とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

文字の大きさ
99 / 108
第4章 自由連合同盟都市国家メルキオール 首都メルキオール~北方封鎖地編

第99話 冒険者ギルドのカレーライスとルシィとベルの両親の件

しおりを挟む
阿呆冒険者相手の模擬戦の報酬として、バルガスのとっつぁんに飛鳥達と一緒に俺は冒険者ギルドの食堂で奢ってもらった。

みんな奢ってもらった料理は基本は同じ冒険者ギルドの食堂のカレーライスだ。

冒険者ギルドの食堂のカレーライスは宿木亭のものとは違う。

宿木亭のカレーがジャワカレーっぽいものに現状なっていったのに対して、冒険者ギルドの食堂のカレーライスは元の世界のゴー◯ーカレーで有名になった金沢カレーに似たものになった。

きちんと千切りキャベツも添えられて、先端がフォークになっているスプーンが使われている。

俺が試作して、商人ギルドに登録し、技師ギルドに製造を委託した物の1つだ。

「ユウが教えてくれたトッピングを自由に選べる様にしたから、大人気でな。
特に豚鬼オークのロースを使ったオークロースカツのトッピングが1番人気なんだ」

とっつぁんは嬉しそうにそう言って、トッピング全載せを注文していた。

具材が完全にルーに溶けるまで煮込んで、2日以上寝かせているだけあって、熟成されたルーはコクがあって濃厚。

好みが確実に分かれる味ではあるが、肉体労働中心の冒険者には大好評の様だ。

ちなみに、ヘリオスさんの職場の庁舎にある食堂ではスープカレーをメインに扱っている。

こちらも大人気で、昼限定で一般にも食堂を開放しているため、発売してから一般客からもリピーターが続出し、冒険者ギルドの食堂ここと同じく大盛況だそうだ。

『ハグハグハグ……』

クロエは目の前の大皿に全トッピング類がメニューの倍盛られている超特大盛りのカレーを一心不乱に食べている。

ゴー◯ーカレーで例えるなら、メ◯ャーカレーワール◯チャ◯ピオンクラス2皿分の量を1つの大皿に盛った様なものだ。

その横でルシィがクロエとをクロエとは対照的に、一見ゆっくりに見えるが、流れる水の如く淀みない所作でペースを全く落とすことなく、笑顔を浮かべながら、スプーンを口に運んでいる。

飛鳥とベルはオークロースカツをトッピングしたもの、俺はとっつぁんと同じトッピングを全載せしたものを頼んだ。

流石に今日はクロエとルシィと同じものに挑戦する気にはなれなかった。

ちなみにクロエとルシィの分で俺の頼んだ全載せより金額で足が出る部分はきちんと俺が払っている。

とっつぁんは別にいいと言ってくれたが、けじめとして俺は譲らなかった。

『ふぅ、堪能したのじゃ』

コップの水を飲んで、一息ついた満足そうなクロエの皿は見事に空になっていた。

『美味しいですね、姉様』

クロエとほぼ同じタイミングでルシィは完食した。

『うむ、あっ、ルシィよ、頬にルーが付いておるのじゃ……これでよい』

クロエが紙ナプキンを【共有収納】から取り出して、ルシィの右頬付いていたルーを拭った。

『ありがとうございます。姉様』

華が咲いた様な笑顔浮かべて、礼を述べるルシィ。尊い。

その微笑ましい光景にほっこりした空気が食堂に広がった。

飛鳥とベルも完食し、一休みしてから、奢ってくれたとっつぁんに礼を言い、俺達は冒険者ギルドを後にした。

後日知らされたが、この日、冒険者ギルドの食堂は過去最高来客数と売り上げ叩き出したそうだ。



屋敷に帰ってから俺は自分の工房で馬車の改修を行おうと思っていたのだが……。

「お帰りなさい」

「やあ、お邪魔させてもらっているよ」

ベルのご両親であるルークさんとベルファリスさんが屋敷に来ていた。この2人と俺達の関係は良好で、特に飛鳥とクロエは出会ってしばらくしてからベルファリスさんと意気投合して、休日の都合があったときに一緒に出かけているほど仲がよい。

「いらしていたのですか、お父様、お母様」

ベルは商人ギルドのトップと従者ギルドのNo.2で、冬を迎えるにあたり忙しいはずの両親を冷ややかな目で見た。

「ああ、当然、今日やるべき仕事と明日の仕事の準備は終わっているよ」

ベルの表情から思考を読んだのか、ルークさんがにこやかに告げた。

「当然私もよ。もう、この子は真面目なんだから……。まぁ、いいわ。それよりも、ルシィちゃん、この服を着てみてくれないかしら?」

そう言って、ベルファリスさんがセーターや毛皮のコートを数着取り出した。

『おお、丁度よいではないか』

「そうですね。私達が買ってきた服もルシィに着てみてもらいましょうか」

クロエと飛鳥がベルファリスさんの言葉に便乗してルシィを見た。

そのルシィの両肩をベルがガシッと掴んだ。

『あの、わたしはえ「残念ですが、ああなったお母様は止められません。そこにアスカ様とクロエが加わったら……諦めなさい」はい……』

ルシィがやんわりと断ろうとしたが、ベルが昔のことを思い出したのか、ハイライトが消えた両瞳で告げたため、ルシィは折れた。

「さあ、行きましょうか」

そう告げた飛鳥に率いられ、女性陣はクロエとルシィの私室へ移動を始めた。

そして、ルシィは飛鳥達が作った衣装の試着のため、強引に拉……引っ張られていった。

「女性陣には退屈な話になるかもしれないから、ちょうどよかった。今日はユウ君にいろいろと協力してほしいこともあって来たんだよ」

そう言って、ルークさんは苦笑を浮かべた。

ルークさんは魔導具に関する造詣がベル以上に深く、魔導具蒐集を趣味にしていて、俺が魔導具を製作するときに助言をもらうこともある。そして、俺が造った魔導具を一番多く買ってくれている人もこの人なのだ。

「俺にもできることとできないことがありますから、お話しを伺ってから協力するか決めたいと思います。ここではなく、俺の工房に行きましょうか」

「是非!」

親しくなったとはいえ、俺はルークさんをこれまで工房に入れたことはなかった。

魔導具蒐集が趣味のルークさんは興奮した様子で快諾し、俺達は俺の工房へ移動することにした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...