とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星

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第4章 自由連合同盟都市国家メルキオール 首都メルキオール~北方封鎖地編

第100話 ベル達との挙式とメルクリウス家の事情の件

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ルークさんと俺を補佐するために戻ってきたベルを伴って、俺は自分の工房へ移動した。

「ああ、そうだ。忘れないうちに主役になる2人に言っておくよ。アスカさんとクロエさんの挙式をリアと一緒に行う変更は式場に伝えて、受理されたよ」

工房に入るなり、ルークさんは俺とベルにそう告げた。

蛇足だが、リアというのはベルのフルネーム、ベルリアーナから付けられた愛称だ。主に使っているのはルークさんとベルファリスさん。ベルファリスさんも名前にとあるからさもありなん。

「ありがとうございます。お手を煩わせてすいません」

俺はルークさんに頭を下げた。

それに続く形で、

「ありがとうございます。お父様」

ベルは満面の笑みを浮かべてルークさんに礼を述べた。

「頭を上げてくれないかな、僕は信頼できる家族が増えることには賛成だからね」

そう言って、ルークさんは【偽装】の魔導具を外した。彼に両耳が本来の先が人族のものよりも形に戻った。

ヘリオスさんとベルファリスさんは人族。しかし、ルークさんは普段は魔導具で人族に【偽装】しているハーフエルフだ。

ベルはクォーターエルフということになる。

ヘリオスさんの奥さん、ルークさんの母親、ベルの祖母はエルフで評判の美女だった……らしい。

ヒュドラの襲撃後に、逃走したヒュドラの棲家である封鎖地に行って、現在は生死不明となっている。

ヘリオスさん達は既に死んでいると思っているようだが、はてさて……。

話をルークさんのことに戻そう。ルークさんはエルフの特徴である高い魔力を受け継いでいて、各属性の【魔術】スキルはもとより、スキルの【錬金術】を持っている。

ルークさんは仕事の合間に趣味として魔導具を作製し、商品になりうる物を製作者として名前を伏せて自身の商会で販売している。

彼の師匠は錬金術の俺の師匠でもあるミーネさんだ。

甥と叔母の関係だが、ミーネさんはヘリオスさんと10歳近く歳が離れているため、ルークさんの方に年齢が近い。

ヘリオスさんの後妻の立場と赤子だったルークさんを狙った申し出が、ヒュドラによって受けたメルキオールの復興のために忙しいヘリオスさんに殺到。

手すきでルークさんを任せて、信頼できる女性がミーネさんしかいなかったこともあり、母親代わりとして、ルークさんのおしめをミーネさんが取り替えていた時期もあったそうだ。

ルークさんはミーネさんに頭が上がらないそうだ。2人の関係は現在お尋ね者の元薬品ギルド長とは異なり、非常に良好。

また、ミーネさんはベルが赤子のころに彼女を預かっていたことがあり、親子揃ってミーネさんにおしめを取り替えられたことがあるとか。

ハーフエルフの学習能力と成長・老化速度は成人するまでは人間、人族と同じ速度らしい。

ルークさんとヘリオスさん、ミーネさんの実家は現在は商家ではあるけれども、元々は大成した錬金術師の家系だったそうだ。

錬金術は本格的にやると、物もかかるし、金もかかる。

メルキオール建国時のメリクリウス家当主の錬金術師が幼なじみの大商人の令嬢を娶って嫁の実家を吸収。

それから商人の仕事を兼任する様になって、息子兄弟の錬金術の継承を希望する弟を錬金術師としての後継者に、商才があって、商人の仕事が性に合っていると言って憚らない兄に商人の仕事を任せるようにしたらしい。

その兄弟の仲はとてもよく、兄弟は結婚後も子供達で才能とやる気のある者にお互いの家の仕事を任せ、現在のメリクリウス家の繁栄に繋がっていた。

いたのだが、錬金術を代々継承していた家は前回のヒュドラの襲撃時に全滅。

辛うじて、その知識の一部は錬金術師の才能が兄妹の中で抜きん出ていたミーネが受け継いでいるが、遺失してしまったものもあるそうだ。

メリクリウス家にはなんとか生き残った遠縁の分家はあれど、ルークさんには近しい従弟妹いとこの存命者はおらず、叔父は指名手配犯罪者、叔母は男の影まったくなし。

ベルにも浮いた話は皆無だったため、ベルに政略結婚をさせざるを得ない状況だったのだ。

ベルが俺と出会って発情期にならなければ、その政略結婚相手がベルと共にルークさんのメルクリウス商会の将来を担うのがルークさんとヘリオスさん達の目論見だった。

しかし、そのベルの婿予定だった男はメルキオールにはいないし、今後メルキオールに戻ってくることもない。

発情期になったベルが豚鬼事件の解決報酬という形で、俺のものになったのを機に奴はそれまで巧妙に隠していた野心を顕にした。

俺たちがヘリオスさんの依頼でメルキオールを離れている間にルークさんを暗殺してメルクリウス商会の乗っ取りを画策していた……らしい。

もっとも、事前に察知したベルファリスさんによって、その計画は未然に防がれて、共謀者諸共犯罪奴隷落ち。今は元魔術ギルド長達と同じ鉱山で死ぬまで働くことになっている。

ベルの挙式の話は既に来年の春に決まっていて、そのためにいろいろとヘリオスさん達は動いていたのだが、新郎を俺に代え、飛鳥とクロエも新婦として挙式することを追加。ルークさんの先程告げたのはその手続きが完了したことを指している。

名前の挙がらなかったルシィはバルタザール騎士王国にある式場に変更を打診できる時期を過ぎてから転生したため、同時挙式はできなかった。

俺との法的な間柄をどうするのか本人も決めていないので、早々に確認して決めるつもりだ。

そして、メリクリウス一族が少ないからか、ルークさんとベルファリスさんの2人から、俺とベルはしきりに孫をせがまれていた。

にはベルも積極的なので、俺もやることはやっているものの、今のところ成果なし。

そんなときに幼い頃のベルによく似たルシィがルークさん達の前に現れたから、2人はルシィを最初は俺とベルの娘と勘違いしてお祭り状態になっていた。

しかし、ルシィが幼竜形態になったことで落ち着きを取り戻し、その誤解は解けた。

誤解は解けたのだが、2人は意気消沈せずに、寧ろ愛らしいルシィに萌え上がって、ルシィを養子にすると言い出した。

この件でルークさん夫妻とルシィの前世であるルールミナスの関係者であるヘリオスがルシィの養親になることで対立した。ミーネさんはその争いに加わらず、傍観していた。

顛末は3人の争いを嘆いたルシィがクロエの妹であることを選択し、交友はこれまで通り、誰の養子にもならないことを宣言したことで決着した。
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