とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

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~幕間3~

第89話 私室用暖房器具試作中の件(前編)

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俺はみんなと別れた後、自分の工房に移動した。

座り心地抜群の椅子に座るのだが……

「クッションがよくても足先から冷えて台無しだな」

俺の工房の中は、屋敷の俺の私室同様、靴は部屋の入り口で脱いで、スリッパもしくは裸足で歩ける様にしている。

空調エアコンも必要だが、先にあれを作るか。

まずはこの世界の暖炉を改良することにした。

改良といっても、前面以外の五面を鉄板で覆うだけ。改良した暖炉は所謂、フランクリンストーブ。

飛鳥とベル、クロエ、ルシィはもとより、ヴァルカさんとへファイスさんにも使用後の感想を聞いて、改良を加え、多機能薪ストーブにする。

燃料はこちらの世界に合わせた魔石式にも対応できるようアレンジする予定だ。

フランクリンストーブの情報はこの世界に飛ばされる前にネットで調べたものをネタ引き出しの1つとして、愛用のMyPadに保存している。

それを参考に制作、数度の失敗の後に形になった。

輻射熱の大幅な向上と簡単な構造で、フランクリンストーブは冬の寒さが厳しい米国で一般家庭に普及した。

その後、様々な改良が加えられたのが薪ストーブ。故に、フランクリンストーブは薪ストーブのプロトタイプと言える代物だろう。

丁寧に造ったつもりだったが、まだまだ造りに粗がたくさんあるのができあがってから分かった。これは数をこなして精進あるのみだ。

さて、次は、と思考を切り替えようとしたら、扉のノックがあった。

『主さま、昼食の用意ができました』

「わかった。丁度ひと段落したから行くよ」

ルシィが呼びに来てくれたので、俺は試作ストーブの火をきちんと消して、工房を後にした。



『主さまはなにを作られていらっしゃったのですか?』

微笑ましい興味津々の様子を隠さずメイド服を着たルシィが訊いてきた。

「既存の暖炉をより暖かくなる様に改良したものだよ。一先ず出来上がったから、ベル達に意見を聞くつもりだ。好感触だったら、ルシィ達の部屋にも作ろうか?」

『本当ですか?ありがとうございます』

そう言って、天真爛漫な眩しい笑顔をルシィは俺に見せてくれた。

まるで1枚の名画の様な素晴らしい光景である。尊い。

そして、食堂に到着した。

◼️

『今日の昼食は天ぷらうどんじゃ。海老天、ごぼ天、かき揚げ、芋天いろいろ揚げてみたのじゃ』

どんぶりに入ったうどんにクロエが言った天ぷら各種が載せられていた。普通に美味しそうである。

『『「いただきます」』』

飛鳥とベル、ヴァルカさん、へファイスさんは外で食べると連絡があったため、俺とクロエ、ルシィの3人で横に並んで食べる。

俺の右にクロエ、左にルシィ。2人とも器用に箸を使ってうどんを啜る。

うどんの食感もモチモチしていていい。つゆもかつお出汁と昆布出汁を丁度いい割合で合わせてある。

『どうじゃ? ご主人?』

得意気な様子でクロエが聞いてきた。

「美味いよ、流石だな」

最近では【異世界電子通販ネットショッピング】での食料と調味料の使用をできる限り抑えて、向こうの世界の料理の再現をこちらの食材ですることにクロエ達は力を入れ始め出した。

『ぬっふっふ、もっと褒めてもいいのじゃぞ?
ちなみにうどんを打つのにはルシィにも手伝ってもらったのじゃ!』

クロエは胸を張って言った。

「そうか、頑張ったな、ルシィ。美味しいよ」

そう言って、俺はルシィの頭を撫でてあげた。

『あっ、ありがとうございます。主さま』

そう応えて、ルシィは顔を赤らめて、はにかんだ。

『ぬっ、ご主人、我も頑張ったのじゃぞ!』

クロエは口先を尖らせて不満を口にして、頭を突き出してきた。撫でろということなのだろう。

「ああ、クロエもよくやってくれた」

そう告げて、頭を撫でると、

『ぬふふ、では、せっかくのうどんが伸びてしまわぬ内に食すとするのじゃ!』

クロエはご機嫌になった。

『姉様……』

そんなクロエのチョロい様子に、ルシィは苦笑いを浮かべた。

和やかな空気の中、おかわりをして、俺はクロエとルシィが作ったうどんを堪能した。ちなみに飛鳥とベルの分もきちんととっておいてある。

その後、その日の夜食として2人に出された天ぷらうどんは飛鳥とベルにも絶賛された。

◼️

『ご主人は午前中はなにをしておったのじゃ?』

食後の一服で緑茶を淹れてくれたクロエが問いかけてきた。

「向こうの世界の暖炉を参考にこっちの物を改良していたところだ」

『改良に成功したら、わたし達のお部屋にも設置してくれるそうですよ、姉様』

『ほう、それはとてもありがたいのじゃ。我は寒いのは苦手じゃからのう』

そう言って、手を擦りあわせるクロエ。

なぜか、ジャージ着たクロエがドテラを羽織って、炬燵に座り、次の瞬間、クロエがこたつむりと化したのを俺は幻視した。

『どうしたのじゃ、ご主人?』

俺の向ける視線に異変を感じとったクロエが問いかけてきた。

「いや、クロエはこたつがあったら、それに入り浸りそうだなと思ってな」

『んん?? こたつとはなんじゃ?』

『どの様なものでしょうか?』

正直に答えたものの、この世界にはこたつがないため、わからないクロエとルシィの2人は可愛らしい思案顔になっている。

「口で説明するより実際に見たほうがいいよな……一応、こういうものだ」

そう言って、俺はMyPadに保存してある炬燵の写真とウィ◯の記事を2人に見せた。

『ううむ……よくわからんのう』

『主さま、申し訳ありません』

しかし、やはり2人には上手く伝わらなかった様だ。

「いや、これだけで逆にこたつのことは理解できないから。特にこの一度入ったら、二度と出てこれない脅威は言葉では言い表せない……」

日本の生み出した脅威の堕落人間製造機の破壊力は筆舌に尽くしがたい。

やはり、この世界でこたつを作り出さねばと俺は決意を新たに工房に戻ることにした。

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