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第3章 自由連合同盟都市国家メルキオール 地方城塞都市カイロス編
第74話 泡沫の謎夢とヘリオスさんの知る秘密の近道。そして、ヘリオスさんの親友との出会いの件
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採掘の成果にヘリオスさんとベルが一定時間放心状態になった。超希少金属である超硬度剛石とそれを上回る希少性をもつ貴金属神硬金を採掘したと知ったから無理もないか。
飛鳥は笑顔で労ってくれて、ドヤ顔のクロエの頭を撫でている。
放心状態だった2人が復帰するまでに俺は夕食の用意を整えて、復帰後、食事に入った。
『シンプルじゃが、これも美味いのう! おかわりじゃ!!』
牛型魔物であるブラディホーンのステーキ2人前(オニオンソース)をすぐに平らげたクロエがおかわりを催促してきた。
ほとんど知られていないことだそうだが、クロエの、竜族の体内に吸収されたものは体内にある"竜(龍)炉"という竜族と龍族固有の器官で魔力にほぼ完全変換されるそうだ。
とはいえ、人族が食べる食事は元々保有魔力量が少ないため、戦闘後など大量に魔力を消費した後は、俺がクロエにあげている魔力球の様な魔力の塊を摂取するなどの方法を取らねばしばらく動けなくなることがあるそうだ。
食事で変換出来なかったものは不純物として、体外に排泄される。
クロエが転生して、卵から孵化後のしばらくの幼竜状態の間に俺は確認している……。
食事が終わった後は後片付けをし、入浴して寝るだけだ。明日は本格的な登山になるため、今日の採掘の疲れを明日に持ち越さないために、今日は早く床に就くことで、皆の意見は一致した。
俺は飛鳥、クロエ、ベルの3人とは基本的に、メルキオールの屋敷や充分な安全確認ができた宿屋の寝室以外では、魔物の襲撃などの不測の事態に備えて、混浴を避け、添い寝をすることはあっても夜更かしはしないことにしている。
「おやすみなさいませ、ご主人様」
自分が思っていたよりも疲労していた俺は、食事の後の一服後、ベルに浴室の入り口まで付き添われてすぐに入浴して休むことにした。体を洗って湯船にじっくり浸かって、上がった。体を拭いて寝台に横になったら、すぐに俺は眠りに落ちた。
■
明けて、翌日。快眠して回復し、快調に進んでいるかと思いきや、朝食時に、
「……」
『どうかしたのか、ご主人?』
「優さん、なにかありましたか?」
「ご主人様、いかがなさいましたか?」
いつの間にか、思案顔になっていた俺の異常を察知した飛鳥達に一斉に心配された。
「ああ、大丈夫。ただ、今朝方なにか夢の様なものを見たような覚えがあるのだけれども、おぼろげでしか思い出せないんだ。なにか忘れてはいけないような、そんな気がしてならないことなんだ」
『……なるほどのう、とはいえ、わからんものをあれこれ考えてもどうしようもなかろうに。おぼろげでも覚えていることはなんなのじゃ?』
俺の言葉にクロエが納得し、覚えている内容に興味があるのか訊いてきた。
「会話内容は完全に抜け落ちているけれども……相手は人族ではないな……」
目を瞑って、視覚情報をカットして思い出してみる。相手のサイズはどう考えても、人族ではないな。
「そうだ、丁度、転生前のクロエ、成竜のクロノエクソスが寝ているときの姿の様な大きさと雰囲気をもった相手だった」
『ほほう』
クロエに興味を引かれた反応を返してきた。
「色は覚えてますか?」
飛鳥が訊いてきた。色か……。
「色は……クロノエクソスとは対称的な雪の様な真っ白、だったかな?
だめだ、それ以上は思い出せないな」
おぼろげな記憶をなんとか掘り返しても得られた情報は多くなかった。
「如何されましたか、ヘリオス様?」
ヘリオスさんをお祖父様とは呼ばないメイドモードのベルは、俺達では気付けなかったヘリオスさんの不審な挙動に気づいた様だ。
「流石に目敏いね、ベルは。なに、今は私の口から言う事はできないとだけ答えさせてもらおうか。私の友人に会ってもらった方が早いからね」
そう言って、今朝の朝食のメニューであるオーソドックスな食パンとコーンスープ、ベーコン付き目玉焼き、コールスローサラダを食べ終えたヘリオスさんはティーカップの紅茶を飲んだ。
■
準備を整え、昨日入った坑道の入口と山道への分岐点に到着した。
「さて、ここからは私が先導しよう。近……その前に、これから使う近道が使えるか確認してくるから、ここで待っていなさい」
そう言って、ヘリオスさんが先頭に立ち、分岐点の中心を歩いて行って……消えた?
