とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

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~幕間3~

第91話 みんなで試作炬燵に入った件

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「はぁ、温かいですね。私の生家は堀こたつだったので、こたつは嬉しいです」

「飛鳥、みかんもあるぞ」

「あっ、ありがとうございます……甘酸っぱくて美味しい」

冬服用の布や綿を市場で買い込んで帰ってきた飛鳥とベルを俺の私室に招待し、試作こたつの入ってもらった。

飛鳥は喜んでくれているので、大成功の様だ。

「手足が温まります。この座椅子もあって、非常に快適ですね」

メイド服にこたつと異色の組み合わせながら、なぜか絵になるベルもこたつに対して好感触だ。そして、

ぬくいのじゃ、極楽……なの…じゃ』

俺がこたつむり化を幻視したクロエは、幼竜状態で、乗っかっている……俺の膝上に抱きつく様に。人間形態メイド姿だったら、完全にアウトな構図。

「クロエさんや、俺が退くから、こたつに入りなさい」

『こたつには尻尾がちゃんと入っていて充分温いのじゃ。ご主人がこたつから退いたら、ご主人が寒かろうに。空いている1席はルシィに譲る。それに、最近、ご主人はルシィにかかりっきりで、我等との"すきんしっぷ"が不足しているのじゃ!』

そう言って、力を強めてきた。

あの、クロエさん、背骨にはクロエの手?前足?が回りきれていないので、俺の肋骨と内臓が悲鳴を上げ始めているのですが……。

「ルシィの卵の孵化のためだったとはいえ、クロエの言い分はもっともなことですよ、ご主人様」

そう言って、ベルが俺を嗜め、

「そうですよ、優さん。クロエとベルの意見には私も同意します。最近は、私達との時間も夜以外はあまりとってくれませんし、もっとも、その、今夜は……私の番なんですから」

飛鳥は耳まで真っ赤にして俺に言った。

「悪かった。俺にはその自覚がなかったから、今回の様に言ってくれると助かるよ。薬品ギルドの件がひと段落したら、まとめて時間が取れるはずだから、そのときに、1人につき、1日付き合う時間をとろうと思うけど、どうだろうか?」

「私はそれで構いませんよ」

「異論ありません」

『我は今こうしておるから、その時はルシィと一緒でいいのじゃ。ご主人、みかんを1粒たもう』

「飛鳥とベルは事前に何をするか教えてくれると助かる。ほら、クロエ」

俺はそう言って、クロエの頭を撫でて、皮をむいたみかんを開いた口の中に1粒入れてあげた。

『うむ、わかればよいのじゃ』

そう言って、クロエは目を細める。

『お茶とお茶菓子を持って参りました』

ルシィが人数分の湯呑みと急須、煎餅と饅頭を盛った皿を両手、もしくは【魔術】の【浮遊レビテート】で浮かせてやってきた。これは【魔術】の並列思考の訓練も兼ねている。

ルシィのこと、白輝聖竜のことで分かったことがいくつかある。

1つは保有総魔力量が、現時点で闇黒魔竜であるクロエの倍以上あることだ。前身であるルールミナスのときの魔力量は生前【鑑定】させてもらったが、今のクロエの1.5倍あった。今のルシィで既にそれを越えていて、クロエの3倍ある。

もっとも、クロエもまだ成長途中であり、クロエ自身の見立てでは今の5倍位までは魔力量を増やすことは可能らしい。とは言っても、そうなるのは今すぐではないとのことだ。

もう1つは、多少の【回復魔術】と【支援魔術バフ】、【阻害魔術デバフ】は使えるけれども、本分は【竜魔術】の中で破壊に特化したものを得意としている。

クロエが以前豚鬼オーク共に使った〔メガ・フレア〕がルシィの得意とする系統であり、〔メガ・フレア〕はもとより、その上位の〔ギガ・フレア〕、更にその上に位置する〔テラ・フレア〕、〔エクサ・フレア〕もルシィは成長すれば使えるようになる。

ちなみに、クロエが使える様になるのは〔ギガ・フレア〕までで、〔テラ・フレア〕と〔エクサ・フレア〕は適性がクロエにはないため、使えないらしい。



試作したこたつはヴァルカさんとヘファイスさん夫妻にも大好評だった。2人の生活スペースにも是非置いて欲しいと懇願された。

こうして、飛鳥とベルは1つずつ、クロエとルシィは相部屋で1つの合計4つを新造することになった。

こたつ本体の材料は既に【空間収納】内にある分で充分足りている。問題となるのはこたつ布団だが、これは今回に限り、4つとも【異世界電子通販ネットショッピング】で購入することにした。

商人ギルドにこたつの設計図を登録して、今後は技師ギルドでこたつを量産してもらうつもりだ。そうなったら、こたつ布団も一緒に技師ギルドで作ってもらう。俺の【異世界電子通販】頼み前提で量産するのは望ましくない。


閑話休題、俺は自室の大部屋に掘りこたつを作りたいのだが、1つ問題が発生した。床がフローリングで、部屋があるのが2階であるため、迂闊に部屋の床を掘る訳にはいかなかった。

どうしたものかと思案し、洋室に部分的にかつ便利に畳を畳椅子としても利用できる”畳ユニット”というものがあるのを俺は思い出した。これをロ形に組んで、その上に炬燵を置けばいい。高さも丁度、腰掛けられる高さのものが【異世界電子通販】の販売リストに……あった。

量産を前提にするつもりがないから、これも俺の【異世界電子通販】で購入。

そういえば、飛鳥も堀こたつがいいと言うかもしれない。そのときはこの”畳ユニット”を使うことを提案してみよう。

畳ユニットはこたつを使わないときでも、物を入れる収納としても使えるから便利だ。直方体になるように組み合わせれば、簡易畳ベッドにもなる。


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