるので、カイロスの特産品である乳製品を安く買えるのは大きい。
任務内容は、ベルのカイロスハロウィンでの動向の撮影記録である。
そのベルだが、飛鳥が作ったゴスロリアレンジの魔女仮装衣装がおそろしく似合っている。黒い衣装に映えるロングの銀髪。肩を出して、胸元も開いたワンピースとふんだんにフリルが使われたスカート。足には黒いハイソックス。ベルのスタイルのよさを損なわない見事なデザイン。
普段のメイド服も名前が似た某ゲームのメイドさんの様に出てとても似合っている。しかし、こちらの服も色とデザインでよりベルの魅力が引き立てられている。とても素晴らしい。飛鳥のセンスに脱帽せざるを得ない。
その飛鳥はというと、ベルの黒のゴスロリ魔女服とは対になる白の和ロリで、ベルとは違った魔女服になっている。彼女の左手には俺が飛鳥に頼まれて作った樫の木製の小道具の杖を片手に持ち、白い生地の一部で霊魂も表現していたりと、かなり凝った作りになっている。
ベルを可愛がっているあの両親が彼女のこの姿見たら、大喜びする姿が目に浮かぶ。
白と黒の魔女の引率で、魔物の仮装をした子供達、中には獣人の子供もいるが、分け隔てなく訪れた民家の人たちはお菓子を振舞っていた。
「あっ……」
『大丈夫かの? ほれっ』
「うん、ありがとう」
「痕が残らないうちにきれいにしましょうね」
「少し沁みますが、我慢してくださいね」
「うっ、お姉ちゃん達、ありがとう」
転んだワーキャットの仮装をした少女をクロエが助け起こして、飛鳥が下級回復薬を出し、受け取ったベルが傷口の消毒した後に下級回復薬を使って傷は綺麗に塞がった。
大したトラブルもなく、このまま最終目的地のカイロスの街役場まで到着できるかと思ったのだが、
「おっ、いい女がいるじゃねぇか。おいお前等、ガキ共のお守りなんかしてないで、俺達の相手をしろよ」
カイロスの住人の男共はハロウィンであることを理解し、飛鳥とベルに目を奪われはするも、声をかけることはしなかったのだが、バルタザール騎士王国から駐在地に来ている騎士の中の素行の悪い馬鹿は違った。声をかけるだけでなく、子供達一行の行く手を塞いだのだ。
「お断り致します。邪魔ですので、そこをどいてください」
「貴方がたの様な殿方のお相手をする理由と意義が見出せません。恥をかかないうちにお引き取りください」
飛鳥が即答し、ベルが要求を辛辣な言葉で一刀両断した。
飛鳥達をナンパしようとした2人を【鑑定】したが、飛鳥、ベル、クロエの3人では過剰戦力過ぎる程実力差があった。しかも、2人組みは飲酒していたようで、状態異常:酩酊となっている。
見たところ、鎧を纏っているし、長剣も佩いているから、勤務中と思えるのだが、バルタザール騎士王国の騎士団に不安を覚える。
「さあ、怪我しないうちに俺達の言う通りにしな! 俺達はバルタザール騎士王国の騎士だぞ!」
「そうだ! よく見れば下賎な獣人のガキもいるじゃねえか」
あろうことか、自称騎士の酔っ払いは腰の長剣を抜剣して、切っ先を子供達を庇うように立つ飛鳥とベルに向けやがった。
『マスター、如何致シマショウカ?』
ケイロンが【念話】で指示を仰いできた。本音を言えば、飛鳥達に切っ先向けた馬鹿共は、俺の手で死んだほうがマシな目にあわせたい。しかし、
『現状はまだ待機だ。おそらく、飛鳥達でこの場は解決できる。ケイロンにはその後のことをお願いするから、俺が指示しない限りは参戦しないでくれ』
『畏マリマシタ』
「貴方達の様な悪漢が騎士を名乗らないでください。不愉快です。民のために剣を抜く真面目に騎士の職務を全うしている方々に失礼ですし、騎士という言葉が穢れます」
飛鳥が目が笑っていない笑顔で答えた。
「この! 言わせておけば!!」
案の定、激高した自称騎士(笑)が飛鳥に向かって剣を振り下ろしたが……
「「ぐはぁああっ!」」
男達は鎧の上から、飛鳥の仕込み杖の隠し刀による【抜刀術】で胴を横薙ぎで一蹴された。
「安心してください。【峰打ち】ですし、殺しはしませんよ」
いや、飛鳥さん、貴女の持つ仕込み刀は逆刃じゃないですか。あ、【手加減】か。だったらセーフだね。
『ケイロン、騎士王国の騎士団が駐屯している場所に行き、この動画を騎士団の責任者に渡して来てくれ。匿名の民間人名義で』
『了解』
俺は自称騎士達の一部始終を収めた動画データを再生できる”記録結晶”にコピーして、ケイロンに指示と共に渡した。ケイロンは短い返事と共に駆けていった。
そして、俺はヘリオスさんに連絡を入れて、撮影を続けつつ、先ほど起きたバルタザールの自称騎士の暴行を報告した。
『騎士を名乗る癖に弱気者に刃を向けるとは恥をしるがいいのじゃ。これでも食らうがよいわ!』
俺がヘリオスさんに報告している横で、狼着ぐるみのクロエが無様に気絶している野郎2人の口に毒々しい紫色の液体を流し込んでいた。
ちょっ、クロエそれは男だったらアレが勃たなくなり、女性なら子供ができなくなる危険薬の”フノール”じゃないか。
まぁ、相手は下種2人だから、別にいいか。
その後、騒ぎを聞いて駆けつけてきた冒険者達によって、自称騎士2人は冒険者ギルドに連行されていった。
「もう怖い男の人たちは優しい小父さん達に連れて行かれたから大丈夫ですよ」
馬鹿2人に剣を向けられて泣き出しそうになっていた子供達をベルが優しく宥めていた。
■
トラブルと呼べないレベルのトラブルはあったものの、飛鳥とベルが引率する子供達一行は最終目的地のカイロスの街役場に無事到着し、解散することになった。
『では気をつけて行くのじゃぞ。これは餞別じゃ。向こうで食べよ。もう迷ったりしないで、両親の待つ天の国へ行くのじゃぞ!』
「わかった。ありがとう。クロエちゃんのおかげで大丈夫。クロエちゃんも元気でね」
『うむ、お主も息災でな。さらばじゃ』
「うん、バイバイ」
そう言って、クロエと話していた少女は笑顔で手を振り、次第に姿と存在が希薄になっていった。
そして、最後にはなにも残らなかった。いや、ネリネの花が少女がいた場所に咲いていた。
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