「消えましたね」
「消えたな」
飛鳥、ヴァルカさんが両目を瞬かせた。
俺は【鑑定】でヘリオスさんが消えた空間を視た。すると、
「【認識阻害】と【忌避誘導】、【無意識誘導】、【人払い】の多重【結界術】!?」
常人では確実に意識を逸らされる結界が張られていた。
「ああ、待たせたね。問題なく使えることを確認したから行こう。私から離れ過ぎると、はぐれるから注意してくれたまえ」
再び姿を現したヘリオスさんにそう言われて、俺達は彼の後について行った。
■
そこにあったのは、山肌に埋め込まれた様に設置されているこの世界には不似合いな、どちらかというと俺と飛鳥が元いた世界にあった硝子製の自動扉だった。
そして、その両脇には魔導具と思しきものが建ててあった。
「ここには旧文明の遺産があってね。ここのことを知る者はもうほとんどいない。
ここに設置している魔導具もその遺産の1つでね。この魔導具が張る【結界】によって、登録者の同行がないと、近づくことはおろか、ここに気づくことすらできないようになっているんだ」
ヘリオスさんはそう感慨深げに俺達に言った。
「なぜ俺達に、ここのことを教えたのですか?」
今朝の朝食後など、話す時間があったにも関わらず、この場所のことを教えられていなかったので、俺に警戒心が芽生えたので、ヘリオスさんに問いかけた。
「いや、なに、私もいつこの世界から旅立つかはわからないからね。君たちの実力を疑っている訳ではないのだけれども、実はここのことを託せる相手を探してもいたんだ」
「お祖父様、ここはお父様達はご存知なのですか?」
ヘリオスさんの言葉に彼女の孫娘としてベルが尋ねた。
「いや、あの2人には残念だが教えていない。ベル、君もここのことはあの2人には黙っていてくれないか」
ヘリオスさんは普段とは違った深い悲しみを含んだ眼差しで首を横に振って、ベルにそう答え、頼んできた。
「……理由にもよります」
彼のその表情を見て、ベルはそう返した。
「そうだね。その話については先に進んでからにしよう。彼女を交えた方が説明もしやすいからね。さあ、先に進もう」
そう言って、普段の穏やかな表情に戻ったヘリオスさんは話を打ち切って、俺達についてくるよう再び促し、先に歩き出した。
俺達はヘリオスさんの後を追い、自動扉の先へ進んだ。
■
自動扉の先には明らかに人工物と思しき廊下が続き、ヘリオスさんが近づくことで、自動で消灯していた灯りが奥まで自動で点灯していった。その先にあったのは……。
「エレベーター?」
閉じた扉があった。その扉の上に上下を指す三角と、その間に数字が表示されているパネルがある。また、扉の脇には上下を選択するボタンを押すパネルがあったから、思わず俺の口からその言葉が出た。
「これは興味深いね。ユウ君はこれがどの様な物か知っているのかい?」
ヘリオスさんが好奇心を宿らせた目を俺に向けて尋ねてきた。
「俺が考えている物と同じ物でしたら、俺と飛鳥が元いた世界にある建物内の上の階と下の階への移動を補助する装置です」
俺の言葉に俺と同じ答えに思い至った飛鳥も頷いた。
「なるほど、ユウ君とアスカ君が考えている物とこれは同じ物だよ」
そう言って、ヘリオスさんは入り口脇のパネルの△ボタンを押した。しばらくして、ピンポーンという機械音と共に扉が開いた。
「さあ、中に全員中に入ってきたまえ」
先にエレベーターの中に入って移動先の階層を選択したヘリオスさんが俺達に入ってくるよう促してきた。
エレベーターの中は広く、全員と【空間収納】に入れていないケイロンが入ってもまだ余裕がある広さだった。
「では、上に行こうか」
ヘリオスさんの操作は俺が覚えているエレベーターの操作方法のそれと一致していた。
上昇に伴い体に感じる重力。しばらくして、再び先ほど聞いた機械音が鳴り、扉が開いた。
「さあ、着いた。私は最後に出るから少し先に行ったところで待っていてくれたまえ」
ヘリオスさんが言うように少し先に行った所にあった広場で、俺達は待機した。
