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第3章 自由連合同盟都市国家メルキオール 地方城塞都市カイロス編
第75話 勇者と魔王、勇者召喚が世界に及ぼした悪影響の件
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広大な空間を埋めているその巨体とは対照的な穏和な声音の歓迎の言葉を聞いたものの、ヘリオスさんと1名を除いた俺と飛鳥達は、その白い巨体に圧倒された。
『ルー……ルミナス……じゃと!?』
その1名、クロエは俺達とは異なる驚愕で固まっているようだった。
「さて、ルー、貴女が私を呼んだ理由はなんですか?」
ヘリオスさんが、ルールミナスに俺達がここに脚を運ぶことにもなった理由を問いただした。
『ええ、いくつかありますが、重要なものから話します。この世界にそこにいる女性の異世界人同様に複数の異世界人が”勇者”として、召喚されたため、勇者として召喚された異世界人と同数の”魔王”が現れます。もっとも、その内の1体は既に討伐されたようですね』
召喚された勇者と同数の魔王が現れる? ルールミナスの言葉に俺達は驚愕することになった。
「……そうですか。ユウ君、アスカさん、カイロスにいたあの2人、タケシとコスズの他にもあと2人”勇者”がいるのでしたね?」
ある程度予測していたのか、ヘリオスさんは落ち着いた様子で、俺達に問いかけてきた。
「ええ、その通りです。つまり、あと魔王は少なくとも4体現れるということになりますか?」
『ええ、そうなります。いつ、どこに現れるかはわかりませんが、確実にあと4体は現れるでしょう』
俺の言葉にルールミナスが確信を込めて答えた。
「そもそも勇者や魔王とはどのような存在なんでしょうか?」
飛鳥が俺も以前から抱いていた疑問をルールミナスに尋ねた。
『私も正しく把握しているか、分かりかねる部分がありますが、勇者と魔王は対とも言える存在です。共通しているのはこの世界に認められて”龍脈”から力を引き出して戦える強力な存在であることと、周囲を導く存在になりうることです。相違しているのは理性と本能、どちらを重んじる立場であるかです。故に、どちらも人のいう善悪の価値観に当てはめるのは適当ではないと私は思います』
ルールミナスは淡々とそう答えた。
「魔王を倒すのは勇者、勇者と倒すのは魔王でなければならないということはあるのだろうか? もし、勇者でないものが魔王を倒したら、また新たな魔王が生まれるということはあるのか?」
『……いいえ。魔王は勇者でなければ倒し辛いという以外は特にありません。新たな魔王が補充されるということもありません』
俺の懸念の1つにルールミナスが答えてくれた。飛鳥ではなく、俺が豚魔王を倒しても問題がなくて安心した。
『次の話に移りますね。ヘリオス、メルキオール北の”封鎖地区”の封印が綻んでいます。半年以内に封印が解けてしまうでしょう』
「なんだって!? そんな馬鹿な! あの場所のあの封印は、少なくともあと数百年はもつはずだ!!」
ルールミナスの言葉に普段からは考えられない興奮した強い口調でヘリオスが言った。
『残念ですが、事実です。原因は先ほど話した”勇者召喚”です。1人、2人であれば問題ありませんでしたが、5人分となれば世界中の魔力分布に悪影響がでます。その結果、”封鎖地区”の大気中の魔力と龍脈が影響を受けました。あと1人でも勇者召喚が行われれば、即座に封印は解けてしますと思われます』
ルールミナスはヘリオスさんに憐憫の目を向けて、そう告げた。
「それは不味い!」
ヘリオスさんが再度の勇者召喚で封印が即時解除されることに強く反応して、狼狽した。
「ああ、オディオ王国は勇者召喚に必要な魔方陣を失っているので、即座に勇者召喚はできないと思いますから、少なくともすぐにその封印が解けることはないと思いますよ」
俺はあまりにヘリオスさんが慌てているので、落ち着かせるために言葉を続けることにした。
「飛鳥とあの国を出るときに、今後、あの国の所為で、俺達の様な犠牲者が出ることを防ぐために、勇者召喚関係の資料を根こそぎ確保して、この通り、魔方陣が刻まれていた床も削り取ってきてます」
そう言って、俺は【空間収納】に保管していたオディオ王国の勇者召喚に関する書類の山と、削り取ってきた魔方陣が刻まれた床をその場に出した。
『これは!?』
「……」
ルールミナスは驚きの声をあげ、ヘリオスさんは目を見開いた。
その反応を確認した俺は、【空間収納】から出した勇者関連のものを全て、再び収納した。それにしても、本当にロクなことしないなアリシアと現オディオ王国国王は。
「ユウ君、よくやってくれた!」
ガシッと俺は興奮したヘリオスさんに両手を握るというよりも、掴まれた。
『貴方はそれらをどうするつもりなの?』
ルールミナスが俺を推し量るように問いかけてきた。
「既に術式の解析の結果、この世界に召喚された俺達が元の世界に戻ることができないことが分かっているから、頭の螺子が全て吹っ飛んだ輩に渡さないために、このまま【空間収納】の肥やしにするつもりだ。俺が死んだら、これらは全て消滅するようにしてある」
【魔術】を使って、すぐにでも消滅させればいいと思うかもしれないが、魔方陣の術式が、魔力を吸収して発動するという厄介な代物だったため、迂闊に【魔術】を使っても吸収されて破壊することができなかったのだ。
勇者召喚の資料に関しては【召喚術】の術式改善資料として有用な点が発見されたため、飛鳥とクロエ、ベルの3人と共に研究に使っている。