「優さん、旧文明の遺産ということでしたが、どういうことでしょうか?」
飛鳥が思案顔で俺に尋ねてきた。
「さあ、推測の域を出ないけれども、もしかしたら、この世界は高度な先史文明がなんらかの要因で崩壊して、今の状態になったのかもしれない」
思い返して見れば、この世界で分かっている歴史の最古はオディオ王国建国以前は国が勃興と滅亡を繰り返す戦国時代。それ以前の記録がメルキオールの図書館で見当たらなかった。もしかしたら、オディオ王国と同じく、禁書庫があって、そこに記録があるのかもしれないが……。
「待たせたね。先に進もう」
そう言って、追いついたヘリオスさんに案内され、俺達は建物内を先に進む。進む中、建物内を警備している2体1組の人造鉄兵とすれ違った。
その2体は一見、丸腰に見えたが、両腰に長剣と大腿部に小銃が懸架されていた。
歩き始めておよそ10分程度経って、ヘリオスさんが止まったので、どうやら目的地に着いたようだ。ヘリオスさんは扉横にあるパネルに備え付けられているレンズに目を向けている……虹彩認証か?
〔認証NO.21091013。「ヘリオス・メリクリウス」トノ一致ヲ確認。扉ヲ開錠シマス〕
機械音声の後、目の前の扉が開いた。
■
入った扉の奥はドーム球場に匹敵する広さがあり、
『よく来てくださいました、ヘリオス。そして、異世界からの来訪者とその仲間達よ』
女性の声の【念話】が頭に響くと共に、白い鱗で全身が覆われている巨大な白い竜が翼を折りたたんで横たわっていた。
「ああ、なんとか間に合ったようだ。久しぶりだね、ルールミナス。みんな紹介しよう、彼女は私の親友で、白輝聖竜のルールミナス。この地の魔物の氾濫を抑えてくれている存在だ」
ヘリオスさんがそう、目の前の竜の紹介をすると、
『私は光聖を司る白輝聖竜のルールミナス。ヘリオスの親友です。新たな友人達よ。私は貴方達を歓迎します』
そう言って、目の前の白竜は嬉しそうに両目を細めた。
飛鳥は笑顔で労ってくれて、ドヤ顔のクロエの頭を撫でている。
放心状態だった2人が復帰するまでに俺は夕食の用意を整えて、復帰後、食事に入った。
『シンプルじゃが、これも美味いのう! おかわりじゃ!!』
牛型魔物であるブラディホーンのステーキ2人前(オニオンソース)をすぐに平らげたクロエがおかわりを催促してきた。
ほとんど知られていないことだそうだが、クロエの、竜族の体内に吸収されたものは体内にある"竜(龍)炉"という竜族と龍族固有の器官で魔力にほぼ完全変換されるそうだ。
とはいえ、人族が食べる食事は元々保有魔力量が少ないため、戦闘後など大量に魔力を消費した後は、俺がクロエにあげている魔力球の様な魔力の塊を摂取するなどの方法を取らねばしばらく動けなくなることがあるそうだ。
食事で変換出来なかったものは不純物として、体外に排泄される。
クロエが転生して、卵から孵化後のしばらくの幼竜状態の間に俺は確認している……。
食事が終わった後は後片付けをし、入浴して寝るだけだ。明日は本格的な登山になるため、今日の採掘の疲れを明日に持ち越さないために、今日は早く床に就くことで、皆の意見は一致した。
俺は飛鳥、クロエ、ベルの3人とは基本的に、メルキオールの屋敷や充分な安全確認ができた宿屋の寝室以外では、魔物の襲撃などの不測の事態に備えて、混浴を避け、添い寝をすることはあっても夜更かしはしないことにしている。
「おやすみなさいませ、ご主人様」
自分が思っていたよりも疲労していた俺は、食事の後の一服後、ベルに浴室の入り口まで付き添われてすぐに入浴して休むことにした。体を洗って湯船にじっくり浸かって、上がった。体を拭いて寝台に横になったら、すぐに俺は眠りに落ちた。
■
明けて、翌日。快眠して回復し、快調に進んでいるかと思いきや、朝食時に、
「……」
『どうかしたのか、ご主人?』
「優さん、なにかありましたか?」
「ご主人様、いかがなさいましたか?」
いつの間にか、思案顔になっていた俺の異常を察知した飛鳥達に一斉に心配された。