『……そうですか、それらは貴方にお任せして大丈夫そうですね』
そう言って、ルールミナスは笑った……が、
『ゴフッ、ゴフッ、ガハッ……』
白い鱗をもつ穏和な白竜は、その口と口下の床を自身の吐血した血で赤く染めた。
『ルー……ルミナス……じゃと!?』
その1名、クロエは俺達とは異なる驚愕で固まっているようだった。
「さて、ルー、貴女が私を呼んだ理由はなんですか?」
ヘリオスさんが、ルールミナスに俺達がここに脚を運ぶことにもなった理由を問いただした。
『ええ、いくつかありますが、重要なものから話します。この世界にそこにいる女性の異世界人同様に複数の異世界人が”勇者”として、召喚されたため、勇者として召喚された異世界人と同数の”魔王”が現れます。もっとも、その内の1体は既に討伐されたようですね』
召喚された勇者と同数の魔王が現れる? ルールミナスの言葉に俺達は驚愕することになった。
「……そうですか。ユウ君、アスカさん、カイロスにいたあの2人、タケシとコスズの他にもあと2人”勇者”がいるのでしたね?」
ある程度予測していたのか、ヘリオスさんは落ち着いた様子で、俺達に問いかけてきた。
「ええ、その通りです。つまり、あと魔王は少なくとも4体現れるということになりますか?」
『ええ、そうなります。いつ、どこに現れるかはわかりませんが、確実にあと4体は現れるでしょう』
俺の言葉にルールミナスが確信を込めて答えた。
「そもそも勇者や魔王とはどのような存在なんでしょうか?」
飛鳥が俺も以前から抱いていた疑問をルールミナスに尋ねた。
『私も正しく把握しているか、分かりかねる部分がありますが、勇者と魔王は対とも言える存在です。共通しているのはこの世界に認められて”龍脈”から力を引き出して戦える強力な存在であることと、周囲を導く存在になりうることです。相違しているのは理性と本能、どちらを重んじる立場であるかです。故に、どちらも人のいう善悪の価値観に当てはめるのは適当ではないと私は思います』
ルールミナスは淡々とそう答えた。
「魔王を倒すのは勇者、勇者と倒すのは魔王でなければならないということはあるのだろうか? もし、勇者でないものが魔王を倒したら、また新たな魔王が生まれるということはあるのか?」
『……いいえ。魔王は勇者でなければ倒し辛いという以外は特にありません。新たな魔王が補充されるということもありません』
俺の懸念の1つにルールミナスが答えてくれた。飛鳥ではなく、俺が豚魔王を倒しても問題がなくて安心した。
『次の話に移りますね。ヘリオス、メルキオール北の”封鎖地区”の封印が綻んでいます。半年以内に封印が解けてしまうでしょう』
「なんだって!? そんな馬鹿な! あの場所のあの封印は、少なくともあと数百年はもつはずだ!!」
ルールミナスの言葉に普段からは考えられない興奮した強い口調でヘリオスが言った。
『残念ですが、事実です。原因は先ほど話した”勇者召喚”です。1人、2人であれば問題ありませんでしたが、5人分となれば世界中の魔力分布に悪影響がでます。その結果、”封鎖地区”の大気中の魔力と龍脈が影響を受けました。あと1人でも勇者召喚が行われれば、即座に封印は解けてしますと思われます』
ルールミナスはヘリオスさんに憐憫の目を向けて、そう告げた。
「それは不味い!」
ヘリオスさんが再度の勇者召喚で封印が即時解除されることに強く反応して、狼狽した。
「ああ、オディオ王国は勇者召喚に必要な魔方陣を失っているので、即座に勇者召喚はできないと思いますから、少なくともすぐにその封印が解けることはないと思いますよ」
俺はあまりにヘリオスさんが慌てているので、落ち着かせるために言葉を続けることにした。
「飛鳥とあの国を出るときに、今後、あの国の所為で、俺達の様な犠牲者が出ることを防ぐために、勇者召喚関係の資料を根こそぎ確保して、この通り、魔方陣が刻まれていた床も削り取ってきてます」
そう言って、俺は【空間収納】に保管していたオディオ王国の勇者召喚に関する書類の山と、削り取ってきた魔方陣が刻まれた床をその場に出した。
『これは!?』
「……」
ルールミナスは驚きの声をあげ、ヘリオスさんは目を見開いた。
その反応を確認した俺は、【空間収納】から出した勇者関連のものを全て、再び収納した。それにしても、本当にロクなことしないなアリシアと現オディオ王国国王は。
「ユウ君、よくやってくれた!」
ガシッと俺は興奮したヘリオスさんに両手を握るというよりも、掴まれた。
『貴方はそれらをどうするつもりなの?』
ルールミナスが俺を推し量るように問いかけてきた。
「既に術式の解析の結果、この世界に召喚された俺達が元の世界に戻ることができないことが分かっているから、頭の螺子が全て吹っ飛んだ輩に渡さないために、このまま【空間収納】の肥やしにするつもりだ。俺が死んだら、これらは全て消滅するようにしてある」
【魔術】を使って、すぐにでも消滅させればいいと思うかもしれないが、魔方陣の術式が、魔力を吸収して発動するという厄介な代物だったため、迂闊に【魔術】を使っても吸収されて破壊することができなかったのだ。
勇者召喚の資料に関しては【召喚術】の術式改善資料として有用な点が発見されたため、飛鳥とクロエ、ベルの3人と共に研究に使っている。
『……そうですか、それらは貴方にお任せして大丈夫そうですね』
そう言って、ルールミナスは笑った……が、
『ゴフッ、ゴフッ、ガハッ……』
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