「ああ、大丈夫。ただ、今朝方なにか夢の様なものを見たような覚えがあるのだけれども、おぼろげでしか思い出せないんだ。なにか忘れてはいけないような、そんな気がしてならないことなんだ」
『……なるほどのう、とはいえ、わからんものをあれこれ考えてもどうしようもなかろうに。おぼろげでも覚えていることはなんなのじゃ?』
俺の言葉にクロエが納得し、覚えている内容に興味があるのか訊いてきた。
「会話内容は完全に抜け落ちているけれども……相手は人族ではないな……」
目を瞑って、視覚情報をカットして思い出してみる。相手のサイズはどう考えても、人族ではないな。
「そうだ、丁度、転生前のクロエ、成竜のクロノエクソスが寝ているときの姿の様な大きさと雰囲気をもった相手だった」
『ほほう』
クロエに興味を引かれた反応を返してきた。
「色は覚えてますか?」
飛鳥が訊いてきた。色か……。
「色は……クロノエクソスとは対称的な雪の様な真っ白、だったかな?
だめだ、それ以上は思い出せないな」
おぼろげな記憶をなんとか掘り返しても得られた情報は多くなかった。
「如何されましたか、ヘリオス様?」
ヘリオスさんをお祖父様とは呼ばないメイドモードのベルは、俺達では気付けなかったヘリオスさんの不審な挙動に気づいた様だ。
「流石に目敏いね、ベルは。なに、今は私の口から言う事はできないとだけ答えさせてもらおうか。私の友人に会ってもらった方が早いからね」
そう言って、今朝の朝食のメニューであるオーソドックスな食パンとコーンスープ、ベーコン付き目玉焼き、コールスローサラダを食べ終えたヘリオスさんはティーカップの紅茶を飲んだ。
■
準備を整え、昨日入った坑道の入口と山道への分岐点に到着した。
「さて、ここからは私が先導しよう。近……その前に、これから使う近道が使えるか確認してくるから、ここで待っていなさい」
そう言って、ヘリオスさんが先頭に立ち、分岐点の中心を歩いて行って……消えた?
「消えましたね」
「消えたな」
飛鳥、ヴァルカさんが両目を瞬かせた。
俺は【鑑定】でヘリオスさんが消えた空間を視た。すると、
「【認識阻害】と【忌避誘導】、【無意識誘導】、【人払い】の多重【結界術】!?」
常人では確実に意識を逸らされる結界が張られていた。
「ああ、待たせたね。問題なく使えることを確認したから行こう。私から離れ過ぎると、はぐれるから注意してくれたまえ」
再び姿を現したヘリオスさんにそう言われて、俺達は彼の後について行った。
■
そこにあったのは、山肌に埋め込まれた様に設置されているこの世界には不似合いな、どちらかというと俺と飛鳥が元いた世界にあった硝子製の自動扉だった。
そして、その両脇には魔導具と思しきものが建ててあった。
「ここには旧文明の遺産があってね。ここのことを知る者はもうほとんどいない。
ここに設置している魔導具もその遺産の1つでね。この魔導具が張る【結界】によって、登録者の同行がないと、近づくことはおろか、ここに気づくことすらできないようになっているんだ」
ヘリオスさんはそう感慨深げに俺達に言った。
「なぜ俺達に、ここのことを教えたのですか?」
今朝の朝食後など、話す時間があったにも関わらず、この場所のことを教えられていなかったので、俺に警戒心が芽生えたので、ヘリオスさんに問いかけた。
「いや、なに、私もいつこの世界から旅立つかはわからないからね。君たちの実力を疑っている訳ではないのだけれども、実はここのことを託せる相手を探してもいたんだ」
「お祖父様、ここはお父様達はご存知なのですか?」
ヘリオスさんの言葉に彼女の孫娘としてベルが尋ねた。
「いや、あの2人には残念だが教えていない。ベル、君もここのことはあの2人には黙っていてくれないか」
ヘリオスさんは普段とは違った深い悲しみを含んだ眼差しで首を横に振って、ベルにそう答え、頼んできた。
「……理由にもよります」
彼のその表情を見て、ベルはそう返した。
「そうだね。その話については先に進んでからにしよう。彼女を交えた方が説明もしやすいからね。さあ、先に進もう」
そう言って、普段の穏やかな表情に戻ったヘリオスさんは話を打ち切って、俺達についてくるよう再び促し、先に歩き出した。
俺達はヘリオスさんの後を追い、自動扉の先へ進んだ。
■
自動扉の先には明らかに人工物と思しき廊下が続き、ヘリオスさんが近づくことで、自動で消灯していた灯りが奥まで自動で点灯していった。その先にあったのは……。
「エレベーター?」
閉じた扉があった。その扉の上に上下を指す三角と、その間に数字が表示されているパネルがある。また、扉の脇には上下を選択するボタンを押すパネルがあったから、思わず俺の口からその言葉が出た。
「これは興味深いね。ユウ君はこれがどの様な物か知っているのかい?」
ヘリオスさんが好奇心を宿らせた目を俺に向けて尋ねてきた。
「俺が考えている物と同じ物でしたら、俺と飛鳥が元いた世界にある建物内の上の階と下の階への移動を補助する装置です」
俺の言葉に俺と同じ答えに思い至った飛鳥も頷いた。
「なるほど、ユウ君とアスカ君が考えている物とこれは同じ物だよ」
そう言って、ヘリオスさんは入り口脇のパネルの△ボタンを押した。しばらくして、ピンポーンという機械音と共に扉が開いた。
「さあ、中に全員中に入ってきたまえ」
先にエレベーターの中に入って移動先の階層を選択したヘリオスさんが俺達に入ってくるよう促してきた。
エレベーターの中は広く、全員と【空間収納】に入れていないケイロンが入ってもまだ余裕がある広さだった。
「では、上に行こうか」
ヘリオスさんの操作は俺が覚えているエレベーターの操作方法のそれと一致していた。
上昇に伴い体に感じる重力。しばらくして、再び先ほど聞いた機械音が鳴り、扉が開いた。
「さあ、着いた。私は最後に出るから少し先に行ったところで待っていてくれたまえ」
ヘリオスさんが言うように少し先に行った所にあった広場で、俺達は待機した。
「優さん、旧文明の遺産ということでしたが、どういうことでしょうか?」
飛鳥が思案顔で俺に尋ねてきた。
「さあ、推測の域を出ないけれども、もしかしたら、この世界は高度な先史文明がなんらかの要因で崩壊して、今の状態になったのかもしれない」
思い返して見れば、この世界で分かっている歴史の最古はオディオ王国建国以前は国が勃興と滅亡を繰り返す戦国時代。それ以前の記録がメルキオールの図書館で見当たらなかった。もしかしたら、オディオ王国と同じく、禁書庫があって、そこに記録があるのかもしれないが……。
「待たせたね。先に進もう」
そう言って、追いついたヘリオスさんに案内され、俺達は建物内を先に進む。進む中、建物内を警備している2体1組の人造鉄兵とすれ違った。
その2体は一見、丸腰に見えたが、両腰に長剣と大腿部に小銃が懸架されていた。
歩き始めておよそ10分程度経って、ヘリオスさんが止まったので、どうやら目的地に着いたようだ。ヘリオスさんは扉横にあるパネルに備え付けられているレンズに目を向けている……虹彩認証か?
〔認証NO.21091013。「ヘリオス・メリクリウス」トノ一致ヲ確認。扉ヲ開錠シマス〕
機械音声の後、目の前の扉が開いた。
■
入った扉の奥はドーム球場に匹敵する広さがあり、
『よく来てくださいました、ヘリオス。そして、異世界からの来訪者とその仲間達よ』
女性の声の【念話】が頭に響くと共に、白い鱗で全身が覆われている巨大な白い竜が翼を折りたたんで横たわっていた。
「ああ、なんとか間に合ったようだ。久しぶりだね、ルールミナス。みんな紹介しよう、彼女は私の親友で、白輝聖竜のルールミナス。この地の魔物の氾濫を抑えてくれている存在だ」
ヘリオスさんがそう、目の前の竜の紹介をすると、
『私は光聖を司る白輝聖竜のルールミナス。ヘリオスの親友です。新たな友人達よ。私は貴方達を歓迎します』
そう言って、目の前の白竜は嬉しそうに両目を細めた。
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